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  • キャンリクフォーラム 大学と企業の合同相談会2017

ワーク・ライフ・バランスの前に!


2017/03/10

 仕事あるいは働き方には様々なステークホルダーが関係している。仕事を提供している会社(あるいは経営者)、会社と雇用契約関係にある労働者、そして会社と取引関係に立つ他の会社や労働者、さらには顧客などである。忘れてはならないのが、働く労働者の家族もそうである。働くという行為は、このような関係性の中で綱渡りをしているようなものである。少しでもバランスを欠けば、たちどころに難題を抱えてしまうことになる。

仕事の進め方の2類型

 まず、仕事への取り組みはどうあるべきかについて具体的事例で考えてみよう。私の個人的な10年以上も前の経験であることを予めお断りしておく。

 各都道府県どこでも実施している施策に「県展」というのがある。「県域で行う美術展覧会」のことである。「日本画・洋画・書・彫刻・写真・工芸・デザイン」の7部門があり、部門ごとに作品を公募し、一定の審査を経て入選作品を決定、美術館等で当該作品を展示し一般県民に芸術観覧の機会を提供するという事業だ。その目的は「広く県民から美術作品を公募し、県民の芸術鑑賞・参加機会の創出と美術活動を普及促進し、もって本県の芸術文化の振興を図る。」となっている。
 
 過去何十回も行われてきた事業であるため、いわゆる前例踏襲型の考え方を持てば、前年どおりに実施するだけで何ら当事者に違和感は生じない。いわばルーティン・ワークとなり、次のような進め方をすれば一件落着である。
  @ 応募作品を審査する審査員を決定
  A 審査員を中心に実施要項の策定
  B プレスリリース等を通じて作品を一般公募
  C 公募作品を審査のうえ入選作品決定
  D 入選作品を美術館に展示・一般観覧
 以上のような進め方で、若干の手直しをすれば一応は所期の目的は達せられる。その成果指標は、応募作品数や観覧者数の増減である。

 だが、単なる応募数や観覧車数の増減だけを考えるのではなく、次代に向けた文化芸術の裾野の広がりや顧客視点を意識した施策を実現するのであれば、どのような企画・運営であるべきだろうか。このような施策を実現するには、ルーティン・ワークでは収まらない。ルーティン・ワークの付加価値を高めるためのプロジェクト・ワークが必須となる。

プロジェクト・ワークは「顧客満足度の視点」「芸術人材育成の視点」「芸術サポーター拡大の視点」から企画する必要があるため、私が実際に実施したのは次のような「ルーティン・ワーク+プロジェクト・ワーク」だった。

  @ 前述のルーティン・ワーク
  A 新たなプロジェクト・ワーク
    (ア)小学生を対象とした全7部門のワークショップ開催
        ※講師は審査員で、補助員に「ボランティア」募集
    (イ)全7部門の審査員等の出品による入札方式の「オークション」開催
        ※売上金は「芸術人材育成基金」として国内外への留学支援に活用
    (ウ)入選作品の企業等への無償貸出(1年間)
    (エ)協賛企業等への無料招待チケットの配付

 簡単に羅列しているように見えるだろうが、その労力は大変なものであった。というのも、県展という事業の進め方がもともと数十名規模の官民一体型「実行委員会」形式で行われていたため、関係者間の調整作業が膨大であったからだ。とにもかくにも、これらすべてが大成功裏に終わり、関係者一同が満足感に浸っていたのを思い出す。

 仕事の進め方として、前者より後者の方が良いことは明らかである。企業に置き換えれば、経営発展の可能性を高めたことが評価されるだろう。問題は、働き方がどうしても「長時間労働」になってしまう点だ。効率的な業務の進め方を追求したとはいえ、現実に時間外労働は多くならざるを得なかった。

ワーク・ライフ・バランスはコミュニケーションから

 次の一文は、政府広報オンラインに掲載されている「ワーク・ライフ・バランス」に関する説明である。

【皆さんは、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」という言葉をご存じですか?働く
すべての方々が、「仕事」と育児や介護、趣味や学習、休養、地域活動といった「仕事以外の生
活」との調和をとり、その両方を充実させる働き方・生き方のことです。】

 ご承知のとおり、政府は盛んに「ワーク・ライフ・バランス」を喧伝しているが、国民の受け止め方として「残業をしないこと」が目的化してしまっているような印象を受ける。本来的に、ワーク・ライフ・バランスはワークとライフのシナジー(相乗効果)やインテグレーション(統合)によって、双方が心地よい状況を作りだすための戦術に過ぎない。働く個人やその家族の人生や仕事が有意義になることが目的だ。例えば、満足のいく仕事ができなかった社員が定時に帰宅したとしても、仕事のことで家庭生活は上の空になるはずだ。逆に、家庭で不得手な家事労働を担い、家庭内残業状態の社員が本来の仕事で高い生産性を発揮することはできないだろう。つまり、残業がすべて「悪」だとは言えないということだ。

 ワーク・ライフ・バランスの前提として必要なのはコミュニケーションである。家族間では、夫婦双方の置かれた立場を十分に理解し合うこと、そして盲目的に均等な役割を分担するのではなく、メリハリの利いた(会社でのポジション・仕事内容や家事労働の得手不得手を勘案した)ワーク&ライフのあり方を話し合い続けるコミュニケーションだ。会社内では、経営発展の方向性を共有できるようなコミュニケーションとインフォーマルなコミュニケーションの機会が大切である。社員は、会社からすれば小さな歯車に過ぎないかもしれないが、その歯車もスムーズにかみ合わないと全体が不調に陥る。

 いずれにしても、ワーク・ライフ・バランスという「戦術」に過ぎないものを、さも「戦略」であるかのように勘違いしないことだ。「戦術」が「戦略」の如く機能することはない。


株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP(R) 大曲義典
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