2030年に有望な職業とは?

近未来の子供たちの65%は今ない職業についている

 1980年代に就職した人たちが、インターネットやスマートフォンが普及した社会をする想像できなかったように、将来どんな職業が有望かを予測するのはきわめて難しい。マッカーサー財団デジタルメディア&ラーニング・コンペティション共同ディレクターのキャシーN.ダビッドソンは、子供たちの65%はまだ存在していない職業につくだろうと語っている。また、アメリカン・エンタープライズ研究所での講演でビル・ゲイツは、20年以内に熟練したスキルを要求されない仕事は、ソフトウェアの自動化に置き換えられるだろうと予測した。

 2014年6月18日のエコノミストの記事『襲いくる波(The onrushing wave)』によれば、将来、消えてしまう可能性が高い職業はテレマーケティング、会計士・監査人、小売販売員、テクニカルライター、不動産業者だと言う。逆に、イギリスのキャリアに関するブログ“キャリア・アディクト(CareerAddict)”では、『まだ存在していない3つの仕事』という記事の中で、将来有望な職業として仮想通貨バンカー、クラウドファウンディング・スペシャリスト、人工知能クリエイターの3つをあげている。これらはどのような職業なのか考察してみた。

巨富を生むAIは最も有望な分野の一つ

仮想通貨バンカー(Cryptocurrency Banker)
 2009年に販売されたビットコインはメディアの注目を集めた。そのようにユーザが売ったり買ったりできるデジタルな仮想通貨が近い将来は市民権を得るはずだ。実際、 ヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソンが設立した宇宙旅行ビジネスを行うヴァージン・ギャラクティック (Virgin Galactic) は、宇宙旅行への支払を仮想通貨でできるようにすると発表した。将来的には仮想通貨のスペシャリストのニーズが高まると思われる。

クラウドファウンディング・スペシャリスト(Crowdfunding Specialist)
 個人からお金を集めて発明家や企業などへ出資してもらうクラウドファウンディングは17世紀からあるコンセプトであり、決して新しいものではない。しかし、2009年にキックスターターのようなウェブサイトがスタートし、以前とは比べものにならないほど多くの聴衆と投資家を獲得するようになり、iPhoneと通信できるデジタル時計のPebble WatchやOuya(ウーヤー)ビデオゲーム機のような商品を生み出した。クラウドファウンディング・スペシャリストは、まだこの世に存在しない新たな商品の誕生のために、個人の投資家と発明家を結びつける役割を果たすだろう。

人工知能クリエイター(Artificial Intelligence Creator)
 いま社会を変革するようなAIの研究が水面下で進行している。アメリカではグーグルが2013年と2014年にAIの研究機関や企業を買収、フェイスブックも2014年にAI研究所を新設し、初代所長にAI研究の権威、ヤン・ルカン氏を招聘した。中国の大手検索エンジン業者「百度(バイドゥ)」も2014年、シリコンバレーにAI研究所を設立し、その初代所長にはグーグルを去ったアンドリュー・エン氏が就任した。各社ともAIの技術基盤である「機械学習」がビッグデータと結びついたとき、そこに大きなビジネス・チャンスがあると確信しているのだ。つまり、AIが生み出した機械やロボットは将来、我々の仕事を奪うことになるかもしれないが、AIの研究者なり、AIを使って商品やサービスを開発するAIクリエイターは、非常に有望な職業であることは間違いない。その証拠にいまスタンフォード大学で学生に一番人気のある講義は、コンピュータ科学部のアンドリュー・エン教授が担当する「機械学習(Machine Learning)」だ。

様々なコンサルタントが活躍する時代に

 アメリカの男性向けプレミアム・ライフスタイルサイト“チート・シート(The Cheat Sheet)”の9月21日付の記事『2030年までに人々がつく10の職業』で、将来有望な職業のトップ10として次のようなものをあげている。その多くはネットに関連する仕事だが、その中には「未来の仕事スペシャリスト」や「企業かく乱家」のようなユニークなものもある。

1.ボットロビイスト(Bot lobbiest)
Botとは定期的に決められたつぶやきをツイートするアカウントのことだ。転じてボットロビイストとは、このボットの機能など、ソーシャルメディアの機能を上手く利用することで、クライアントのビジネスやマーケティングを支援してくれる人を指す。

2. 未来貨幣投機家(Future currency speculator)
成長している仮想通貨市場は間違いなく仮想通貨の専門家を必要とするようになるだろう。

3. 生産カウンセラー(Productivity counselors)
生産カウンセラーはクライアントに健康管理から時間管理に至るまで、人生全般の生産性を上げるためのありとあらゆることをアドバイスする。

4. 微生物バランサー(Microbial balancer)
危険な細菌の薬剤に対する懸念が増している一方、細菌の新しい形態も発見される中、訓練を受けたバランサー(均衡調整役)が微生物の組成を評価するために必要とされるだろう。

5. ミームエージェント(Meme agent)
ミームとは進化生物学者であるリチャード・ドーキンスが提唱する「文化的遺伝子」のことで、まるで遺伝子のように人から人へとコピーされる情報のことを指す。我々はありとあらゆる種類の著名人のための代理人を既に持っているのだから、近い将来、インターネット上でスターたちの代理を務める職業もできることだろう。

6. ビッグデータ・ドクター(Big data doctor)
ビッグデータは、すでに多くの産業に多大な影響力を持っている。そしてヘルスケアがその次に来るだろう。患者の伝記プロファイルと個人データに基づいて治療を施す新世代の医師が誕生する可能性がある。

7. クラウドファウンディング・スペシャリスト(Crowdfunding specialist)
キックスターターやインディーゴーゴーのようなクラウドファウンディング・ウェブサイトの人気を考えれば、資金集めのアドバイスをする専門家のニーズは今後高まっていくだろう。

8. 未来の仕事スペシャリスト/リクルーターの仕事(Jobs of the future specialist/recruiter)
めまぐるしく変化する雇用市場が将来スローダウンすることはないと思われる。そのため、将来のキャリアに特化して助言してくれる専門家は、求職者にとって多大な価値を持つことだろう。

9. 組織混乱家/企業かく乱家(Disorganizer/corporate disruptor)
企業のかく乱家は、システムやプロセスが古くなってよどんでしまった企業を揺り動かし、覚醒させるために呼び出される。

10. プライバシー・コンサルタント
新技術は、新しいプライバシーの問題を生みだすため、将来の人々がデジタル情報を管理し、保護するために専門家の支援が必要になるだろう。プライバシー・コンサルタントは人々のプライバシーを守る支援をする専門家である。

 15年後はそれほど遠い未来ではない。おそらく今ある編集者、教師、調理師、看護師や介護士、工事現場の労働者など、人に関わる仕事や機械にとって代われない仕事がなくなっていることはないだろう。だが、本質は変わらなくても、編集者は紙ではなく電子書籍やウェブの編集がメインになったり、教師はソフトウェアの知識が不可欠になったりするなど、求められるスキルや能力は大きく変わっていくに違いない。「今の仕事がなくなったら」と恐れるより、これからの社会に必要とされる職業やサービスを開拓・創造していく発想や気概こそ、何より求められているものではないだろうか。

【経営プロ編集部 ライター:島崎由貴子】

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