リーダー人材の採用と育成|リーダー人材の育成は新卒採用から始まる採用の見極めポイントと事例紹介

今なぜリーダーなのか(2)育成は採用段階から始まっている。「ヤングタレントマネジメント」の必要性

変わるリーダー像

リーダー人材の不足はなにも今に始まったことではない。企業は常にリーダーを必要としており、いい人材の採用と育成を熱心に行ってきた。特に90年代後半から始まった経済低迷に伴い、次世代のリーダーを育成する研修が多くの企業で取り組まれるようになった。投資判断を左右するアナリストからもリーダー育成状況が重視され始め、企業価値を形成する要素の一つとして着目されるようになった影響も大きいだろう。近年はサクセッションプログラムを実施し、後継者を育てる動きも活発になっている。外資系企業の中には、新社長の最初の仕事が、次期社長の候補者選びというところもあるほどだ。

現在がこれまでと違うのは、求められるリーダーの質が大きく異なる点である。既に見てきたように、2000年代に入ってから、これまでに経験したことのないような変化が急速に起こっている。過去の、時代で区切るなら2000年以前のリーダー像には、ある程度の明確さがあった。ビジネスモデルの転換をあまり考慮しなかった当時、今のビジネスを上手に遂行できる人、つまりハイパフォーマーがリーダーとなり、やがてトップとなっていたのである。

しかし、今は「先の見えない時代」だ。この先まったく違うビジネスを行っている可能性も十分にある中で、現行のビジネスのハイパフォーマーというだけでは、次世代のリーダーとはなりえない。企業ごとに理想とする人物像は異なるが、少なくとも、時代の変化やマーケットのニーズを敏感に感じ取り、新たな価値を生み出す創造性、未知へのチャレンジを続ける力は、共通して必要になるだろう。これからは、かつてとは違った視点で人材を評価・発掘しなければならない。わからないことを突き詰めていく姿勢はこれからのビジネスには欠かせないと考えられるが、そうしたことのできる人材の一部はしばしば「スペシャリスト」へと成長する。一方で、「リーダー」には一定以上の深い専門知識よりも、周りを巻き込む力や、集団を目標に向かわせられる力が求められることが多い。現代は業務の細分化・深化が進み、一人でビジネスを遂行できるほど事業が単純でないことを合わせて考えれば、スペシャリストとリーダーに求められる能力も自ずと分けて考える必要がある。この層を見極め、いかにうまく経営への興味を持たせ、能力を育てていくかが重要だ。

先の見えない時代に企業に求められる人材育成とは

では、そうした人材はどう育てていけばいいのか。ハイパフォーマーをそのままリーダー・トップに据えていた時代は、育成の道筋はある程度決まりきっていた。現場が主導権を握り、「背中を見せる」OJTで次期リーダー候補を育てるという構図だ。実際、入社後に導入研修をした後は現場に任せっぱなしという企業は多いだろう。単発の研修は実施するものの10年程度は特別な育成プログラムなどはなく、一定の年数が経ったところで、高いパフォーマンスを上げている人材を選出する。そこから改めてタレントマネジメント対象として管理職研修などを受けさせ始めるのが、これまでのリーダー育成だった。

しかし、今の時代はそうはいかない。入社してすぐ、さらに言えば採用の段階から意図的にリーダー人材を見極め育てていくこと、すなわち「ヤングタレントマネジメント」が必要なのである。リーダー適性を持つ人材の確保が難しくなっている今、集まった人材をふるいにかけて選ぶ企業主体の採用・育成はますます通用しなくなってきている。より戦略的にリーダーを創出する仕組みが求められているのだ。しかし現実として、企業に次世代リーダー育成のノウハウが十分に形成されているとは言い難い。事業部門だけでなく、採用・育成にもイノベーションが必要な状況だということを理解し、真摯に取り組むべきだろう。

ヤングタレントマネジメントにおいて忘れてはならないのが、人材そのものの志向の変化である。概ね1980年〜2000年初頭ごろに生まれた、今の若者はミレニアル世代と呼ばれる。SNSなどを通じ個人と社会がダイレクトにつながっている、デジタルネイティブなこの世代の大きな特徴は、「個を重視する」ということだ。個を押しつぶし組織(会社)を優先させてきた世代と異なる価値観を持つ。組織より個人の思いを優先する一方で、柔軟性に富み他者の価値観に寛容で、社会貢献への意欲も高い。アメリカではミレニアル世代がCEOに就くなどビジネスの中心となっており、この世代に馴染まないと組織が消滅するとまで言われている。日本でも、やがて同世代が企業の幹部となり、消費の中心となっていく。新しい世代の価値観を理解し、必要に応じて組織体質そのものを変えていくことも重要である。

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