リーダー人材の採用と育成|リーダー人材の育成は新卒採用から始まる採用の見極めポイントと事例紹介

採用と育成は、点から線、そして面へ

求められる、採用と育成の一体化

ファーストキャリアとHR総研が行った調査では、「新卒採用部門(担当)と人材育成部門(担当)間の連携がうまく取れているか」との問いに対し、「大変うまく連携できている」が12%、「まあまあ連携できている」が41%で、約半数の企業が一定の自己評価をしていることがわかった。しかし多くの場合、採用部門は新人の採用・集合研修までを担当し、その後は育成部門が責務を負う、というように業務分担が出来上がっている。加えて、育成部門が行う研修などのOFF-JTは、学びの内容と現場の実態がかけ離れ、社員にとって単なる負担となってしまっていることも少なくない。事実、福利厚生の一環のつもりで実施していた社員教育が、調査の結果、社員から無駄だと思われていることがわかった、という話まである。このほか、例えば英語力など、社員が個々に抱える課題を解決するために研修が実施されることもあるが、その場しのぎの感は否めない。

新人に限らず、人がもっとも大きな学びを得、成長するのは「仕事の現場」だ。中には、育成部門はさておき、若手を内々に幹部候補として採用し、社内の花形部門を経験させるなど、いわゆるエリートコースを歩ませている企業も少なからずある。しかし、現状の主力事業が数年後にはなくなっている可能性すらあるのが、現代のビジネス環境である。既存事業のハイパフォーマーというだけではリーダー候補になり得ないことは、既にお伝えした通りだ。現場に任せっぱなしにはできない。採用部門と育成部門、さらには現場のより密接な連携は、リーダー人材輩出の重要なキーになる。採用部門と育成部門については連携というより一体化に近い形が望ましく、今後は採用と育成、両部門の統合が期待される。

若手を意識的に将来のリーダーへと育成する

育成に関して言うと、現在のタレントマネジメントは、一定の経験を積んだ社員、マネージャー昇格手前の段階で始まることが多い。しかし、これからは意図的に若手をリーダーへと育てるべく、先にも少し述べたが、採用、新入社員の段階からの育成、すなわち「ヤングタレントマネジメント」が求められる。リーダー候補との出会いから、採用、育成、活躍までワンストップで行うのが、ヤングタレントマネジメントの基本的な考え方だ。現状の点の研修から将来を見据え「線で行う育成」へと転換を図る。さらには、育成対象者のみならず、波及効果で周囲のレベルアップにもつながれば、線から面へ広がる、理想的な人材育成の図式となるだろう。

とはいえ、現状のあり方を一度に変え、すべての若者に対してヤングタレントマネジメントを実施するのは、口で言うほど簡単なことではない。そこでまずは、経営リーダー候補に対しファストトラックを用意することを提案したい。ファストトラックのポイントは次の3点、リーダーのポテンシャルを持つ人材との出会い、リーダーへの動機づけ、抜擢での配置、である。

ヤングタレントマネジメントでは、入社2〜3年のファーストキャリア期にも将来を見据えて積極的な人材開発を行うが、「あまりに若いうちからでは効果が薄いのではないか」「経験を積むのを待ちたい」との声も出てくるかと思う。しかし、今の若い世代にはかつての「石の上にも三年」というスピード感は遅すぎる。加えて、ベンチャー企業などに行けば、早い段階から重要な業務を多く任されることも知っている。時を待つ戦略はもはや時代に沿うものではなくなっており、早い段階から積極的に働きかけていくことが必要となる。近年、キャリアは会社が与えるものではなく自分で選択するもの、という考えが主流になってきている。こうした中、本人に早期にリーダー候補であることを自覚させるのも、会社側として必要な措置となるだろう。

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