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Vol.6

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訪日外国人消費2兆円市場にむけた人材戦略一過性でない「インバウンド消費」−1300万人に求められるサービスとは?

HRソリューションズ株式会社 執行役員 顧客満足部部長
山口恵介氏

観光業以外で「訪日客」をつかむ新たな視点とは

21世紀に入って日本企業は海外への販路拡大を行ってきました。ご自身でも海外での起業経験をお持ちだと伺いましたが?

はい。夢の街創造委員会株式会社(JASDAQ:2484)の取締役執行役員をしていた当時、中国事業管掌役員として北京市に赴任し、子会社を立ち上げた経験があります。ちょうど、2011年の震災の年です。今でもそうですが、当時は国内の市場が厳しくなっていくばかりで、このままでは先がないという見方が強かった時期でした。ドメスティックなビジネスだけでは「下りのエスカレーター」に乗っているようなもの。どんなに頑張って上ろうとしても、疲れて歩みを止めたらすぐに下がっていってしまいます。

北京での事業立ち上げの時はコンサルティング会社もつけず、日本からの駐在者は私一人だけという体制で、大小様々な壁にぶつかりながら奮闘しました。当時は海外、特にアジアの中でも中国大陸が可能性のある市場と言われていました。GDPが2桁成長をし続けていた中国。中でもインターネットサービス事業の成長率は群を抜いており、その魅力から世界中のインターネットサービスが中国に進出していました。「中国企業との戦い」でなく「世界企業との戦い」でした。その市場で何としてでもチャンスを掴むのだと各社が必死に頑張っていました。ただ、日本とは勝手が違うので苦戦したのは言うまでもありません。しかしここ数年の間に状況は大きく変わりました。わざわざ海外に行かなくても、「勢いのある海外市場」や「訪日外国人への販路」が広げられるようになっていますね。

海外に行かなくても海外に市場を広げられる、とはどういうことですか?

Alibaba、天猫などの海外への販路拡大インターネットサービスもありますが、飲食・小売・サービス業の皆様はインバウンド消費を利用することです。インバウンドというのは、訪日外国人の消費経済影響を表す観光業の業界用語です。現在は、それができる環境になっています。
私が海外で起業していた2011年は原発事故が起き、風評被害もありました。しかしオリンピック開催地に東京が選ばれたり、フューチャーブランド社の国家ブランド指数ランキングの1位になったりと、日本の価値は見直されてきています。訪日外国人は増えており、観光客が国内で落とす金額も一人当たり15万1,174円と、高くなっています。その額は、日本人の旅行者以上なのです。訪日観光客は国内旅行者の4倍以上の金額を使ってくれます。

インバウンドというワードが注目された当初は、観光ビジネスが主体でした。しかし、ここ数年でインバウンドは、もはや旅行業、観光業だけの言葉ではなくなりました。今日では、所謂ゴールデンルートが飽和状態に近づいてきて、「大都市圏から地方分散」や、「観光地だけでなく生活地への展開(ライフスタイルツーリズム)」など、地域活性や日本全体の雇用創出も期待できる動きが見えてきています。
日常使いの商品においても、インバウンドのメリットは受けられます。特にアジア圏の外国人から日常で使える日本の商品を買いたいというニーズが増えています。国内市場では、現在フォローの風が吹いているというのが私の実感です。わずか2年前まではアゲインストだったのが、変わってきています。
JNTOの統計によると、2015年1-4月期の訪日外国人は、前年同期の43.6%増とのこと。この成長率ですと、2015年度の訪日外国人は1,500万人を超えることが期待できます。今や、2兆円市場ともいわれるインバンド消費。これは力のある限られた企業だけではなく、誰もが取り組み、享受できる市場です。しかしもったいないことに、現在の日本ではインバウンド消費に積極的に取り組む会社は限られています。未だ手さぐりの状態と言えるでしょう。

外国語の習得あるいは外国人研修の難しさという壁を解決する秘策

日本では、なぜインバウンドが伸びてこないのでしょうか?

