16年卒採用、17年卒採用と2年続けてスケジュールが変更となり大きな混乱を招いた新卒採用。18年卒採用は前回と同じく3月1日に企業説明会が解禁、選考も6月1日に解禁となる。
18年卒の新卒採用を成功させるためには、何が有効なのか。どういった点に注意すべきか。17年卒採用を振り返り、考察してみたい。
インターンシップに注目! 17年卒採用の振り返りから見えてくる18年卒採用動向

企業は大苦戦! 17年卒採用を振り返る

17年卒の新卒採用を総括すると、売り手市場化が進み学生が応募数を絞り込んだため、応募者数が減少したほか、短期決戦で早くに内定を受けた学生が、後に迷いが生じるなどで、内定を辞退するケースが増加した。また、特定の業界が注目を集める一方で、BtoB企業、不認知・不人気企業は学生から発見されにくくなり、学生を集めることに苦労したことなどが挙げられる。
6月末段階で、第1志望からの内定をもらった学生は、文系6割、理系7割。文系の7割、理系の8割が早期に就職活動を終了したため、企業は後半、内定数充足率が上がらずに苦戦を強いられた。

企業の動向で目立った点は以下の通りである。

(1)広報活動に苦戦する企業が目立つ
17年卒は説明会解禁の3月から選考解禁の6月まで実質3ヵ月しかなかったため、プレエントリー数、セミナー参加者数共に減となった企業が多く、広報に苦戦する様子がうかがえた。

(2)内定充足率に見る大企業と中小企業の格差
2016年11月段階での内定充足率を見ると、大企業では5割以上であったが、中堅企業の23%、中小企業の33%が5割未満であった。中でも、中小企業では充足率が2割未満という企業も15%あり、大企業と中小企業の格差が際立った。

(3)インターンシップに注目が集まる
従来、インターンシップ実施のピークは夏と冬で、夏の方が盛んだった。しかし、広報解禁が3月になったことで、直前の2月開催企業数が8月開催企業数を抜いた。長期休暇の夏の就業体験型とは違い、何かと批判のある半日~1日のセミナータイプが主流だったが、実際は学生の評価は悪くなかった。
また、過半数の企業が採用選考にインターンシップを利用。特に中小企業では、半数の企業が採用と直結した。文系、理系共に3分の2の学生がインターンシップ先企業に正式に応募し、2016年11月段階で文系の3割、理系の4割以上が、インターンシップ先から内定を得ていた。

(4)採用ナビに頼らないオリジナルの企業説明会
採用ナビに頼らない採用方法へ変化しつつあり、説明会の内容も多様化した。社長や役員が登壇、夕方や週末開催など、各企業で工夫をこらしていた。

(5)採用方法の多様化
スカウトサイト、リクルーター、OB・OG訪問などを活用する、エントリーシートの提出期限を早めるなど、企業それぞれの方法が採られた。

(6)大企業は学内企業セミナーを重視
企業規模が大きいほど、「合同企業セミナー」ではなく、参加学生を特定の大学に絞ることができる「学内企業セミナー」を重視した採用を行っていた。これは、大企業ほど欲しいターゲットを絞り込んでいた結果であると思われる。

18年卒新卒採用は早期決戦! インターンシップがさらに重視される

18年卒採用の今後の動向はどうなるのか。ここでも企業が注目する取り組みとして、「学内企業セミナー」「インターンシップ」「自社セミナー」の3つが挙げられる。特にインターンシップが今年も高い注目を集めている。

【企業の動向】
(1)インターンシップ実施企業の増加

早い段階で学生に企業が認知され、採用に結びつく可能性も高く、学生の参加意欲も高いというインターンシップの有用性から、大手企業を中心にインターンシップ実施企業が増加。既に大手企業の4割が、夏のインターンシップを実施済みというデータもあり、採用活動開始直前の冬のインターンシップは、1日タイプで大手企業中心に6割の企業が実施したと予想される。

(2)学内企業セミナー実施企業の増加
学内企業セミナーの参加大学を増やすという企業が3割近くに上っている。

(3)個別セミナー開始は3月が最多
個別セミナーの開始は3月という企業が最も多く、2月までに開始する企業と合わせると全体の3/4が開催。早めの開催で、面接・内定も早期化が予測される。これに合わせるように、採用HPは2月までに開設する企業が6割となっている。

【大学の動向】
大学側も、18年卒学生に向け強化したい就職指導のトップはインターンシップとしており、インターンシップへの注目度がうかがえる。
学内企業セミナーの開催は広報解禁の3月に集中し、その後4月と8月に減少するが、10月までは増加傾向である。この学内企業セミナーの参加企業について、これまで実績のある企業だけの参加とする大学は1割にも満たない。多くの大学で、新規企業の参加を受け入れる用意があるということを覚えておきたい。


売り手市場が続く中、インターンシップや個別セミナーなど、採用手法の多様化は一層進むとみられる。
18年卒採用ではすべての企業層で3月以前からの活動が活発となり、面接・内定が前倒しの傾向が予想されることから、企業は早期決戦を意識し、早い段階で学生の志望動機を高めていく必要がある。母集団形成後にセミナーを開催する時間的余裕はあまりないことから、同時並行で選考を進める企業も少なくないだろう。
学生に自社の魅力を伝え、「入りたい人」ではなく「採りたい人」の採用を実現するため、企業側には先手をとる積極性と採用方法が求められてくるのではないだろうか。

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