AI×HRテクノロジーの最前線1:人工知能が採用・管理・配置を変える! ~採用時選考の高精度化編~

HRの現場で先端テクノロジーの導入が進んでいる。この点に注目し、HR Technology Labで数々の記事を展開してきた。昨今、AI(人工知能)の活用が進んでいることを受け、数回に分けて最新技術やトレンドを紹介していきたい。まずは企業人事における最重要案件のひとつ、“採用”のシーンでAIがどのような役割を果たすようになっているのかを見ていこう。

AIが実現するエントリーシートの公正な選考

HRの分野にAI(人工知能)を導入する動きが急速に進んでいる。その主たる目的は、業務の精度を高めることだ。

テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、掃除機……など、各種家電にも搭載されるようになったAI。とりわけ期待されているのは技術精度を向上させる効果で、自動運転、渋滞予測、検索エンジン、ショッピングサイトのレコメンド機能など、さまざまな場面でAIは活用され、いまや社会にすっかり溶け込んでいるといえるだろう。

ただのブームではない。2019年3月に首相官邸から発表された『AI戦略(有識者提案)及び人間中心のAI社会原則(案)について』には、「年間、100万人の高校生、50万人の大学・高専生、100万人の社会人に対してAIリテラシー教育を行う」との戦略が盛り込まれている。AIは、一国の教育方針まで左右する重要な技術となっているのだ。

HRにおけるAIの活用、その第一のムーブメントとして注目されたのが、新卒採用シーンへの導入だ。2017年、ソフトバンクが「新卒採用選考のエントリーシート評価にAIを活用する」と発表したことの衝撃は、いまだ記憶に新しい。具体的には、米IBM社が開発したAIの『IBM Watson』を利用するというものだ。またサッポロビールは20018年3月に「2019年度新卒採用のエントリーシート選考においてAIを活用する」と発表し、同4月には横浜銀行が「2019年度新卒採用のエントリーシート選考においてAI技術を活用します」とリリース。自社開発のAIを毎年ブラッシュアップしながら新卒採用に導入してきたリクルートグループは、他社への技術提供も始めている。

これまでエントリーシートの評価は、採用担当者の経験や直感に頼っていた。その曖昧さから脱却し、“公平・公正な選考”を実現することがAI導入の大きな目的。前年までの採用基準をAIに学習させ、それらと合致している内容のものを選考通過とすることで、統一された評価軸による精度の高い選考が可能となるわけだ。優秀な社員が就活の際に提出していたエントリーシート、あるいは内定後に辞退した学生のエントリーシートを学習させれば、将来のハイパフォーマー候補の通過率を上げられるし、辞退する可能性の高い学生を通過させてしまうリスクを避けられる。そうした効果も期待できるだろう。

AIの導入によって、より多くの応募者を集めることが可能

採用担当者がエントリーシートに1枚ずつ目を通すこれまでの手法に比べて、AIの導入は、評価の高精度化に加えて高速化ももたらしてくれる。たとえばソフトバンクでは、人事担当者がエントリーシートの選考にあてていた時間を約75%程度軽減できることを見込んでいるとのこと。サッポロビールでも試験導入の結果、約40%削減できることを確認したという。

両社ともこうして生まれた時間を利用して、セミナーなど応募者と直接・対面でコミュニケーションを取る機会を増やす、としている点が面白い。AIの役割はあくまでも書類の“ふるい分け”。やはり最後の決め手は実際に会って話した感触だと、企業は考えているのだ。

ところが、「面接もAIで」と考える企業が現れ始めている。就活生が向かい合うのは、スマートフォンやロボット。各社の採用基準などを学習したAIが投げかけてくる「入社を希望する理由は?」「学生時代に力を入れたことは?」といった質問に答えるのだ。質疑応答の結果は評価リポートとしてまとめられ、それを企業は選考データとして活用、実際に対面して話を聞くべき学生を効率よくピックアップしていく、というのが大きな流れだ。ブランドたまご『きよら』で知られる株式会社アキタなど、すでに数十社がAIによる面接を導入しているという。

こちらもまた、統一された評価軸による公平かつ高精度な選考が最大の目的。人間による面接では評価がバラつく恐れがあるため、これを改善しようというわけだ。また、時間不問・場所不問の面接が可能となることも大きなポイント。遠方の学生、他社と面接日がバッティングしている学生など、これまでなら諦めざるを得なかった人材にも面接を受けてもらえる可能性が広がるのである。

採用の各フェーズをAIが支援する時代。だが学生の言い分は?

ただ、こうした動きに対する学生側の反応にも注意しなければならない。HR総研と就活クチコミサイト「就活会議」が共同で実施(2018年11月)した『2020年新卒学生の就職意識調査』(※)では、次のような結果が出ているのだ。

まず、エントリーシートの選考にAIを導入することについて「賛成」とする学生は、文系で25%、理系で21%。いっぽう「反対」は文系で21%、理系で29%。「合否の基準が今よりわかりやすくなる」と歓迎する意見がある一方、「人でしか判断できないパーソナルなところまでAIでは見ることができない」と批判的な声も多く、評価は割れているのが実情だ。

■ES書類選考へのAI導入の賛否

ES書類選考へのAI導入の賛否(出典:ProFuture株式会社/HR総研)
(出典:ProFuture株式会社/HR総研)

面接にAIを導入することについては、「賛成」は文系19%、理系21%、「反対」は文系32%、理系36%と、エントリーシート選考に比べて「反対」の比率が上昇。「採用基準に一貫性が出る」「人の気づかなかった点をAIに指摘してもらえるのは採用側にとってもいいはず」と理解を示す学生はいるものの、「面接官の受けた印象が重視されるべき」「一緒に働きたい人をAIの判定で決めるなど理解できない」「こういうことを考えている企業ほど人材を大切にしていないのではないか」と、拒否反応が大きくなるのだ。

■面接へのAI導入の賛否

面接へのAI導入の賛否(出典:ProFuture株式会社/HR総研)
(出典:ProFuture株式会社/HR総研)

前述の通り、各企業とも選考過程のすべてをAIに任せるのではなく、あくまで対面でのコミュニケーションを重視するとの姿勢を打ち出している。だが就活生にとって、たとえ採用フェーズの一部分(エントリーシート選考、面接)であっても、「人間以外に評価される」ことへの抵抗感は、想像以上に強いようだ。採用業務にAIを導入している事実を公表していない企業が多いのも、そんな就活生の感情を考慮してのことだろう。

実は、エントリーシート選考へのAI導入について「どちらともいえない」としたのが文系54%、理系50%、AI面接について「どちらともいえない」としたのは文系48%、理系48%と、いずれも最多勢力になっている。AI判定を経て入社した人たちが、本当にその企業でイキイキと働いていけるのか、まだ結果は出ていないのだから無理もない。

新卒採用にAIを導入した企業にとっては、「AI判定を経て入社した人たちは、ハッピーに働き、業績もあげています」という証拠・実績を積み上げていくことが、今後の課題となりそうである。

【参考】
HR総研×就活会議:2020年新卒学生の就職意識調査
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=220