AI×HRテクノロジーの最前線4:人工知能が採用・管理・配置を変える! ~AI活用クラウド型人事管理システム編~

勤怠、労務、職歴といった膨大な人事関連データは、いまや紙の書類ではなくコンピューターで管理することが当たり前。とりわけ、導入のハードルが低く運用コストも安いクラウド型の人事管理システムが隆盛を見せている。しかも、各種の情報分析や「誰をどこに異動させるか」などの意思決定支援にAIを活用するシステムが急増。トレンドとなりつつある“クラウド+AI”の動きを見てみよう。

要注目技術としての「クラウド」、そして「AI」

2019年8月、マーケティング/商品開発/事業戦略に関する情報サイト「日経クロストレンド」が、恒例の「トレンドマップ 2019夏」を発表した。技術、マーケティング、消費の3分野における注目キーワードを、“現時点での経済インパクト”と“将来性”で5段階評価したものだ。

これによると、技術分野における経済インパクトの第1位は「スマートフォン」。いまや誰もが持ち、単なる連絡手段(携帯電話)にとどまらず、検索、動画・音楽の視聴、ゲーム、ショッピング、スケジューリング、情報共有、名刺管理、タスク管理、キャッシュレス支払いや入出金、乗車券・入場券代わり……と、生活およびビジネスのあらゆるシーンで活用されているアイテムだけに、5点満点で4.38というハイスコアにも納得できる結果だ。

これに次ぐ第2位が「クラウド」で4.21。さらに3.96の「AI」が第3位と続く。また「AI」は将来性で第1位(4.79)。当然「クラウド」も将来性の高い技術として位置付けられている。

クラウドとAIに対する注目度の高さは、財務局が2018年に実施した「先端技術(IoT、AI等)の活用状況」調査からも見て取れる。この調査によれば、何らかの先端技術を活用している企業は約65%=全体の3分の2にのぼるのだが、活用している技術の第1位は「クラウド(39.2%が活用済と回答)」で、「ロボット」の37.1%を上回っているのだ。一方「AI」を活用済の企業は10.9%とまだ少ないが、活用予定または検討中の先端技術のうち、最も優先度の高い技術として「AI」を挙げた企業は32%。「IoT」の25%や「ロボット」の17%を押さえてトップである。

自社PCにインストールされたソフトウェアを利用するのではなく、“どこか”にあるサーバーが提供するサービスをインターネット経由で利用するのがクラウド。事業部門におけるクラウドの活用方法としては、売上・顧客・在庫管理、スケジュールやプロジェクトの共有などが挙げられるが、人事部門にとっては人事管理システムの利用形態として馴染み深い。ご承知の通りクラウド型人事管理システムは、PCからインターネットを経由してアクセスし、各種情報を入力・出力・管理するというもの。勤怠・労務だけでなく職務履歴や資格、性格診断など扱えるデータは多彩で、いわゆる“タレントマネジメント”を実践できることから、利用する企業は急速に増えている。「カオナビ」や「タレントパレット」などサービス事業者も百花繚乱である。

特別なハードウェアもソフトウェアも不要という手軽さ、初期費用の安さがクラウド型人事管理システムの魅力。また一般に「従業員〇〇名までの規模なら月いくら」「社員1名あたり月額数百円」といった従量制の料金体系になっているため、事業の拡大・縮小に応じて費用も増減。すなわち運用コストの最適化を図れることもメリットだ。

また、変化に対する柔軟性や、AIなど技術革新への対応力にも優れている点がクラウド型人事管理システムの大きな特徴である。

AIなど先端技術の盛り込みやすさもクラウド型人事管理の特徴

クラウド型人事管理システムのサービス事業者は、対応力・柔軟性・拡張性に注力している傾向にある。働き方改革に伴う法改正に合わせて機能をアップデートすることはもちろん、他のクラウド型システムやツール(採用管理や給与計算など)との連携強化を進めているのだ。

そのような潮流の中、注目されているのが「クラウド型人事管理システムにAIを組み込む」という方法論。いくつかの例を見ていこう。

●「HRテック・クラウド」(NECソリューションイノベータ)
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sl/hrtech_cloud/index.html

