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「ストレスチェック制度」実施に役立つ5つの対策 ―― 改正安衛法

HRプロ編集部
2015/01/19

2014年6月に改正労働安全衛生法が公布された。目玉は「ストレスチェック制度(心理的な負担の程度を把握するための検査)」が創設されることだ。施行は平成27年12月1日である。導入の背景は、精神障害の労災認定件数が3年連続して過去最高を記録していることから国が本腰を入れたことによる。

セルフケアを目的とした「ストレスチェック制度」だが不足点も

昨今の精神疾患問題は、成熟社会における新たな課題と捉えることができ、国も模索状態だ。したがって当該制度の創設は意義あることだが、改正内容が頼りなく映るのは筆者だけではないはずである。
そこで本稿では「ストレスチェック制度」を軸に、内容が不十分だと考えられる点と、今後の企業の対応策について考えてみたい。なお、執筆時点において制度の運用指針等細かな点については厚労省で検討段階にあるため、現時点で明らかにされている範囲内での指摘になることはご容赦いただきたい。

 最初に改正内容の大枠を確認しておこう。
従業員50人以上規模にある事業場を対象に、医師や保健師によるストレスチェック実施を義務付けることにした。実施結果(個人のストレスプロフィール・評価結果。以下本稿では「結果」とする)は労働者に直接通知され、労働者の同意を得なければ会社は把握できない。結果に基づき、労働者が医師等の面接を希望する場合は、会社は医師による面接指導を実施しなければならず、場合によっては作業転換や労働時間の短縮等、適切な就業上の措置を講じることが要請されている。厚労省によれば本改正の主目的は、ストレスチェック実施によって、メンタル不全に陥る前に健康状態を自発的に労働者に気づいてもらう“セルフケア”にあるとしている。

 さて、ここで本改正が不十分だろうと筆者が考える点を2つ指摘したい。
 第1は、「面接指導を申し出る労働者がどの程度いるのか?」という実効性担保の問題だ。そう感じるのは、平成20年4月からスタートしている「長時間労働者の医師による面接指導制度」においても、申し出る労働者が少ないからだ。原因として、法は企業に対し申し出たことを理由に不利益な取扱い禁止を定めているが、申し出たことによる今後の自分の処遇等を気にして躊躇してしまう労働者の心理が推察される。通常の定期健康診断の受診でさえ拒む労働者がいる点を鑑みると、形骸化する可能性がある。

 第2は、実施体制を会社に求めるものの、定期健康診断と異なりストレスチェックは労働者側の受診義務がない点である。また、先で触れた通りセンシティブな情報であるゆえ労働者本人の同意を得ない限り会社は結果を把握できない。「長時間労働者の面接指導制度」は、会社が労働時間を管理しているため、長時間労働に陥っているか否かを把握でき過重労働に陥っている労働者へ面接指導を促す等の働きかけがしやすい。一方のストレスチェックは、結果把握ができなければ職場とメンタル不調との因果関係が掴みにくい。長時間労働だけが要因ではないからだ。これでは企業側の安全配慮義務の負担が増すばかりで、労働者の心理的負荷の程度を把握することは実に困難となることが予想される。

ストレスチェック実施に役立つ5つの対策

ストレスチェック実施に役立つ5つの対策

以上を勘案した上で企業の対策を列挙し本稿を総括したい。
 第1は、ストレスチェックの周知活動を定期的に行い、会社の義務は果たしたと言える状態を作っておくことだ。
 具体的には、ストレスチェックをなるべく受けるよう再三再四働きかける体制整備が必要だ。また、心身の健康を保つための自助努力を促していく必要もある。会社が労働者個々人の健康をすべて把握することは現実的でない。自らの不調は自らが行動を起こさなければ解決できないからである。

 第2は、ストレスチェックは受診したとしても面接指導の申し出までしてくる労働者は少ないだろうから、実施する医師や保健師との連携を構築しておくことである。
 例えば、高ストレス判定が出た者に対し面接指導を申し出るよう医師・保健師から本人へ働きかけてもらうよう事前に要請しておくことが考えられる。

 第3は、「長時間労働者の医師による面接指導制度」と「ストレスチェック制度」とを絡めて衛生委員会等で検討しておくことだ。
 メンタル不全に陥る要因は長時間労働だけに限るものではないが、長時間労働も一要因ではある。したがって、長時間労働が続く労働者を重点に長時間労働者に対する面接指導とあわせてストレスチェックも受けるよう促す“きっかけ”に位置づけられる健康障害の対策防止基準をあらかじめ策定しておくことが望まれる。

 第4は、希薄になりつつある職場内の人間関係を是正すべく、他人を知る研修等の実施は一定の効果が見込めるものと考えられる。仕事から離れ社内レクを復活させることも一考であろう。

 第5は、仕事しらべ等を実施することにより仕事の分担に偏りがないか継続的に実施し、作業組織や職場環境の改善策を検討することである。

SRC・総合労務センター、株式会社エンブレス 
特定社会保険労務士 佐藤正欣

著者プロフィール

HRプロ編集部

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