それは、訪日外国人を受け入れる心構え、体制、そして言語の壁でしょう。 インバウンド市場はこの数年30%成長を遂げており驚異の成長率ですが、まだまだ活かされていない伸び代があるのは事実です。企業や店舗において、伸び悩みを感じていらっしゃる部分も大いにあることでしょう。それは、訪日外国人に対する「おもてなしの具現化」ができてないところに理由があるでしょう。外国人のお客様を呼び込もうとしても、自社で外国語を扱えないことがネックになっています。国内で日本人向けにお店を展開しているのであれば、特に案内しなくても、お客様は欲しいものをどのように探せば良いのか、どう買えば良いのかが分かります。飲食店にも気軽に入れるはずです。しかし外国人向けの免税店を開く場合には、そうはいきません。外国人は、日本へ異国の地として訪れます。そのため、より丁寧なアナウンスや声かけが必要となるのです。実際の免税店を見てみても、外国人から見つけてもらうためにアピールができていないことが多く見られます。インバウンド市場をどこか他人事として捉えているようでは、せっかくのチャンスも取り逃してしまいます。これからのインバウンド市場は、いわゆるゴールデンルート(観光地)から生活地(地方など)へと拡がっていきますから、これを約束された未来として受け止めた方がいいです。

国籍・言語の違い、異文化ということについてよく考えてみると、その壁は思うほど高くないことが分かります。現在、日本は少子高齢化ですね。それにもかかわらず、大学の数だけは増えています。平均的な大学だけではなく、有名私大や国立大までもが学生集めのために海外へ出向き、学生をスカウトして集めなければならないという市場の流れにあるのです。
とくに、接客・サービス業の皆さまには、外国人、とりわけ留学生のご活用をお奨めします。今や、外国人留学生は13万人を超えています(2013年時点)。また、セミナーでもお話しますが、中長期の在留者も相当数いらっしゃいます。日本人だけでの売り場で、多言語や異文化に対応するのは中々大変ですが、外国人スタッフの活用によって、活路が見いだせます。

東京オリンピックに向けて求められるインバウンドとは

2020年にはオリンピックもありますし、それに向けて準備しようと思う企業も増えてくるかもしれないですね。

2020年のオリンピックはもちろん盛り上がるでしょう。その前の2019年ラグビーワールドカップと、2021年の関西ワールドマスターズゲームズなどでも、かなり外国人訪日数が増えるのではないかと思っています。ビジット・ジャパン・キャンペーンなど官民一体の取り組みが奏功し、観光立国として益々の成長が期待できます。

しかし、これは企業の規模に関わらず言えることですが、私は危惧していることもあります。それは現在の周辺環境だけを見て、今に合わせた用意だけを行っているケースが多いことです。このような状態では、商機を逃してしまうでしょう。「2020年にオリンピックがある」と思っていても、その日に合わせて外国人を入れたところで十分な対応は取れません。その前から準備しておき、2020年になる頃には準備万端に整っているという状態にしていただきたいのです。 そのためには今の段階から外国人をお店に入れて、第一世代、第二世代と育てていくこと。そして、インバウンドを仕組みにしていくことが重要だと考えています。そのノウハウについても、サミット当日にお話しできればと考えています。

サミットでは事業戦略や経営方針の面から今後の人事対応を考えていくための材料として、日本経済でまだ認知されていないインバウンドのメリットについてご紹介していきます。BtoBの企業であれば、外国籍人材はバックヤードでの活用がすでに広がっていることもあります。しかしBtoCの企業にとっては、新しい発想から採用のヒントになるお話ができるのではないかと思います。また、1企業・1店舗だけの話にとどまらず、ある地域の複数店舗、あるいは複数企業が集まって全体を盛り上げていくケースにおいて、インバウンドは利用価値が高いのだという観点からもお話させていただく予定です。

経営者や人事戦略を担当する方に役に立つお話しになりそうですね。サミットでの講演を楽しみにしています。ありがとうございました。

山口恵介氏

HRソリューションズ株式会社
執行役員 顧客満足部部長
山口恵介氏

ノンバンクで営業(拠点運営)から債権管理までを経験した後、ソフトバンクグループ企業に営業責任者として着任。部門予算を12ヶ月連続で達成後、営業統括部エグゼクティブマネージャーに就任する。夢の街創造委員会(JASDAQ2484)では、取締役執行役員として営業・コンサルティング・新規事業を管掌。同社初の海外事業では、現地(中華人民共和国 北京市)に単身で赴き、法人設立・事業立上げに成功。帰国退任後は、アジアの優秀な大学生を日本企業に紹介斡旋する事業に携わり、2013年よりHRソリューションズに合流。現在、同社の顧客満足部責任者を務める。