「HR-Solution Contest―働き方改革×テクノロジー―」に103件の応募
今回のイベントには多数の人事関係者も参加したはずだ。「IoT Lab Connection」のテーマの1つが働き方改革であるとともに、「HR-Solution Contest―働き方改革×テクノロジー―」も開催されたからだ。このようなテーマが選ばれた背景には「働き方」そのものの変化がある。
第4次産業革命や産業構造の急速な変化のもとで、「モノ」や「カネ」ではなく「ヒト」が競争力の源泉である時代が到来している。その一方で、企業が抱える人事・労務上の課題も増大しており、その課題をテクノロジーによって解決する、優れたアイデア・ソリューションが求められているのだ。
「HR-Solution Contest」は政府がはじめて取り組んだHRテクノロジー系のコンテストだ。2017年5月10日から6月9 日にかけて募集したところ、初回であるにもかかわらず合計103件の応募があったことからも関心の強さがわかる。応募者には、国内の大小さまざまな企業のほか、海外企業、さらには大学も含まれており、ビジネスやアカデミック等、様々な観点から、課題解決に資するソリューションが集まった。また、ソリューションの内容としては、すでに実績を残しているプロダクトはもちろんのこと、そういったプロダクトにアイデアを掛け合わせたものや、人事上の課題を解決する、全く新たなアイデア段階のものも多数含まれていた。
103件の応募は、2段階の事前審査によってファイナリスト8件に絞り込まれ、公開プレゼンテーション審査が行われた。
「HR-Solution Contest」ファイナリスト8件のプレゼン
「HR-Solution Contest」ファイナリスト8件のプレゼンは14時30分から16時30分までの2時間をかけて行われた。その内容を簡単に紹介しよう。いずれも個性的でありつつ、人事の課題解決に資するものばかりである。
●タレンタ株式会社のソリューションは、「デジタル面接システムHireVue」。採用担当者の悩みは手間と時間のかかる面接だが、「録画面接×人工知能」によってプロセスを効率化すれば、内部工数を3割少なくできる。
●広島大学は、「世界初!AIによるAIに負けない人財育成」をプレゼンした。世界初のAIコーチング開発によって、人財を育成し、社会全体をボトムアップしようとする。
●株式会社ミライセルフは、「mitsucari(ミツカリ)を使った定量的面接手法」を提案した。「人はスキルで採用されて、カルチャーで離職する」と言うが、面接でカルチャーに合うかどうかを見抜くのは困難だ。「mitsucari」は適性検査と人工知能分析を用い、フィットした配属までを可能にする採用手法。72問5択を10分で回答するだけで、その応募者のカルチャーフィットが可視化できる。
●株式会社アトラエは、「AIビジネスマッチングアプリyenta(イェンタ)」の開発会社。yentaは英語で人と人とを結びつけるのが大好きな「お節介なおばさん」という意味。2016年1月にスタートした人工知能を活用したビジネスマッチングアプリであり、お互いに興味を持ったプロフェッショナル同士が出会えるプラットフォームとして機能する。
●Institution for a Global Society株式会社の「GROW CERTIFICATION」は、職種に必要な要素(QF)を作成して個人の科学的な評価をもとにCERTIFICATIONを発行し、最適な個別教育を提供するもの。GROW のAI搭載エンジンがコンピテンシー、気質などを科学的に測定し、能力を可視化する。
●株式会社ジンズの「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」は、眼鏡型デバイスJINS MEMEで、生産性の重要因子である集中力の計測を通じてHR施策の効果を測定し、PDCAを回し、効果的な働き方改革を行う。
●ホシデン株式会社の「MEDiTAGによる人間関係の見える化」は、バイタルモニタービーコン(リストバンド)で取得した行動・ストレス情報を解析することで人間関係を見える化する。
●株式会社日立ソリューションズの「AIアシスタントサービス」は、スマートデバイス、音声対応のチャット型アシスタントが、ユーザからの会話を理解し、社内の情報探索や業務遂行を行うサービスだ。
ジンズの眼鏡型デバイスJINS MEMEがグランプリを受賞
「HR-Solution Contest」の発表は17時40分から行われた。準グランプリ受賞企業は2社。株式会社アトラエの「AIビジネスマッチングアプリyenta」、Institution for a Global Society株式会社の「GROW CERTIFICATION」が選ばれた。
そして「HR-Solution Contest」のグランプリに選ばれたのは、株式会社ジンズの「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」。
働き方改革は、効率性アップのために行われるが、実際に効率的に働くことができるようになっているかどうかを測ることは困難だった。「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」は効率性の指標を集中力に置いたユニークなソリューション。メガネがまばたきと姿勢を検知することで集中力を測定する。まばたきが少なく、まばたきの間隔が安定しているときが、深く集中しているときだという。
HRソリューションベンダーではなく、ジンズのようなメガネショップチェーンからこのようなソリューションが出現したこともグランプリに選ばれた理由のひとつであろう。HRテクノロジーの裾野が大きく広がることを予感させる受賞となった。
株式会社ジンズの「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」は、今年開催された「第6回 日本HRチャレンジ大賞」(厚生労働省、東洋経済新報社、株式会社ビジネスパブリッシング、ProFuture株式会社後援)においてもイノベーション賞を受賞しており、ダブル受賞となっている。