平成24年8月、改正労働契約法が公布された。
 改正点は「雇止め法理の法定化」「不合理な労働条件の禁止」そして、「無期労働契約への転換」の3つ。企業に与える影響は「無期労働契約への転換」がもっとも大きいだろうと感じたことを記憶している。
 その日から約4年半がたち、平成30年4月1日には、最初の無期労働契約への転換者が出てくることとなる。
 そもそも、この無期転換とはどのような制度であり、企業はどのような対策をとる必要が出てくるのだろうか。
2018年 無期労働契約への転換

無期転換のルールとは

 同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約への転換が必要となる。通算の契約期間には、平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約の期間は含まれず、平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象となる。
 なお、転換にあたり、契約期間を除いては、従前の有期労働契約の内容と同一の条件でかまわない。つまり、従前の契約が時給1,200円、飲食店でのキッチンスタッフの業務、契約期間が6ヵ月であった場合、最後の契約期間のみがなくなり、あとの契約内容は従前のものを引き継ぐことになる。
 また、有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が6か月以上(通算対象の契約期間が1年未満の場合は、その2分の1以上)あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間には含めないとされている。

企業のとるべき対策は

 企業としては、契約基準の厳格化などの有期労働契約の見直し等を行い、有期契約の更新上限を設定する等、極力転換が生じないような対策をとるという方法も考えられる。しかし、「雇止め法理」の問題や「人材不足」といった問題があり、5年以内で雇止めを行っていくのは、コストや労力の面からも現実的ではないように感じる。企業としては、無期転換した社員をどのように管理していくか考えるべきだ。
 現状、パート・アルバイト・契約社員といわれる有期労働契約社員に関しては、一般に正社員といわれる無期労働契約社員とは異なる雇用管理を行っている企業が多く、就業規則等の社内規程もわけられているのが一般的だろう。
 無期転換により、業務内容はパート・アルバイト・契約社員と変わらないが、契約期間の定めのない社員が出てくることとなった場合に、現状の就業規則等では対応しきれないと考えられる。
 パート・アルバイト・契約社員と正社員の間に無期社員等の新たな社員区分を設け、その社員区分に適用する新たな規則を作成するのか、はたまた正社員用の規則を準用するのかなど、無期転換社員をどのように管理していくか検討が必要となる。

 最初の無期転換ルールの適用者が出てくるまで約1年となった。
 企業としては、無期転換者をどのように管理していくか早急に検討する必要が出てきている。
 上記の通り、転換にあたっては従前の契約内容(契約期間を除く)を引き継ぐこととなる。但し、契約内容については「別段の定め」がある場合には変更することは可能である。無期転換を契機に、業務内容等を見直し、企業に貢献してもらうことを考えてみてもいいかもしれない。
 また、無期転換を前に正社員への転換を図ることも可能である。その場合、「キャリアアップ助成金」の支給対象ともなる。企業としては、有期契約労働者をどのように管理していくのか、長期的視点に立って考える必要があるのではないだろうか。

社会保険労務士たきもと事務所

代表 瀧本 旭

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