あるポジションに誰を配置するか検討する際、過去にそのポジションで活躍した社員の人事データをAIが学習し、候補社員の保有スキルやキャリアプランなどを元に適性を分析、最適な要員配置を提案してくれる。同様に、ある研修を過去に受講した社員と、これから受講する予定の社員のデータを比較し、受講が業績に与える影響を分析する。また過去の人事データや勤怠データと離職との相関を学習。統計的に離職の可能性がある社員を洗い出し、効果的なフォローにつなげることが可能。

●「POSITIVE」(電通国際情報サービス)
https://www.isid.co.jp/positive/

元々は統合HCMパッケージとして提供されているサービスだが、クラウド形式で利用できる「POSIRIVE on CLOUDiS」もある。従業員の人事データ(評価、経歴、資格など)を学習して関連性の深い情報を見つけ出し、アサインしたいポジションに最適な人材や、最適な異動先を提案する「タレントアナライズ」機能を搭載している。

●「HR君」(エクサウィザーズ)
https://exawizards.com/service/hrkun

従業員データと配置先データをAIが学習し、人材配置案を自動生成する「HR君アナリティクス」を搭載。配置後のモチベーション予測やパフォーマンス予測も織り込まれる。また勤怠データやメールなどから健康状態や業務効率を把握するパーソナルAIが個々の社員に付き添うのが「HR君パーソナルアシスタント」。各社員にパーソナライズされた改善策(ヘルスケア、研修、エンゲージメント向上策)を直接レコメンドしてくれる。

クラウド型人事管理+AIは、確実に世界のトレンドとなる

クラウド型人事管理システムとAIの融合という点では、海外のIT企業は一歩も二歩も先を行っている。好例がオラクルの「Oracle HCM Cloud」。採用、グローバル人事、タレントマネジメントなど、人材管理のためのクラウド・アプリケーション製品群で、全世界約6,000社が導入しているという、クラウド型人事管理システムの代表選手だ。

業務プロセスの各所にAIを組み込んである点が「Oracle HCM Cloud」の強みだ。たとえば採用への応募者リストは、優先して見るべき人から順に表示される。履歴書や、同様の仕事で過去に採用した従業員のデータを解析したAIが「誰を採るべきか」を判断しているのだ。逆に、応募してきた人に最適なジョブを探すことも可能である。すでに雇用関係にある従業員に関しては、しばらく昇給がない人についてのアラートがマネージャーや人事に届いたり、パーソナライズされた研修やキャリアプランニングを提案したり、といった形でAIは活躍する。

IBMでも、採用からエンゲージメント向上、リテンションまで、人材ライフサイクル全体の管理に自社のAIを活用している。まず採用においては、求職者はAIチャットボットとの会話を通じてさまざまな情報を収集することが可能。求職者の履歴書と実際の職務を分析してマッチ度の高い職を提案したり、重要なファクターを優先的に評価することで上位採用候補者を絞り込んだり、といった仕事もAIが担う。

昇進候補となる人材、離職しそうな従業員、ノルマ未達成のリスクがある社員をマネージャーに知らせる「AI タレント・アラート」や、社内ソーシャル・メディアへの書き込みを分析して課題を洗い出す「AI エンゲージメント分析」も運用。またAIは、マネージャーが特定の要素を過大評価・過小評価することのないように、従業員のスキル、そのスキルの市場価値と今後の需要を分析して報酬計画立案を支援してくれる。職務やスキル、学習履歴に合わせてパーソナライズされた学習コンテンツの推奨、今後の獲得スキル推測やキャリア・アドバイスにもAIが活用される。これらはIBM社内で行われた施策だが、その経験を元に外部へもサービスを提供していこうというのが同社のビジネスだ。

冒頭で述べた通り、産業界においてクラウドとAIに対する注目度は極めて高い。活用が遅れると競争力の低下~業績悪化を招くほど重要かつ必須の技術として認識されているといっていいだろう。人事管理システムにおいても“クラウド+AI”というスタイルが、今後は主流となり、多くの利用企業を獲得していくことになるはずである。