リーダー人材の採用と育成|リーダー人材の育成は新卒採用から始まる採用の見極めポイントと事例紹介

リーダー候補人材を育てる組織とは

仕事に夢中になれる環境であること

これまでは、リーダー候補人材について、主に資質の見出し方や採用について見てきた。ここからは、やや踏み込み、組織におけるリーダー人材の育成体制について考えたい。

多くの企業にとってこれからのリーダー候補人材にもっとも期待することは、新しい価値の創出、新規事業、イノベーションだろう。事実、どの企業でもイノベーションは大きな課題になっており、イントラプレナーシップを育てる動きも活発になっている。事業創造に深く関わってきた人材がトップになる例も出ているほどだ。ただちに新たな事業を創ってほしいといった期待ではなくても、経験したことのない事態や課題に直面した時に、それを打ち破るようなイノベーティブなチャレンジをしてもらうことが好ましいはずである。

一方、イノベーションは狙って起こせるものではないとの声も多い。世の中に新しい価値を次々と生み出していることで知られる、ある外資系複合企業は、「イノベーションを生み出そうなどと言っている社員は一人もない」と断言する。新製品やサービスの価値を決めるのは世の中だから、むしろ日々の仕事に真摯に向き合い、社会の動きやニーズを見ながら、絶えず現状を見直し、試行錯誤を繰り返すことが重要だと強調する。納得できる部分は多いだろう。

新しい価値の創造を期待するからといって、わざわざイノベーション部門などを新たに設けて配属する必要はない。それよりもむしろ、既存事業の現場に配属することが最適解だと考えられる。イノベーションを起こす人材は、現場の仕事に熱心に取り組む中から理想やアイデアを見出すからである。現場の仕事こそが人材を育てる。このため、組織にまず求められるのは、仕事に没頭できる環境を整えることだといえる。そして、「自分の本当にしたいこと」が見つかった段階で、例えば、社内ベンチャー制度などを通じて理想を実現できる仕組みがあることが望ましい。

チャレンジできる場を作る

リーダー候補人材は、有り余るモチベーションとポテンシャルを持っている。早い段階で、難易度が高くチャレンジが求められるプロジェクトにアサインすることが理想だ。従来のようなじっくり育てる姿勢では意欲を持て余してしまうし、場合によっては、チャレンジする機会の多いベンチャー企業に転職してしまうかもしれない。

成長を促すためには、業務上の課題と向き合い、ときに「理論的には合っているはずなのに、うまくいかない」などの状況を経験することが必要だ。本来なら実際の業務に取り組むことがベストだが、各企業の事業内容や時期によっては、プロジェクトへのアサインが難しいこともあるだろう。そうした場合は、既に紹介したTEX型のプログラムを導入するのも一つの方法である。従来の研修やセミナーは答えのあるものが多く、用意された答えを見つける力に長けた、いわゆる「優秀な人材」にとっては、予定調和で終わってしまうことも少なくない。しかし、地方が抱える現実の課題と向き合うTEX型では答えが用意されていない。チャレンジが求められ、リーダーシップが育まれるのだ。

マネジメントの観点からは上司の担う役割も大きい。ただし、従来の上司・部下の関係とは区別する必要がある点に注意しなければならない。 現在は、過去の経験や知識がものをいう時代ではなくなっている。若手の意見やアイデアが、経験のある上司より優れていたとしても何の不思議もない。「仕事を教えてやる」という姿勢を改め、可能な限り同じ目線に立ち、共に学ぶ意識を持つことが重要だ。ときには大胆に仕事を任せることも必要になる。そのほうが、仲間とのつながりを重視するミレニアル世代の価値観にも合致するだろう。また、若手のうちから経営陣と接する機会を設け、リーダー候補人材に「経営視点」を持たせるのも有効である。

若手リーダー候補人材の意欲に応え、チャレンジできる環境を整えることは、企業にとってとても重要だ。これからを見据えると、若手が活躍できる組織体制を早期に作り上げることは急務の課題と言える。

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