リーダー人材の採用と育成|リーダー人材の育成は新卒採用から始まる採用の見極めポイントと事例紹介

今なぜリーダーなのか(1)
衰退から回復への「勝負所」転換の岐路に立つ日本企業

激変する社会

今なぜリーダーなのか。本題に入る前に、日本を取り巻く環境の変化を見てみたい。現在の日本は大きな転換期を迎えている。時代が急激に、これまでにないスピードで変化していることは、多くの人が肌で感じていることだろう。価値観が多様化し、グローバル化の波が押し寄せている。多様な分野でデジタル化が進み、AIやIoT、ロボティクスなど先端のテクノロジーを活用した新しい商品やサービスが次々と生み出され、その結果、生活はより便利になっている。一方で、日本は世界のどこよりも早く高齢社会となった。一般に、65歳以上人口の総人口に占める割合が21%を超えると超高齢社会と言われるが、内閣府の高齢者白書によれば、日本は2017年で27.7%となっている。参考までに、続いてドイツが21.1%、スウェーデンが19.6%(いずれも2015年)と、日本の突出した高さが目立つ(*)。加えて、2008年を境に人口減少も進み、日本はしばしば「課題先進国」と称される。課題への取り組みは既に国家レベルの話ではなく、たとえばより身近な「雇用」や「働く環境」に目を転じてみても、新卒の一括採用から通年採用、ダイバーシティの取り組み、終身雇用の崩壊、働き方改革など、激変の真っただ中にあると言える。

こうした時代の大きな特徴の一つは「先が見えない」ことである。次に何が来るか、何が流行するかを予測することはほとんど不可能なことであり、ビジネス環境はいわゆるVUCA(ブーカ、Volatility・変動性、Uncertainty・不確実性、Complexity・複雑性、Ambiguity・曖昧性の頭文字からなる)と呼ばれる様相を呈している。さまざまな商品・サービスが生まれているのも、こうした時代の裏返しとも言える。もはや5年先10年先がどんな社会になっているか、どんなビジネスが生まれているか、あるいはなくなっているか、ぼんやりと想像することすら非常に困難な状況だ。

変化を迫られる日本企業

日本企業は1990年前後から、不景気との闘いが続いている。90年代初頭にバブルが崩壊し、2000年代初頭には景気回復の兆しを見せたが、2007年ごろから始まるサブプライムローン問題、2008年のリーマンショック、2011年には東日本大震災に見舞われ、日本経済は後退。この間には中国の台頭もあり、GDPは世界2位から3位となった。この期間は失われた10年とも20年とも言われるが、さらに30年に延長するのではないかとの声もある。かつては世界を席巻した日本企業、メイド・イン・ジャパンも、プレゼンスを大きく低下させた。世界中の企業を対象とした総収益ランキング、フォーチュン・グローバル500では、ランクインした日本企業が最盛期の約3分の1に減少するなど衰退ぶりが顕著である。

衰退の大きな要因の一つとされているのが、日本企業が事業転換を図れなかったことだ。モノづくりで大きな成功を収めた企業が、新しい価値の創造、イノベーションの創出に苦戦していることが少なくない。従来の日本企業の成長戦略は、終身雇用制を背景に組織力を強化し、長期的な視点で開発、改善を重ねることだった。そうした戦略が功を奏し、優れた性能を持つ製品も世に送り出してきたが、半面、新たな価値創造、イノベーション競争に後れを取り始めた。世界がボーダーレスとなり、海外の企業が日本に進出、シェアを拡大している今、日本企業が早期に軌道修正できなければ、さらなる企業プレゼンスの低下、ひいては国力の衰退を招くことになる。

ただし、日本企業もこの数十年の間、ただ手をこまねいていたわけではない。特に近年は、M&Aやオープンイノベーションに積極的に乗り出すなどし、組織の構造改革を推し進め、ある程度の成功を収めている。しかし、そのような流れの中で浮き彫りになってきた新たな課題がある。「リーダー人材の不足」である。変化を受け入れ、イノベーションを起こす準備を整えて、ふと自社を見渡してみると牽引する人物が欠けていた——。このような状況は実際に起こっており、「次の世代を任せられる人物、次期社長となり得る人材が見当たらない」との声も多い。ハードは揃っても、ソフトがない状態だ。今、日本企業は「勝負所」を迎えている。ここをどう乗り切るかで、この先の未来が大きく変わってくる。だからこそ、未来を見据える企業であればあるほど、リーダー人材の採用と育成を急務の課題としているのである。

※ https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/index.html

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