【第18回 人事AI・ビッグデータ分析WGセミナー】HR テクノロジー最前線Vol.1

 今回で18回目を数えるHRテクノロジーコンソーシアム(LeBAC)主催の人事・教育ビッグデータ分析WGセミナー。今回は、「HRテクノロジー最前線」と題し、HRテクノロジーのフロンティアとして活躍中のサイエンティストやエンジニア、さらには今後台頭するであろう新進気鋭のスタートアップ企業のニューリーダーたちをお招きし、HRテクノロジー業界の最新トレンドをご紹介いただきました。

講演1「採用企業向けツール RECRUIT AGENT CAST~人材紹介事業で機械学習技術の活用~」
株式会社リクルートキャリア 斡旋事業本部 藤原暢夫氏

採用企業様向けウェブツール「CAST」とは
本日は弊社が提供している採用企業様向けウェブツール「CAST」をご紹介します。キーワードは「1日5分で、採用決定数120%」。最大の売りは転職意欲の高い人材が登録している業界最大級を誇るデータベースにあります。リクルートエージェントのキャリアアドバイザーが面談し、積極的に転職活動をしている人材のみが多数登録。どんな仕事をしてきたのかといった具体的なキャリア情報が閲覧可能です。また貴社におすすめの登録者を「CAST」がピックアップして毎日レコメンド。○△×を選ぶだけの簡単操作で、弊社からスカウトメールを送信します。登録者を探す作業は必須でなく、面倒なスカウト文面作成も不要です。レコメンドされるのは、貴社求人に「気になる」をしている登録者、そして膨大なマッチングデータを演算し、導いた採用決定率の高い登録者。判定履歴を学習するので、使えば使うほど効率的な利用が可能になります。

「CAST」が選ばれる理由
こだわったポイントは3つあります。1つ目は、人事にも配属部門にもご利用いただける仕組みです。メールアドレスをアカウントとすることで、実際の配属先の部門長が直接自分の将来の部下を判定できます。2つ目は、最短2クリックで判定を完了できるUI。通常はスカウト対象者を選んでメッセージを書きますが、「CAST」ではあえてメッセージを書く工程を省きます。そして3つ目は、学習型レコメンドロジック。弊社に蓄積されたデータには、転職希望者が「書類選考」で○だったのか×だったのか、「応募有無」はあったのかなかったのかなど、過去の履歴が貯まっています。これを「CAST」が読み込み、機械学習で演算を毎日毎日繰り返すことで、「合格可能性」と「応募可能性」がスコアリングされるという仕組みになっています。

ビッグデータ活用のキモ
ビッグデータ活用の成否を決める要素は主に4つあります。それは「データ量の大きさ」「データの質」「蓄積データのきれいさ」「演算技術」です。その中でもデータの量・質・きれいさは欠かせません。量に関しては、勝手にどんどんデータが蓄積していく仕組みになっているか。質に関しては、ビッグデータ活用目的にとって有効なデータを取得できているか。きれいさに関しては、自然に正確なデータが取得できる環境か。これは社内人事データの活用においても同じことが言えます。意味のある正確なデータを大量かつ自然に集め続けられるフローを、事業プロセスの中に組み込こむことが何よりも大事なのです。

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講演2「パーソルグループにおける人事データ分析 実務者の観点を中心に」
テンプホールディングス株式会社 小川 翔平氏

データ分析とは何なのか?
データ分析には統計学的なアプローチと機械学習的なアプローチがあります。統計学的なアプローチは現象に対する要因を探るもので、例えば退職者の動機などが知りたいときに活用します。一方、機械学習的なアプローチは予測をするもので、例えば退職する確率を知りたいときに活用するものです。私が実際に行っている機械学習のプロセスは、まず過去データを用意して、学習データと精度検証用データに分割。そして学習データで予測モデルを作ります。そこに精度検証用のデータを当てはめて、精度を検証し、それが十分なものであれば予測確率を算出。その後、意思決定に使います。このプロセスで最も肝心なのは、学習データと精度検証用データに分割するところです。

「採用と育成」「退職」「異動配置」の3つの側面から分析
弊社では、「採用と育成」、「退職」、「異動配置」の3つの側面に切り分けて分析を行っています。1つ目は、「ハイパフォーマー分析」。社内でハイパフォーマーとされている人が、どういうアセスメント傾向を持っているのかを統計学的なアプローチで分析します。2つ目は、「退職予測モデル」。こちらはある一定グレードの社員を対象に、退職する確率がどのくらいあるかを機械学習的なアプローチで予測していきます。そして3つ目は、「異動配置分析」。こちらは異動後に活躍できるのはどういうタイプの人なのかを、実際に今活躍している人のデータをもとに、統計学と機械学習の中間的なアプローチで探っていきます。
以上3つの分析を踏まえて私が感じているのは、技術的に難しくなくてもアイデア次第で価値のある分析は可能だということです。ぜひ皆さんも会社に戻ったら早速人事データと向かい合ってみてください。本日はありがとうございました。

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講演3「DBを使ったマイニングコストを大幅に削減できる人事システムの紹介」
ビッグデータロボ株式会社 技術本部 木全貴思氏

