通算17回目となるHRプロ主催合同セミナー 主催:HRプロ HR戦略総合セミナー2011 Part2 日程・会場 2011年7月27日(水)11:20〜17:40 28日(木)10:00〜17:40

[メディアパートナー]
人材教育
WEB労政時報
労務事情
企業と人材
人事実務
人事マネジメント

特別講演レポート

若手が「3年で一人前になる」会社の条件とは何か
〜アンケート調査と金井壽宏教授らとの対話で分かったこと
間杉俊彦氏 [ 株式会社ダイヤモンド社 人材開発編集部 副部長 ]

講演概要

 厳しい経済環境の中で、企業は人材に関する問題を抱えている。いろんな問題があるが、「いま、なにが問題ですか?」ときくと、「内定辞退が多い」「3年以内の離職が多い」「若手がなかなか育たない」という回答が多い。
 これらの問題に対し、わたしが本日話したいのは、「若手が“3年で一人前になる”会社の条件とは何か」である。
 結論を最初に言っておこう。それは内定期間から3年目までのコミュニケーションが大事である、ということだ。直接的な指導役である上司・先輩だけでなく、職場全体が新入社員とコミュニケーションを図り、成長を支援する風土や制度を持つ会社で若手は成長する。
 個々の努力だけでなく、職場全体が手取り足取り関わりを持つこと。この「関わり」を社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)という。

「働く心構え」を醸成させる

 若手を育てる上で、もっとも大事なのは、「働く心構え」を醸成させることだ。
「心構え」は大切だ。それが仕事の正しい信念を形成し、能力を向上させることになるからだ。
 会社に入って間もない頃の「教えてもらう」という姿勢を「自ら学ぶ」へ意識転換させなければならない。「言われたことはやるが、言われていないことはやらない」若手社員は意識転換できていないのだ。
 いまの若者は他責・受動的で、教えてくれるのが当たり前だと思っている。他責・受動的な若者を自責・能動的に変え、「自ら学ぶ」あるいは「進んで教えを請う」姿勢を身につけさせなくてはならない。

「熟達の10年ルール」と5ステップモデル

 ここで若手が一人前になり、さらにはエキスパートに成長していくプロセスについて考えてみたい。松尾睦・神戸大学大学院教授は経験学習理論の研究者で、熟達=エキスパートになるには10年かかり、以下の「熟達の5ステップモデル」をたどるという。

6〜10年目 熟達者 状況を的確に判断し、直感的に正確な判断ができる
中堅 微妙な状況の違いに対応することができる
1〜5年目 一人前 未熟さは残るが、一通りのことは一人でできる
見習い 状況が少しずつ見えてくるが、先輩・上司の指導が
初心者 原則は理解しているが、状況の違いが分からない

 人は初心者として学び始め、見習いを経過して3年から5年で一人前になる。その後も成長は続き、中堅を経過して10年程度で熟達者に達する。熟達者はエキスパート、プロフェッショナルと呼んでもいい。

 3年から5年で一人前になるが、そのためには条件がある。それは「よく考えられた練習を積むこと」だ。
 よく考えられた練習とは、まず第一に、課題が適度に難しく、明確であること。若手の現在の力より少し背伸び(ストレッチ)したレベルの課題を与える。難しい課題をクリアすることで能力は伸びる。
 第二に、結果についてフィードバックがあること。
 第三に、何度も繰り返すことができ、誤りを修正する機会があること。
 それらを踏まえることで、若手は自らの「経験から学ぶ力」を身につけていく。

精神支援の重要性と「マインドフル」な態度

 次に中原淳・東京大学 大学総合教育研究センター准教授の「職場学習論」から若手支援の中身について考えてみたい。
 中原准教授は、若手支援の内容を「業務支援」「内省支援」「精神支援」3つに分類している。そしてその支援が若手の成長につながっているかを「職場学習論」で分析している。その結果は意外なものだった。
 多くの上司は若手に仕事を教えようとするが、この業務支援は必ずしも若手の成長につながっていない。ただし力づけるなどの精神支援は若手の成長につながっている。つまり上司の一言が若手にとって大きな力になっている。

 キャリア論の第一人者である金井壽宏・神戸大学大学院教授は、「一皮むける」経験が人を成長させる、と言う。ある時、神戸大学に金井教授を訪れた時に、おもしろい考え方を教えてもらった。金井教授は「若手育成には“マインドフル”な態度が不可欠」だと言うのだ。
 このマインドフルは、イギリスの地下鉄に掲示されている「Mind your step!」(足元に注意してください)と同じ意味。「注意深く」「固定概念を持たずに」若手に接することが必要ということだ。

経験学習を通して「経験から学ぶ力」を身につける環境

 さて冒頭に「若手が“3年で一人前になる”会社の条件とは何か」は内定期間から3年目までのコミュニケーションであると言った。
 最後にこの結論をもう少し整理しよう。「若手が“3年で一人前になる”会社の条件」は、職場全体で若手にマインドフルな姿勢で関わり、経験学習を通して「経験から学ぶ力」を身につける環境が整っていることである。
 人事の中には「わが社は即戦力採用」と言う人もいるが、学生がすぐに戦力になるはずがない。手をかけて育てるという前提で採用すべきである。そして若手にみんなが関わり、育っていくような職場にしていかなければならない。

 そんな職場全体が関わりを持っているような理想の会社は少ないのではないかと考える人は多いだろう。確かに少ない。だが存在する。『週刊ダイヤモンド』の連載「課長の作法」では、そんな企業の事例を紹介している。
 たとえばアサヒビールでは、若手社員にブラザー(同一職場)とサブブラザー(他職場)をつけて若手をフォローしている。
 NTTコムウェアでは、職場を疑似家族のように見立てて、みんなで関わる風土ができてきた。

その他の特別講演レポート
いかにして社会人基礎力を企業と大学が共有するか
ここでしか聞けない!初めて発表する豊富なデータ!最新2012年度新卒採用総括&2013年度新卒採用完全予測