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変化した職場において、リーダーが変わらなければならないこと

今日の職場の変化

テクノロジーの進歩、製造業のグローバル化、ソーシャルメディアの影響などは、今日の職場に変化を与えている要因の一部に過ぎません。パンデミックの影響もあり、あらゆる人がほんの数年前とは異なる考えや感情を生活のさまざまな場面で持つようになりました。

変化が緩やかであれば、私たちはその変化に追随し、適応し続けることができます。しかし、政府による突然の規制や渡航禁止、隔離規則などにより、組織は生き残りをかけて迅速に職場を変えていかなければならない状況に直面しています。

では、リーダーは何をすればよいでしょうか?本コラムでは、変革時代において、リーダーはどのようにチームと協働すればよいのか、また、ハイブリッド型勤務やリモートワークでこれを実現するための戦略について、解説いたします。

本題に入る前に、今日の職場の変化に対し、推進力となるフレームワークを定義し、掘り下げてみましょう。

変化を推進することへの挑戦

VUCA(Volatility変動性、Uncertainty不確実性、Complexity複雑性、Ambiguity曖昧性)は元々、アメリカで使われていた軍事用語で、ソビエト連邦崩壊後に米国政府はこの枠組みを使い始めました。この言葉は、変化が激しく先行き不透明な社会情勢を表し、リーダーがリスクを特定し、軽減するための戦略を策定する際に役立ちます。では、それぞれの要素について考えてみましょう。

  • 変動性:変化の速度が予測できない、あるいはこれまでにはないような形で変動しています。コロナの発症率の増減に伴い、政府がいかに素早く社会的交流などの規制内容を変更してきたのかを考えてみてください。
  • 不確実性:このような時代において、過去から未来を予測することはできません。2020年に入り、数ヶ月の間に多くの業界で失業率が急騰しました。
  • 複雑性:原因や緩和要因が不明な、難しいケースが増えています。コロナ禍において、ジャストインタイム方式のグローバル・サプライチェーンが、トイレットペーパーなどスーパーマーケットに並ぶ生活用品の需要に追いつけなくなるという事態が、3世代ぶりに発生しました。
  • 曖昧性:事象や結果の意味が明確ではなくなっています。データが氾濫しているため、何と何が関連し、何がそうでないかを特定するのに時間がかかり、望ましい結果が得られないことがあります。

変革期のリーダーを支援するフレームワーク

VUCAという言葉は2020年以降、私たちが生きてきた世界を適切に表しているということに、異論を唱える人はいないと思います。VUCA環境は組織にも影響を及ぼし、多くの組織が事業の転換や閉鎖を余儀なくされています。また、従業員にも打撃を与えています。雇用の安定性、仕事への期待、社会的な交流のすべてが変わり、従業員の多くは、感情のジェットコースターに乗っているような状態です。

リーダーはVUCAへの対策として、「ビジョン」「理解」「明瞭さ」「アジリティ(敏捷性)」を提供することが、どのように役立つかを考えることが必要です。

hybrid-icon_01_vision.pngビジョン:

リーダーは組織やチームの将来像を従業員に明快かつ十分に伝え、そのビジョンを共有する必要があります。その際、進捗と成果を明確に測定し、チームの現状を把握しなければなりません。しかし多くの組織では、成果(業績目標)の測定に偏りがあり、行動を導くための確固たる予測指標があることは稀です。常に「短期でも成果を上げる考え方」に対するプレッシャーから、組織は短期的な目標設定の罠に陥り、大局的な見方がおろそかになってしまうのです。

hybrid-icon_02_understanding.png理解:

リーダーはビジョンを描くと同時に、チームが優れた人間関係と社会的ネットワークを構築できるよう環境を整える必要があります。2年間、仕事も交流も対処的なアプローチをとってきた今、コミットメントとコンセンサスを得るための時間をとることが重要です。新しい視点を生み出すために、情報の収集と解釈に労力を費やしましょう。リーダーが積極的に時間を割いて別の視点を探し、チームメンバーの話に耳を傾けることで、彼らは自分の意見を聞いてもらえたと感じるでしょう。

hybrid-icon_03_clarity.png明瞭さ

複雑性が増すなかで、優れたリーダーは社内の官僚的な体制を排除し、可能な限り部下に権限を委譲することで、プロセスや手続きを簡素化しようと考えています。また、チームの能力を明確に把握し、緊急性が高く重要性の低い業務については、「実施しない」もしくは「今は実施しない」と断言する勇気を持っています。優先順位の欠如と従業員がどのように対処しているかについての理解不足は、燃え尽き症候群という実際の症状となって現れます。

目標に注力し続けるには、チームの上位3つの目標を可視化し、新たな要望がどの目標と関連しているかを尋ねるというシンプルな方法があります。もし、いずれの目標にも当てはまらないのであれば、それは検討の対象にはなりません。さらに、チームにはアイデアを試して他の人と共有したり、阻害要因となり得る行動パターンに事前に対処したり、新しい習慣を迅速に身につけるためのコーチングをしたりする時間も必要です。

hybrid-icon_04_agility.pngアジリティ:

