リーダー人材の採用と育成|リーダー人材の育成は新卒採用から始まる採用の見極めポイントと事例紹介

体験型のプログラムが、リーダー人材の発掘と育成に有効

実際の課題を通じてじっくりと「向き合う」、採用へのリーダー育成プログラム活用

リーダー候補を新卒採用するとして、まずは出会いがなくてはならない。さらに、見極めなくてはならないのは現在の専門性の高さやスキルだけではなく、資質である。物事へ取り組む姿勢や学ぶ意欲を見ながら、リーダーの資質があるか、没頭層なのかどうかを判断する。短時間の面接では見極めが難しいため、ある程度の時間を要するだろう。このため、学生と密に接する場の創出はリーダー候補人材を採用する有効な手段の一つと言える。

現在、国内の企業でも、採用時におけるリーダー育成プログラムやセミナー、インターンシップの活用が多く見られる。独自性の高いプログラムを実施し、リーダー候補の発掘を試みる企業も増えてきた。プログラムそのものが学生の持つ課題意識と直結するように工夫されており、興味を引き付けやすくなっている。しかも、スキルアップや人脈を広げる機会を得られるとあり、学生からの評判も上々だ。

その中の一つ、ファーストキャリア社のリーダー育成プログラム「リーダーズ・キャリア・キャンプ TEX(True Experience)」を紹介したい。これは、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)が授業の一環として提供するリーダー育成プログラム「ジャパンIXP (Immersion Experience Program)」をベースにしている。同プログラムは、HBSの学生が日本の東北地方を訪れ、ケーススタディを通じて経営に関する知識はもちろんのこと、世の中や仕事の価値観までも学べるようになっている。

TEXは日本の様々な地域で実施され、学生と社会人(プログラム実施企業から派遣された社員、若手リーダー候補)がチームを組んで、地元企業や行政リーダーたちが直面している社会課題の解決を図る。学生と社会人で同じ未来を描き、最終的には実際に今後についての提案を行うが、当然のことながら正解はない。非常に緊張感の高い中で現実の課題と向き合うことになり、学生だけでなく企業の若手リーダー候補にとっても、学ぶ姿勢や目的意識が問われる場となっているのだ。

「没頭層」と親和性の高い体験型プログラムがリーダー人材採用の鍵に

TEXの効果はどのようなものだったのか。また、そこから採用に至ったケースはあったのだろうか。例えば、2018年に岩手県の陸前高田市で4日間の日程で2回行われたTEXでは、参加企業側から学生の持つ真のポテンシャルが見えてきたとの声が上がっている。実際、プログラムでの出会いがきっかけとなり、採用に結び付いたケースもあったという。

実際にはどんな学生が参加しているのか。学生の参加者を見てみると、いわゆる「意識高い」層をはじめ、多様な個性の参加があり、その中に、「没頭層」も多く含まれていたようだ。これは、テーマが有意義かつ本質的で、チャレンジ精神を求められるTEXの特徴が、学生団体や勉強、部活など、一つのことに深く打ち込み、社会に出てからも打ち込めるものを求めている没頭層のニーズと合致したと考えられる。

TEXのほかにも、社会課題の解決をITCの活用で目指すソフトバンク社のTURE TECH(ツレテク)、働きながらITスキルと英語、グローバルリーダーシップの向上を目指す、日本アイ・ビー・エム社の障害者向けプログラム「Access Blue Program」などが注目されている。各社ともさまざまな工夫を凝らしながら、リーダー候補人材との出会いや採用を試みている状況だ。

こうした体験型のプログラムは、採用担当者やリクルーターの人材発掘の能力を高める場にもなっている。まだ没頭層を見抜く目が養われていない初めのうちは、「採用力の向上」に主眼を置くのも、プログラム活用の重要なポイントとなる。

いずれにせよ、もはや従来型の一括採用ではリーダー候補人材の採用に限界がある。自社の採用をいかに革新させるかが、リーダー候補人材採用の成否の鍵を握るだろう。

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