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HRプロ、寺澤康介の本音コラム【テラザワ人事ジャーナル】

第2回
〜日本の新卒採用はどこへ行く〜
(2)採用選考時期に関するアンケート結果から

こんにちは。
HRプロの寺澤です。

最近、山に凝り始めています。
学生時代は山岳サークルにいたのですが、社会人になってから椎間板ヘルニアを患ったこともあり、ずっとご無沙汰していました。

それが最近、富士山、中央アルプス、丹沢と山に行くようになり、改めて自然の中でイキイキする自分の体を心地よく感じています。
会社を経営しているとつい常に仕事のことばかり考えてしまいがちですが、人間、オン・オフのバランスが大切ですね。

さて、前回、新卒採用の選考時期を最終学年の夏にするということについて、本質的な問題解決にならないと問題提起し、皆さんのご意見をお伺いしたところ、短期間にもかかわらず約70人の方の回答をいただきました。
誠にありがとうございます。

今回は皆さんの回答をご紹介しつつ、私の意見を添えたいと思います。

採用選考時期を4年(院2年)の夏にすると、学生の就職環境は良くなると思う?

図1

まずは全体集計について。

「採用選考時期を4年(院2年)の夏にすると、学生の就職環境は良くなると思いますか?」とお聞きしたところ、「思う」7.1%、「どちらかというと思う」が11.4%、「思わない」55.7%、「どちらかというと思わない」12.9%と、選考時期を遅らせても学生の就職環境は良くならないという意見が多くなりました。

私自身の提言がそうなので割り引いて考えなければなりませんが、それでも多くの採用担当者の方が同じように考えていらっしゃるようです。

メーカーと非メーカーに分けてみると、特徴が出てきます。メーカーの場合、「思う」がゼロで、選考時期を夏にすることへの違和感がより強いようです。ただ、平均に比べて「どちらとも言えない」が24.1%と非常に高く、事務系、技術系採用の両方を抱える状況の複雑さが伺えます。

一方、非メーカーは「思う」が12.2%あり、メーカーに比べて選考時期を夏にすることへの明確な賛成が多数あります。しかし、「思わない」「どちらかというと思わない」の合計が73.2%」あり、これはメーカーの62.1%を上回っています。また、「どちらとも言えない」が4.9%と少なく、メーカーに比べて態度に迷いがないようで、事務系採用のみを考えればよい比率が高いことがその原因かもしれません。

さて、それぞれの回答の理由を見ていきましょう。

まずは、良くなると「思う」「どちらかというと思う」の方から。

●「思う」:3年まで学業に専念することができ、4年の夏から短期間で就職活動に集中も出来る。だらだらと活動が長引くこともなく、内定通知から入社までの期間も短くなるので辞退者も減るのではないかと考えます。正直大手企業が早期に選考を行うので中小企業もそれに追随せざるを得ないというのが現状の課題ではないでしょうか。(ゲーム・アミューズメント・スポーツ施設)

このご意見では、早期化是正というよりは短期間に就職活動を集中させることが重要だとのお考えのようですね。また、内定通知から入社までの期間が短くなる効用(辞退率の低下)も重視されています。企業側からの視点ではまさにその通りかもしれません。

●「思う」:今のように、専攻も決まるかどうかの時期から就職活動をすること自体がアンマッチの元凶になっている可能性もある。が、相変わらず人材不足の業界や企業には就職しようとしない学生側(+おそらく親馬鹿の影響も多少)の選り好みにも問題はある。(その他メーカー)

●「どちらかというと思う」:現在の就職採用では、卒業論文のテーマも決まらないまま、就職活動に入ります。面接等で自分の行っている研究テーマの自己PRも出来もできるのではないでしょか。ただ、就職活動期間が非常に短くなるため、採用する側にも、学生を見極めるスキル、能力が今以上に必要になるでしょう。(石油・ゴム・ガラス・セメント・セラミック)

選考時期が早いと専攻や卒業論文が決まる前に就職活動が始まってしまうことを問題視されています。確かにその問題はあります。ただ、どちらの意見も、学生の意識や選考期間の短縮化に伴う問題などを指摘されています。

●「どちらかというと思う」:選考時期が遅くなることは、活動期間が短くなることである。今の状況では、あぶれる人が多くなる気がする。ただ、学業を見れば、そのほうがよい。サイトオープンを年明けにし、大イベントも後期試験後にすると流れは変わる。(商社/専門)

●「どちらかというと思う」:学部4年生の場合、自分の学ぶ専門分野の内容を把握する時間が取れることにより、進路選択に役立つことが想定される。ただし、就職環境として大きく良くなるとは思えない。(電子)

このように学業にはよいが就職環境は良くならないという指摘がいくつか見られました。

また、下記のように、まずは変化を起こそうという意見もありました。これも確かに一理あると思います。

●「どちらかというと思う」:「学生の就職環境」の定義にもよりますが、事がここまで来たら、何か大きく変えることも必要かと思います。複合的な要素があるから…といつまでも議論しているよりは、一つの要素からでも着手してみては?効果がなければ次の手に活かせば良いし、少しでも効果が出ればそれで良し。一方で、ある程度足並みを揃える必要もあるかもしれません。人気のある企業だけが時期を後ろにずらした場合、学生は他で早く内定をもらっても就職活動を継続する可能性が高いでしょう。その結果内定辞退が増えれば、改めて採用活動をしなくてはいけないケースも出てくることが想定できます。それすらも、競争社会の宿命だ、ということで片付けてしまっても個人的には良いのですが、全体として問題視する向きは出てくるでしょう。(化粧品)

この場合、足並みをどのようにそろえるかが問題になりますね。今でも外資系などはもっと早期に行っているので、一部日本の大手企業が選考時期をずらすと活動期間が非常に長期化する可能性が高く、そちらの方がより問題になるかもしれません。