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年末調整と国民年金保険料の控除

HRプロ編集部
2016/12/22

年末調整といえば企業が行う社員の税金精算の作業である。ところが、自営業者などが支払う国民年金保険料が、企業の年末調整の届け出対象になることがある。

入社前に払った保険料が控除対象に

国民年金保険料は20歳以上60歳未満で日本国内に居住する自営業者、学生、無職の人などが支払いを義務付けられている公的年金の保険料である。これに対して、厚生年金に加入して会社勤めをしている場合には、公的年金の保険料は厚生年金保険料が給与天引きされるのみであり、別途、国民年金保険料を支払うことはない。そのため、国民年金保険料は企業勤務者とは直接関係がない社会保険料といえる。

ところが、企業が中途採用者を雇用した場合には、1年間に源泉徴収された所得税の過不足を調整する年末調整の際、企業活動とは直接関係のない国民年金保険料が届け出られることがある。

たとえば、今年の10月に雇い始めた中途採用者が、入社前である1月から9月までの間に会社勤めをしていない時期があるとする。この場合、その中途採用者が20歳以上60歳未満であれば、会社勤めをしていなかった期間は、原則として国民年金保険料の納付義務を課されることになる。もしも、その中途採用者が正しく国民年金保険料を支払っていた場合には、入社後に負担し始めた厚生年金保険料以外に、入社前に支払った国民年金保険料も今年1年間に負担した公的年金の保険料ということになる。

したがって、入社前に負担した国民年金保険料は会社の年末調整の際に届け出ることにより所得税を精算する上での控除対象とされ、一般的には税負担が小さくなる。このような仕組みを社会保険料控除という。1月から12月の間に負担した国民年金保険料は、その全額が社会保険料控除の対象となり、企業が行う年末調整の際に届け出ることが認められているものである。

家族の保険料を代わりに納付しても対象になる

また、中途採用者ではなくても、国民年金保険料の控除を申請してくるケースがある。成人した子を持つ社員の場合である。社員に成人した子がいる場合、子の国民年金保険料を親である社員が代わりに支払っているケースがある。一般的には親が子の将来を案じて支払っているケースが多いのだが、法律上は世帯主である親は子の国民年金保険料を子と連帯して納付しなければならない義務を負っている。これを連帯納付義務という。そのため、連帯納付義務者である世帯主が負担した子の国民年金保険料は、実際の支払いを行った世帯主自身の社会保険料控除の対象とすることが認められている。

なかには非常に多額の国民年金保険料の控除を申請してくるケースも存在する。国民年金保険料は平成26年度から「2年前納制度」が開始しており、2年度分の保険料を一括で納めることにより大きな割引を受けることが可能になっている。この「2年前納制度」を利用して平成28年度に保険料を納めている場合、保険料の納付額は37万7310円にも及ぶが、年末調整の際に届け出ればこの全額が納付した平成28年の社会保険料控除の対象になる。

また、国民年金保険料には過去の保険料を事後に納めることを認める「追納制度」「後納制度」などもある。そのため、たとえば4年前の保険料を平成28年に支払った場合、その支払い金額は支払った年である平成28年の年末調整の際に届け出ることで全額の控除が認められる。社員がこのような制度を利用している場合には、極めて大きな金額の控除が可能になることがあり、年末調整の届出用紙の「社会保険料控除」欄にその金額が記載されることになる。

年末調整の際には、納付した国民年金保険料額を証明する『社会保険料(国民年金保険料)控除証明書』の添付が義務付けられている。控除証明書に記載のない保険料を納付している場合には、国民年金保険料の納付後に手元に残る『領収証書』を一緒に添付してくるケースもある。社会保険料控除の仕組みは複雑であり、誤った取り扱いは税負担の不正軽減を招くので注意が必要である。

コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

著者プロフィール

HRプロ編集部

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