「ビッグデータロボ・エンジン」の4つの特徴
弊社が提供する「ビッグデータロボ・エンジン」はすべてのデータを格納できるデータベースシステムです。このデータベースの活用によりコスト削減、開発期間の削減、パフォーマンスの向上を実現することができま
す。それを可能にするのは「ビッグデータロボ・エンジン」ならではの4つの特徴です。
1つ目はビジネスにフィットするマルチバリューであることです。これによって複雑なデータベース設計が不要となり、開発工数が削減され、スピーディーなシステム構築を可能にします。
2つ目は圧倒的なパフォーマンスが出せることです。マルチバリューは複雑なデータのアクセスであるJOINを排除し、対象となるレコードを大幅に削減することで高速なデータ検索を可能にします。さらに仮想フィールド、ハッシュテクノロジー等の技術によりパフォーマンス向上を実現しています。
3つ目は柔軟でビジネスの変化に即応できることです。非構造なデータモデルのため、項目の追加・変更を瞬時に実施できます。
そして4つ目は、低資源でトータルコストを抑制できることです。高額で高性能なサーバを必要としない各種テクノロジーにより、システム構築から運用までのトータルコストを抑制することができます。
ぜひこのデータベースシステムのご活用をご検討お願いします。

※クリナップハートフルの導入事例
クリナップハートフル株式会社・原田氏にご登場いただき、同社が「ビッグデータロボ・エンジン」を導入した背景、活用方法、効果など、導入事例をご紹介いただきました。

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講演4「リファラル(社員の友人紹介)採用の現場から見えてきたこと」
Combinator, Inc 岡島光太郎氏

すべての社員が採用担当者に
私たちが提供しているクラウドサービス「Refcome(リフカム)」は、リファラル採用を促進するツールです。よく耳にする採用担当者の課題といえば、「いい人材と出会えない」「採用コストがかかる」「すぐに辞めてしまう」などが挙げられますが、そんな悩みを解決する手法として、会社のことをよく知る社員から知人や友人を紹介してもらい採用するというリファラル採用が注目されています。そのメリットは、自社のことを知っている社員がスクリーニングしている状態で面接できること。また潜在層だけでなく顕在層の方たちにもアプローチでき、コネクションを使っているので採用コストもあまりかかりません。
ではここで「Refcome」の使い方をご紹介します。人事担当者は社員のメールアドレスと社内の募集ポジションをインポートするだけで準備完了。紹介してほしい募集ポジションから依頼ボタンをクリックして、協力してほしい社員の方を選びます。メールやスラックでその社員の方に通知を飛ばすと、受け取った方は募集の詳細を確認。声をかけたい知人の名前を自分で入力し、招待メールを発行、そのリンクをフェイスブックやLINEなどで送ります。そして招待メールが届いた知人の方は、そこから応募いただくという流れです。
人事の役割は広く、仕事量も少なくありません。人事だけが採用を担うには限界があるでしょう。仲間集めや採用活動は、社員みんなで行って、リファラルを通じて社内ブランディングも社外ブランディングもできるようにすること。一方人事や経営層の方は空いた時間を使って、社員が紹介したいと思える会社づくりにコミットするのが理想的な形だと思います。そんな企業の新しい風土づくりをお手伝いするのが、我々の役割です。今後は、リファラルをより活性化させ、社員満足度を可視化するサービスや組織課題を可視化する機能を展開していきたいと思っています。

 

講演5「人と組織のパフォーマンスを向上させる適性検査管理システム『INOBER』」
株式会社Meta Anchor 代表取締役 山田邦生氏

採用後のマネジメントなど幅広く対応
日本の労働人口の大幅な減少に伴い、産業全体が慢性的に従業員不足に陥ることが予測されます。特に中小企業では深刻な人手不足に直面するでしょう。さらに優秀層の絶対数も減少。ではどうすればいいのか。現在国をあげて、AIやロボット、女性や外国人労働者の活用を推進していますが、一方でよりミクロな視点で考えた場合、既存社員を活用することや自社に合う候補者を採用することが重要だと思います。そこで組織心理学をベースにした適性診断を開発しました。それが「INOBER」です。
「INOBER」の測定領域は、性格特性や価値観、基本的動機など、人の見えづらい領域に及びます。一体「INOBER」を用いることで何ができるのか。従来の適性検査は、候補者の選別や合否の判断基準など、選考の入口でしか行われませんでしたが、「INOBER」では採用後も継続して適性診断のデータを活用して、適材適所の実現やマネジメントなど、さまざまな場面で利用することが可能です。具体的な診断方法としては、108の質問に回答することで、個人の性格特性やキャリアに対する価値観、思考スタイルを定量化することができます。スマホなどを利用すれば、いつでもどこでも受検可能。診断時間も約25分と短く受検者の負担も少ないです。
「INOBER」では、従業員全員に適性診断を実施。従業員全員のデータを取ることで、組織カルチャーを把握することができ、選考時に候補者とのマッチング精度が向上します。活用シーンは主に3つ。1つ目は、選考時の活用。2つ目は、マネジメントでの活用。3つ目は、チームビルディングでの活用。また「INOBER」の特徴としては、すぐに診断結果が把握できる、多様なデバイスでの対応、導入コストが安い、候補者の内面を把握できる、使いやすい、分かりやすい…などが挙げられます。
従業員は自分の持っている資質を自覚し強みを生かすことができるスキルを磨いていく。一方、会社・組織は従業員の適性に合わせて、最大限パフォーマンスを上げられる職務や環境を提供する。これにより働く人の内的動機が刺激されモチベーションが上がり、会社や組織全体の生産性も向上。イノベーションによる社会の発展にも繋がっていくでしょう。それが我々の目指す姿です。本日は短い時間でしたが、誠にありがとうございました。

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