年末調整と国民年金保険料の控除|採用、育成・研修、労務・人事に関する情報ならHRプロ

人事にプロのサポートを―新卒採用、中途採用、人材育成、研修、人材マネジメント、労務、人事システム、適性検査ならHRプロ

  • HRサミット2017 7月下旬お申込み開始予定!

年末調整と国民年金保険料の控除

HRプロ編集部
2016/12/22

年末調整といえば企業が行う社員の税金精算の作業である。ところが、自営業者などが支払う国民年金保険料が、企業の年末調整の届け出対象になることがある。

入社前に払った保険料が控除対象に

国民年金保険料は20歳以上60歳未満で日本国内に居住する自営業者、学生、無職の人などが支払いを義務付けられている公的年金の保険料である。これに対して、厚生年金に加入して会社勤めをしている場合には、公的年金の保険料は厚生年金保険料が給与天引きされるのみであり、別途、国民年金保険料を支払うことはない。そのため、国民年金保険料は企業勤務者とは直接関係がない社会保険料といえる。

ところが、企業が中途採用者を雇用した場合には、1年間に源泉徴収された所得税の過不足を調整する年末調整の際、企業活動とは直接関係のない国民年金保険料が届け出られることがある。

たとえば、今年の10月に雇い始めた中途採用者が、入社前である1月から9月までの間に会社勤めをしていない時期があるとする。この場合、その中途採用者が20歳以上60歳未満であれば、会社勤めをしていなかった期間は、原則として国民年金保険料の納付義務を課されることになる。もしも、その中途採用者が正しく国民年金保険料を支払っていた場合には、入社後に負担し始めた厚生年金保険料以外に、入社前に支払った国民年金保険料も今年1年間に負担した公的年金の保険料ということになる。

したがって、入社前に負担した国民年金保険料は会社の年末調整の際に届け出ることにより所得税を精算する上での控除対象とされ、一般的には税負担が小さくなる。このような仕組みを社会保険料控除という。1月から12月の間に負担した国民年金保険料は、その全額が社会保険料控除の対象となり、企業が行う年末調整の際に届け出ることが認められているものである。

家族の保険料を代わりに納付しても対象になる

また、中途採用者ではなくても、国民年金保険料の控除を申請してくるケースがある。成人した子を持つ社員の場合である。社員に成人した子がいる場合、子の国民年金保険料を親である社員が代わりに支払っているケースがある。一般的には親が子の将来を案じて支払っているケースが多いのだが、法律上は世帯主である親は子の国民年金保険料を子と連帯して納付しなければならない義務を負っている。これを連帯納付義務という。そのため、連帯納付義務者である世帯主が負担した子の国民年金保険料は、実際の支払いを行った世帯主自身の社会保険料控除の対象とすることが認められている。

なかには非常に多額の国民年金保険料の控除を申請してくるケースも存在する。国民年金保険料は平成26年度から「2年前納制度」が開始しており、2年度分の保険料を一括で納めることにより大きな割引を受けることが可能になっている。この「2年前納制度」を利用して平成28年度に保険料を納めている場合、保険料の納付額は37万7310円にも及ぶが、年末調整の際に届け出ればこの全額が納付した平成28年の社会保険料控除の対象になる。

また、国民年金保険料には過去の保険料を事後に納めることを認める「追納制度」「後納制度」などもある。そのため、たとえば4年前の保険料を平成28年に支払った場合、その支払い金額は支払った年である平成28年の年末調整の際に届け出ることで全額の控除が認められる。社員がこのような制度を利用している場合には、極めて大きな金額の控除が可能になることがあり、年末調整の届出用紙の「社会保険料控除」欄にその金額が記載されることになる。

年末調整の際には、納付した国民年金保険料額を証明する『社会保険料(国民年金保険料)控除証明書』の添付が義務付けられている。控除証明書に記載のない保険料を納付している場合には、国民年金保険料の納付後に手元に残る『領収証書』を一緒に添付してくるケースもある。社会保険料控除の仕組みは複雑であり、誤った取り扱いは税負担の不正軽減を招くので注意が必要である。

コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

プロフィール

HRプロ編集部

「採用」「教育・研修」「労務」「人事戦略」など、人事がイマ知りたい情報をご提供します。 押さえておきたい基本知識から、最先端のニュース関連情報、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届け。

2019卒版 インターンシップ プログラム作成完全マニュアル申込受付中

関連リンク

  • 企業も従業員も知っておくべき「うつ病」の実像(前編)

    精神疾患のなかでも、「うつ病」ほど身近な病気もないだろう。企業等に属していれば、少なからぬ従業員が罹患し、通院したり、休職したりしていることもある。しかし、「うつ病」の実像をどれだけの人が御存じだろうか。本稿では、現代病ともいえる「うつ病」について、企業・従業員とも理解しておくべき実像を「前編」「後編」に分けてお伝えしよう。

  • 地元就職は難しい? ―― 2018年卒マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査結果

    各種就職・転職サービスを展開する株式会社マイナビは、2017年5月、「2018年卒マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」の結果を発表した。2018年3月大学卒業予定者(有効調査回答数6,969人)を対象に調査を行い、地元に就職を希望する学生の割合の変化のほか、地元企業への就職活動で障害となっていることや、地元就職を希望する理由などについて明らかにしている。

  • 学生が求めるのは「安定」と「やりがい」のバランス? ━━ 2018年就職企業人気ランキング

    株式会社マイナビは、株式会社日本経済新聞社と共同で、2018年卒学生を対象に、2017年の2月から4月半ばにかけて就職人気調査を実施。同年4月26日に「マイナビ・日経 2018 年卒大学生就職企業人気ランキング」として発表した。 文理別、男女別など各上位 100 社の傾向を分析し、その背景を探ってみたい。

  • 「テレワーク」は働き方を変えるか!?

    政府はワーク・ライフ・バランスを推進するために、多様な働き方のひとつとしてのテレワークを推奨している。しかし、実際に導入に踏み切る企業(特に中小企業において)は少ない。実際にテレワークを導入する場合、企業にどのような影響があるのだろうか。

  • 受動喫煙防止法強化をどうとらえるか

    今年3月に厚労省から「受動喫煙防止対策の強化について(基本的な考え方の案)」が公表された。 受動喫煙防止が平成15年に努力義務とされ10年以上経過したが、依然として飲食店や職場等での受動喫煙は多く、取り組みは限界に達している。こうした現状を受けて、喫煙禁止場所の範囲、施設等の管理者の責務、利用者の責務を明らかにし、この3点の義務に違反したものに対して罰則(過料)を適用することが強化のポイントだ。 施工日は平成31年のラグビーワールドカップに間に合うようにしたい、としている。

  • いつまでもあると思うな親と金と我が社の社員

    何かとトラブルになりがちな社員の「引き抜き」。場合によっては会社の死活問題にもなりかねない社員の引き抜き行為は、本来許されるものなのか、許されるとすればどの程度なのか、防止策はないのか。トラブルに巻き込まれないために、引き抜く側、引き抜かれる側それぞれの立場での注意点を考える。