AI×HRテクノロジーの最前線:人工知能が採用・管理・配置を変える! ~業務効率化を実現する採用ツール編~

AI(人工知能)技術を応用したHR関連サービスは、人間の経験や勘だけに頼らない高精度な人事施策を実現できる。さらには、業務の効率化・コスト削減という恩恵をもたらす点でも注目されている。急増・急伸するAI活用型HRサービスの様子を見ていこう。今回は採用業務に関するHRテクノロジーと関連ツールを取り上げる。

採用業務にAIツールを導入するメリットは計り知れない

エントリーシート選考や面接にAIを活用する企業が増えている。採用担当者ごと・年度ごとに評価がバラつくという問題を改善し、統一された評価軸による公平で高精度な選考を実現することがAI導入の大きな目的だが、もうひとつ、AIがもたらすコスト削減・業務の効率化というメリットも見逃せない。

企業経営では、コストを抑えながら成果をあげること、つまりは効率化が求められる。人事部門も例外ではなく、採用業務であれば「長く活躍してくれる人を、必要な数だけ採用し、確実に入社してもらう」というミッションに、費用を抑制しつつ挑まなければならない。

株式会社マイナビの「企業新卒内定状況調査」によると、企業の採用費総額は、2018年卒採用時が平均約493万円だったのに対し、2019年卒では約558万円と増加している。少子化による採用難が問題となる中では、多くの予算を割いて対策を打たざるを得ないのだろう。ただし入社予定者1人あたりの採用費平均額は、2018年卒が約53万円、2019年卒は約48万円とダウン。より多くの新入社員を確保して相対的な採用コストを削減しよう。そんな思惑がうかがえる数字である。

ここで、AIの出番だ。AIが採用担当者の負担を減らしてくれれば、その削減された作業時間を他の業務にあてることが可能となる。また、AIなら大量のエントリーシートを評価することも、遠方の学生と面接することもできるため、より多くの人材と接触できる機会が広がる。マッチ度の低い就活生をAIがふるい落としてくれれば、内定辞退のリスクも低減できる。母集団拡大と内定辞退の防止は、入社予定者1人あたりの採用費抑制につながる。

採用コストの削減と効率化をもたらすAIの導入を積極的に推し進める企業が増えるのも不思議ではないといえるだろう。

AI活用型の人事サービスは急速に進化している

採用業務において活用されているAI技術サービスの例をいくつか見てみよう。

『IBM Watson』
『IBM Watson』(ワトソン)は、その名の通りIBM社が開発したAIで、各種API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス/AIに何を実行させるかを指定するプログラム)との組み合わせによって、さまざまなサービス(画像分析、データ検索、翻訳など)を実現するシステムだ。自然言語分類APIを用いれば、テキストの背後にある意図の解釈や分類が可能。ソフトバンク社はこの仕組みを利用してエントリーシートを分析・評価している。

『KIBIT』
データ解析を専門とするFRONTEO社の『KIBIT』(キビット)は、もともと「国際訴訟における証拠の発見」という特殊な業務のために開発されたAIエンジン。大量のテキストから必要なデータを短時間に見つけ出すことを得意とし、人間の経験を学習して人間に近い判断を下すという特徴も持っている。人事データを学習した『KIBIT』を用いれば、入社後に活躍できる人材かどうか、途中辞退や退職のリスクはないかなどを、エントリーシートから客観的かつスピーディーに判断することが可能だ。

『プライオ』
マイナビと三菱総合研究所が共同で開発したAIエンジン「HaRi(ハリ)」をベースとする書類選考ツール。過去の選考データから、その企業が重視している要素を「HaRi」が学習し、オリジナルの診断モデルを構築、エントリーシートを分析・評価する。過去の採用基準に合致しているかどうかを示す“優先度”、「コミュニケーション」や「リーダーシップ」など6つの評価軸で応募者をスコアリングした“人物像”など、評価結果のアウトプットは多彩。サッポロビールなどが導入しており、「第3回HRテクノロジー大賞」では業務変革サービス部門賞を受賞している。
【参照リンク】
第3回 HRテクノロジー大賞 授賞企業決定

『GROW360』
Institution for a Global Society社が開発した適性検査ツール。スマートフォンやタブレットで実施される適性検査の結果を、各社ごとの独自モデルや37万人分の能力データをもとにAIが分析、受験者の成長ポテンシャルや、採用後に問題を起こす可能性などを判定する。受検した学生側にも検査結果がフィードバックされる点もユニークだ。「第1回HRテクノロジー大賞」では採用サービス部門優秀賞を受賞した。
【参照リンク】
第1回 HRテクノロジー大賞 授賞企業決定

『SHaiN』
『SHaiN』(シャイン)は、戦略採用ソリューション事業で知られるタレントアンドアセスメント社が開発した世界初のAI面接サービス。応募者はスマートフォンにアプリケーションをダウンロードし、アプリからの質問に口頭で答えていく。24時間いつでもどこでも、応募者の都合に合わせて面接を実施できる点が大きな強みだ。科学的面接手法「戦略採用メソッド(T&Aメソッド)」の理論が組み込まれ、単に人柄や印象を見るのではなく、応募者の内面を科学的に評価。バイタリティ、対人影響力、自主独立性など11項目の資質分析が「面接評価レポート」として出力され、企業はこのレポートをもとにスクリーニングを行う。一次面接に『SHaiN』を利用することで二次面接の質を高める、という使い方が想定されている。

新卒採用以外へのAI応用も加速している

新卒採用以外の業務でもAIの導入は進んでいる。エンジニア派遣・紹介事業を展開するフォーラムエンジニアリング社は『IBM Watson』を利用した人材マッチングシステム『Insight Matching』を構築。リクルートの『リクナビHRTech転職スカウト』は、膨大な人材データベースの中から企業にマッチしている候補者をAIがおすすめするサービスだ。

「第4回HRテクノロジー大賞」でも、日本オラクルの人事システム『Oracle HCM Cloud』、セプテーニ・ホールディングス社の人事マネジメント『Digital HR Project』など、AIを活用したサービスや取り組みが数多く受賞した。新卒採用だけでなく、人材配置や労務管理など、あらゆる人事業務においてAIの活用は当たり前のものとなりつつあるのだ。

なぜここまで急速にAIのHR分野への採用が進んでいるのか。それは冒頭で述べたように「コストを抑えながら成果をあげること」を期待できるからにほかならない。これまで人手も時間もかけていた人事関連業務を、AIは素早く、しかも高精度にこなしてくれる。結果としてもたらされる効率化・コスト削減効果は、企業にとって大きなメリットだ。今後、人事の現場でAIを上手く活用できるかどうかが、成長と持続が可能な企業、生き残れる企業の条件となっていくのではないだろうか。

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