マッチする、シニアと社会のニーズ

シニア世代であれば、会社で部下をもっていた人も多いはずだ。そうした、一度ある程度の地位や名声を築いた人が、リタイアしたからといって軽作業・事務などのアルバイトで人に使われるよりも、「先生」として扱われることを望む思いは理解できる。

また、労働目的についての調査結果を見ると、「自分のスキルや経験によって社会に貢献したい」と考える声が加齢とともに高まっている。自身の経験を社会に還元したいと考えるシニア層にとって、将来のある子どもたちに直接勉強を教えられる塾講師は、次世代への貢献を直に感じられる魅力的な職種と言えるのではないだろうか。

地域コミュニティが希薄になる中、シニア層には、長年第一線で働いてきた知識や知恵を若い世代に継承できる仕事をしてもらえる方が、社会にとっても有効な人材活用と言えるだろう。

実際に、地域単位でシニアの力を積極的に活用しようと動いている例もある。
高齢化が進む山形県では、県から委託を受けた山形大学国際事業化研究センターが中心となり「ものづくり産業シニア人材活用事業」を展開している。シニア世代であるものづくり企業OBをインストラクターとして養成し、県内の企業に派遣。経営の効率化に貢献してもらうという仕組みだ。

このように、社会のニーズと、自らの経験を活用した社会貢献を望む高齢者の想いはマッチしている。
また、リタイアした家族が、精神的に良好な状態で第二の人生を送れるかは、身近な人間にとっても大事なことといえる。
これからますますシニア世代が増える中、本人にとっても、家族にとっても、社会にとっても喜ばしい状況を作れるかは、シニアが「教える仕事」に就ける環境を、いかに用意できるかが鍵を握ると言えそうだ。
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