早いもので2017年も3ヵ月が経過し、新しい年度が始まった。人事労務の視点でみれば、雇用保険料率・健康保険料率の改定時期でもある。雇用保険料率に関しては、平成29年4月1日より引き下げが確定したようだ。全国健康保険協会の健康保険料率も3月分保険料より改定が行われる。また、雇用関係の助成金に関しても見直しや新設が行われることがほぼ確定したようだ。
以下では見直しが行われる助成金に関し見ていくことにする。
変わる助成金

キャリアアップ助成金

 有期雇用社員を無期雇用社員もしくは正規雇用社員に転換した場合に助成される、キャリアアップ助成金 正社員化コースの見直し点は以下の通りだ。

(1)割増助成の要件として、生産性要件の設定
(2)多様な正社員への転換区分の廃止


 現状の正社員化コースの助成額は、有期雇用社員より正規雇用社員に転換した場合に1人当たり60万円(中小企業の場合)である。だが、見直しにより1人当たりの助成額は57万円に変更となる予定だ。ただし、一定の生産性要件を満たした場合には1人当たり72万円が支給される。そのため、生産性要件を満たすことができれば、支給額は現状よりも増えることとなる。

 また、派遣労働者を正規雇用で直接雇用する場合の助成額も30万円から28.5万円に変更となるが、こちらも生産性要件を満たす場合には、36万円と増加することとなる。
加えて、多様な正社員(勤務地限定正社員・職務限定正社員・短時間正社員)を正規雇用社員内に含めることになるため、今後は、多様な正社員から正規雇用社員への転換等は行ったとしても助成金の対象にならないことになる。

キャリア形成促進助成金

 雇用する労働者に職務に関する職業訓練等を実施した場合に、訓練経費・賃金の一部を助成するキャリア形成促進助成金の大きな見直し点は以下の通りだ。

(1)名称変更(人材開発支援助成金)
(2)助成メニューの統合
(3)生産性要件の設定
(4)助成対象時間の緩和・支給限度額の引き上げ


 現在3つある訓練コースが2つ(特定訓練コース・一般訓練コース)に整理統合され、キャリアアップ助成金と同じく、生産性要件を達成した場合に割増で助成されるようになる。
また、一定の訓練に関しては、助成対象訓練時間の下限が20時間以上から10時間以上に引き下げられる。くわえて、特定訓練コースを実施する一部の事業主については支給限度額が500万円から1,000万円に引き上げられる。

 キャリアアップ助成金 正社員化コースの今回の見直しの適応となるのは、平成29年4月1日以降に転換がおこなわれた労働者からとなり、キャリア形成促進助成金(人材開発支援助成金)に関しては、4月1日以降に届出を行う計画からの予定だ。

 今回の助成金の見直しでは、単に転換する・教育訓練を行うというだけでなく、それによる生産性等の効率的な部分を求められるようになってきている。今後もこの流れは強くなることが予想される。主となる部分の支給額減らし、一定の条件(生産性や効率性)を達成した場合に割増にて助成を行う助成金が中心になっていくのではないだろうか。


社会保険労務士たきもと事務所

代表 瀧本 旭

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