世界は常に進化しています。だからこそ、リーダーは新しいアイデアを積極的に取り入れ、最新のトレンドに対応しなければなりません。優れたリーダーは定期的にプロセスを見直し、「ベストプラクティス」に挑むことで、継続的な改善の文化を促進しています。明確な目標と計画的なコーチングを提供しながら、部下にやりがいのある仕事を任せることで、チーム内にリスクを厭わない姿勢を促します。失敗を、否定的なものではなく当たり前のこととして捉え、恐怖心をなくし、イノベーションを起こしやすくすることで、学習する文化を醸成します。

変化を推進するには、安定した時代とは異なる戦略やリーダーシップ・スキルが必要ですが、さらに考えなければならないのは、ハイブリッド型チームやリモートチームをけん引しながら、時代の変化に合わせてどのように進んでいくかということです。

リモートワークは私たちの働き方をどのように変えたか

「古き良き時代」のオフィスで働いていた時のことを思い出してください。朝礼の10分前、コーヒーを取りにキッチンに行くと同僚に出会い、週末の出来事や仕事に関する話をしたり、会議が始まる前に会議室に集まった同僚と雑談をしたり、新しくチームに加わった人や他部署から来た人に自己紹介をしたり。このようなつながりは、時には役割や部門を超えて、有機的かつ自然に生まれていました。

パンデミックの発生から約2年間にわたり、多くの従業員が在宅勤務をしていました。当初はそれが目新しく、士気を高めるためにオンライン飲み会や交流会などを行い、対面でのオフィスカルチャーを再現しようとしました。しかし、オンライン飲み会は私たちが失った有機的な交流や、それによって活性化される貴重なつながり、会話の代用にはならないことが明らかになりました。

私たちはバーチャルな職場による効率性を体験し、働き方にも変化が起こりました。連日の会議で予定は埋まり、一日の終わりにようやく自分の仕事をこなす日々。息つく暇も、頭を切り替えて準備する時間もなく、ミーティングが終わるとすぐに次のミーティングに参加し、食事やトイレの時間もない。私たちは8時間以上にわたり100%の効率を期待されていたのです。しかも毎日、毎日、毎日。

仕事は対処的になり、組織文化は希薄になりました。業務に関連したやりとりや対話だけに限定され、リモートワークは同僚、チーム、リーダーとのつながりを遮断してしまいました。多くの従業員は今でもそのように仕事をしています。

リーダーは有意義なハイブリッド型勤務やリモートワークを促進するために重要な役割を果たす機会があります。ここでは、リーダーが活用できる2つの戦略を紹介します。

戦略1:コラボレーション日の設定

組織によって意味合いが微妙に異なりますが、リーダーはオフィス勤務に戻ることに対して従業員がどう受け止めるかを考えなければなりません。約2年間、何の問題もなくうまくいっていたリモートワークから、今度は交通費をかけて電車や車で40分も通勤し、一日中オフィスでコンピューターの前に座っていなければならないことの意味を従業員にどう説明するのでしょうか?説得力がないのです。

そこで、出勤日を任意に決めるのではなく、オフィス勤務の要件を、緊密なコラボレーションが可能な日として設定します。対面の時間を「出勤日」とするのではなく、「コラボレーションの日」として、この日を中心に1週間の予定を構成しましょう。

例えば、ある企業では水曜日を「カンパニーデー」とし、全従業員がオフィスで仕事をする日と決めています。そして火曜日と木曜日は「コラボレーションの日」とし、組織上のチームや部門横断的チームがオフィスで一緒に働くことを推奨しています。特に部門横断的なミーティングは、コラボレーションの日に設定します。このような交流は連携を強化し、従業員の役割の相互関係を明確にし、連携とイノベーションに不可欠なビジネス領域を可視化します。

このような日の設定によって、仕事上の友人関係を構築するための時間も生まれます。仕事仲間との交流時間の欠如は、人々が疎外感を抱く理由の一つであり、社交の場を広げることは重要です。人は、職場に友がいると感じる必要があり、私たちは対面で交流することで、より迅速に信頼を築くことができます。

戦略2:マジックタイムの概念

従業員を集めるのに役立つもう一つの方法は、「マジックタイム」と呼ばれる概念です。これは、全員のカレンダー上で一定の時間枠(例えば、毎週金曜日の午後といった決まった時間帯)をブロックし、新たな問題や他の会議で取り上げられなかったトピックに対処するために、必要に応じて使用できるようにします。この時間帯には定期的なミーティングは入れず、全員の予定が空いています。マジックタイムは関係者が急なミーティングをしたり、チームが集まってブレーンストーミングをしたり、緊急の問題を解決したりするのに有用です。

執筆者:マシュー・ペイジ・ハニファイ

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