やっていることは同じにみえても、違法と合法に分かれるその違いは?|採用、育成・研修、労務・人事に関する情報ならHRプロ

人事にプロのサポートを―新卒採用、中途採用、人材育成、研修、人材マネジメント、労務、人事システム、適性検査ならHRプロ

  • HRサミット2017 7月下旬お申込み開始予定!

やっていることは同じにみえても、違法と合法に分かれるその違いは?

HRプロ編集部
2014/01/23

このコラムをお読みいただいているような勉強熱心な方には当たり前のことかもしれない。しかし、極めて重要なことであるので書かせていただきたいことがある。
 行っていることは同じにみえても、ある会社では合法で許されるのに、別の会社では違法になってしまうことがある。他社が行なっているからという理由だけで安易に真似をするのはやめた方が良い。

 例えば、遅刻をした場合の賃金の取扱いを例にしてみよう。数分の遅刻をした場合であっても30分の遅刻とする処理をしている会社はないだろうか。このコラムをお読みの方の会社の中にもあるのではないかと思う。

 「経営者が以前勤めていた会社でそのような取扱いを行っていた」など理由は様々だろうが、他の会社で行われていて問題が生じていないという理由だけで行っている会社は多いのではないかと思う。

 しかし、遅刻をした場合にカットして良い賃金は実際に働かなかった時間の賃金のみである。数分の遅刻にもかかわらず30分の賃金をカットするという処理は認められない。賃金の全額払いの原則に反して違法となる。

 では、30分の賃金を支払っていない会社はなぜ許されているのだろうか。

 おそらく、就業規則の減給の制裁という手続を経て30分の賃金を支払わないということになっているはずである。遅刻という懲戒の事由に対する制裁としての罰を与えているはずである。

 30分の賃金が支払われないという結果は同じであっても、その理由が違うのである。30分未満の遅刻は30分に切上げて賃金をカットするというのは賃金の全額払いの原則から違法である。一方、遅刻という懲戒の事由に対する制裁として、遅刻をした時間と30分の差額を減給するというのは、きちんとした手続を踏み条件を満たしていれば許される。

 従業員にとっても会社にとっても、30分の賃金が支払われないという結果は同じである。しかし、減給の制裁という手続を経ないと違法になり、法律上は全く異なるものになる。どちらでも結果が同じなのだから良いではないかとはならないのである。

 「わが社は数分の遅刻で30分の賃金を支払っていない」という話をどこかから聞いてきて、それをそのまま真似をすると場合によっては違法となりかねないのである。他の会社がやっているからといって、安易にそのまま真似をすることはやめた方が良い。遅刻をした場合の賃金の取扱いを例にとり説明をしたが、このようなことは他にもたくさんある。

 なお、労働基準法第91条に減給の制裁については条文があり、減給の制裁がどこまでできるのかについて規定している。「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」としている。

 減給の制裁を行うには就業規則への記載が必要になる。従業員数が10人になったので仕方なく就業規則を作成するというのではなく、積極的に作成していただきたい理由はこのようなところにもあるのである。


フェスティナレンテ社会保険労務士事務所 小嶋 裕司

プロフィール

HRプロ編集部

「採用」「教育・研修」「労務」「人事戦略」など、人事がイマ知りたい情報をご提供します。 押さえておきたい基本知識から、最先端のニュース関連情報、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届け。

2019卒版 インターンシップ プログラム作成完全マニュアル申込受付中

関連リンク

  • 企業も従業員も知っておくべき「うつ病」の実像(前編)

    精神疾患のなかでも、「うつ病」ほど身近な病気もないだろう。企業等に属していれば、少なからぬ従業員が罹患し、通院したり、休職したりしていることもある。しかし、「うつ病」の実像をどれだけの人が御存じだろうか。本稿では、現代病ともいえる「うつ病」について、企業・従業員とも理解しておくべき実像を「前編」「後編」に分けてお伝えしよう。

  • 地元就職は難しい? ―― 2018年卒マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査結果

    各種就職・転職サービスを展開する株式会社マイナビは、2017年5月、「2018年卒マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」の結果を発表した。2018年3月大学卒業予定者(有効調査回答数6,969人)を対象に調査を行い、地元に就職を希望する学生の割合の変化のほか、地元企業への就職活動で障害となっていることや、地元就職を希望する理由などについて明らかにしている。

  • 学生が求めるのは「安定」と「やりがい」のバランス? ━━ 2018年就職企業人気ランキング

    株式会社マイナビは、株式会社日本経済新聞社と共同で、2018年卒学生を対象に、2017年の2月から4月半ばにかけて就職人気調査を実施。同年4月26日に「マイナビ・日経 2018 年卒大学生就職企業人気ランキング」として発表した。 文理別、男女別など各上位 100 社の傾向を分析し、その背景を探ってみたい。

  • 「テレワーク」は働き方を変えるか!?

    政府はワーク・ライフ・バランスを推進するために、多様な働き方のひとつとしてのテレワークを推奨している。しかし、実際に導入に踏み切る企業(特に中小企業において)は少ない。実際にテレワークを導入する場合、企業にどのような影響があるのだろうか。

  • 受動喫煙防止法強化をどうとらえるか

    今年3月に厚労省から「受動喫煙防止対策の強化について(基本的な考え方の案)」が公表された。 受動喫煙防止が平成15年に努力義務とされ10年以上経過したが、依然として飲食店や職場等での受動喫煙は多く、取り組みは限界に達している。こうした現状を受けて、喫煙禁止場所の範囲、施設等の管理者の責務、利用者の責務を明らかにし、この3点の義務に違反したものに対して罰則(過料)を適用することが強化のポイントだ。 施工日は平成31年のラグビーワールドカップに間に合うようにしたい、としている。

  • いつまでもあると思うな親と金と我が社の社員

    何かとトラブルになりがちな社員の「引き抜き」。場合によっては会社の死活問題にもなりかねない社員の引き抜き行為は、本来許されるものなのか、許されるとすればどの程度なのか、防止策はないのか。トラブルに巻き込まれないために、引き抜く側、引き抜かれる側それぞれの立場での注意点を考える。