経済産業省が推奨する国民運動、プレミアムフライデーが2月24日にスタートした。
同日、午後3時で執務を終えた安倍首相は、座禅を組み、ミニコンサートや短編映画を楽しみ、夜は人気俳優と食事を共にした。経済産業省の世耕大臣は、デパート屋上でカーリングに初挑戦。また、経団連の榊原会長も都内の百貨店で夫人と買い物をするなど、それぞれPRに努めていた様子が話題となった。

給料日後の月末金曜日は消費者の消費行動が高くなる傾向があることから、この月末の金曜日は「遅くとも午後3時までの業務終了」を推奨する「プレミアムフライデー」。この取り組みに協賛し、ロゴマークを申請した企業は、小売業や飲食業、旅行業などをはじめとして開催前日の2月23日までに3,900件を超え、その後も増え続けて、3月2日には5,000件を突破。一定の盛り上がりを見せている。また、こうした企業では付加価値のついた商品・サービスを開発し、消費者がプレミアムと感じる時間を過ごすことを提案している。
プレミアムフライデーは働く意識改革の契機となるか

企業の“色”がみえる、それぞれのプレミアムフライデー

プレミアムフライデーは、個人消費を喚起すると共に、労働者のワークライフバランスを推進し、有給休暇の取得率を上げて長時間労働を是正する効果も狙っている。社員に対しプレミアムフライデー実施を発表した企業の取り組みも、これらの点を踏まえたものとなっていることが多い。

・損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社
顧客対応が月末金曜といえども必須である生命保険業界において、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、すべての金曜日を「プレミアムフライデーズ」にして、3,500名の社員全員が自分の業務に合わせて月に1度どこかの金曜日に15時退社できるようにした。この取り組みから一人ひとりの働き方を見直すきっかけとし、生産性向上を目指す。

・大和ハウス
大和ハウスでは、偶数月の最終金曜日の終業時間を、原則として全社9~18時から8~17時に変更し、13~17時の4時間を半日有給とした。プレミアムフライデーで推奨している「遅くとも午後3時までの業務終了」よりも一歩先を行く取り組みである。

・住友商事
「やる時はやる」、「休む時は休む」をモットーに、メリハリのある働き方の推進に全社で取り組んでいる住友商事では、毎週金曜日を「プレミアムフライデーズ」とし、月末金曜日に限らず毎週金曜日を全休、午後半休取得を奨励。それが難しい場合でも、フレックスタイム制度のコアタイム終了時刻(15時)での退社を奨励する。

プレミアムフライデーは広まるのか?

こうした取り組みが注目を集める中、プレミアムフライデー実施にあたっては、その効果を疑問視する声があった。午後3時までの終業が可能なのは、公務員の一部や大企業などに限られ、中小企業やサービス業などは難しいというのである。また、給料日後の金曜日ということで、月末金曜日に設定しているが、月末処理で各企業は忙しいのが実情だ。

では実際に社員に早めの退社を呼び掛けた企業は、どれくらいあるのだろうか。
マーケティングリサーチの株式会社インテージが、2017年2月24日(金)~2017年2月27日(月)に実施した「プレミアムフライデー」事後調査によると、京浜(東京・埼玉・神奈川・千葉)在住の有職者2,235名のうち、職場でプレミアムフライデーが実施された人はわずかに2.8%、奨励された人も7.7%であった。
飲食店や旅行業、サービス業などを中心に、プレミアムフライデーを消費の起爆剤にとロゴマークを申請している企業が多い一方で、自社の社員を早帰りさせることについては様子見の企業が多かったようだ。

3月6日の記者会見で経団連の柳原会長は、東京など都市部では盛り上がりを見せたが、地方では場所により盛り上がりに欠けたとの指摘もあった。今後、この勢いを止めることなく、全国的に浸透させていくことが課題としている。

プレミアムフライデーで日本人の働き方の意識を変えられるか

このプレミアムフライデーが全国に浸透したとして、即、日本人の働き方を変え、長時間労働の是正につながるのかというと、そこは不透明だ。単純に時間の制約を作り、早く帰る権利を与えれば解決することではないからだ。

HR総研が2016年10月に調査した有給休暇取得の実態によれば、有給休暇取得率40%以下が約4割もあり、取得率81%以上はわずか7%であった。
また、大企業ほど有給休暇取得推進の取り組みが進み、中小企業は遅れていることもわかっている。
有給休暇取得推進の課題は何かという問いの答えは、「業務量過多・人員不足」が一番多かったが、次いで「計画的な年休取得に対する意識が薄い」や「休んだ人の業務をカバーする体制がない」が続いた。
有休は不慮の出来事のために取るものという職場、有休を申請すると嫌な顔をされる職場など、取りづらい雰囲気の残る企業も多く、同調査では「管理職・社員の意識変革が必要」とレポートしている。

有給消化もままならない状況の中で、プレミアムフライデーにはネガティブな見方もある。ただ、休暇は取りにくくても、決まった曜日・決まった時間に仕事を“切り上げる”こと、時間的制約を設けることで企業の中での意識を変えていく契機となっていくことを期待したい。

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