リーダー人材の採用と育成|リーダー人材の育成は新卒採用から始まる採用の見極めポイントと事例紹介

リーダーとなる人材を見極め、採用するには

従来の「投網式」では、リーダー人材の採用が困難になる

HR総研とファーストキャリア社が行った調査で、「将来のリーダー候補人材の採用」について尋ねたところ、「新卒採用でも将来のリーダー候補をできるだけ採用したい」と回答した企業が42%に上った。「新卒採用でもリーダー候補を少しは採用したい」は21%。合わせて6割以上の企業が新卒採用からリーダー候補人材の獲得を意識しているという結果になった。対して、「リーダー候補は実績を重視して、キャリア採用に委ねている」はわずか2%にとどまり、新卒採用者からの育成を想定している企業が多いことが伺える。 しかし、人材の早期獲得を重視する一方で、未来のリーダー人材を採用の時点でどう見極めるのかに課題を感じている企業も多い。より正確には、これまでの採用手法、選考基準では、リーダー人材を採用できなくなってきているのだ。

近年、新卒採用は変化の只中にある。通年採用など新たな動きに対応している背景もあるが、企業側には「多様な人材を採用したい」という意向も強い。これは、従来型のマス採用、ナビ登録した学生たちで大きな母集団を築く「投網式」採用によって、企業が長らく画一的な人材を採用してきたことの裏返しでもある。
これまでは、どの企業にとっても「優秀な」人材は同質で、就活慣れし、いかにもエリート然とした、いわゆる「意識高い」層が好まれた。一人の学生に内定が集中することを見れば、そのことは明らかだろう。しかし、「投網式」でこれからのリーダー候補人材と出会う確率は高いとは言えないのだ。なぜなら、未来のリーダー候補人材は、就職活動への意識がそれほど高くない傾向にあるからだ。
リーダーの資質として「一つの物事に深く打ち込める力」「正解の見えない中で試行錯誤を繰り返せる力」「周囲を巻き込む力」などが要求されることは既に述べたが、これらの資質を備えた人材を、物事に没頭するという性質から「没頭層」と呼ぶことにする。

没頭層は就職活動よりも自らの興味や問題意識を優先させる。限られた時間で就活をし、パッと就職先を決めてしまうことも多い。このため、就活が長期化しやすいナビへの登録は積極的には行わないようだ。しかも、一見してすぐそれとわかるような特徴も持っておらず、従来型の面接や適性試験では見極めが難しい。加えて、入社してすぐに結果を出すようなタイプとは異なることにも注意が必要だ。ただし、見極めが難しい分、「意識高い」層と比べて獲得競争は激しくなく、企業が見逃しているダイヤの原石とも言えるのだ。

採用担当者には、人材に個別にアプローチすることや、場合によっては、没頭層が集まるコミュニティを見つけ出し、コミュニティの参加者となることも求められる。採用担当者やリクルーターの育成も重要なポイントとなるのは間違いない。

多様な手法で資質を見極め、人材へのアプローチを試みる

では、どのようにして没頭層との出会いを果たし、資質を見極めればいいのか。没頭層へのアプローチを行う前段として、企業は「自社にとって」優秀な人材とは何かを定義することが求められる。既存のコンピテンシーを当てはめるだけではこれまでの採用の延長になってしまう。既存のものに加え、例えば、「創造性」や「チャレンジ精神」など自社のこれからの人材には何が必要となってくるかを考慮し、新たな基軸を設けることが欠かせない。やみくもに没頭層を採用しようとしても、自社にとって優秀な人材を理解していなければ、結局、画一的な人材を採用することになりかねないからだ。自社に最適な人材を定義する際、有用なのが「タレントパレット」や「カオナビ」をはじめとしたHRテックである。HRテックは急速に発展しており、社員のデータからコンピテンシーを弾き出し、選考に活用している企業も少なからず出てきている。

ナビでの採用のみに頼ることなく、インターンシップ、文系理系に関わらず研究室訪問、オウンドメディア、SNS、人材紹介などを多角的に活用し、学生たちの興味を自社に引きつけることも重要だ。動画に対応した面接ツールを取り入れ、録画データから会話の内容や量、音声などを分析することなども有用だろう。また、募集の入り口別に選考基準を変えれば、さまざまな角度から没頭層を見つけだすことにつながるはずだ。

没頭層を見つけ出しても、必ずしも入社につながるとは限らない。志望度を高める必要が出てくる。そのために有効な手法の一つが、対象となる学生に似ている社員との出会いである。学生はその社員を通じ会社へ興味を持ち、志望度を上げていく。このため、自社で既存の社員の中から新時代のリーダーとされる人材を発掘することも求められる。これは、自社の埋もれた人材の発見につながるかもしれない。その上で、学生と社員との出会いの場を創出することが、リーダー候補人材発掘のカギとなるだろう。

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