経営×人事×タレントマネジメント

タレントマネジメントに取り組まれている企業を訪問し、その導入事例をシリーズでご紹介するとともに、
タレントマネジメントを切り口として、人事と経営の関係性や今後求められる人事のあり方を考察していきます。

Vol.11 世界で勝ち抜く「次の日立」創りに向け、グループグローバルな人財マネジメントへの移行を推進

株式会社日立製作所 人財統括本部 グローバルタレントマネジメント部 部長 瀧本 晋氏
聞き手:HRエグゼクティブコンソーシアム 代表 楠田 祐氏

情報・通信システム、電力システム、鉄道システムなど、ビジネスや生活に欠かせない多様なインフラを社会に提供し、グループ全体で従業員数約33万人、連結売上高10兆円というグローバルなビジネスを展開する日立グループ。
成長か衰退か、今、変わらなければという危機感が出発点
日立さんは、近年、グローバル展開を加速されていますが、今、どのような状況ですか。
海外売上高比率は2015年度で48%と、いよいよ半分を超えてくる段階です。同じく2015年度の数字ですが、従業員数は国内18万7000名に対して海外14万7000名、会社数は国内262社に対して海外794社となっており、いずれも海外が大きく伸びてきています。
もう、国内より海外の会社の方がずっと多いですね。業績も好調のようですが、これから目指される姿はどのようなものですか。
売上高としては2015年度10兆円ですが、当社はリーマンショックのころ、2008年度に7,873億円というきわめて大きな赤字を出し、生きるか死ぬかというようなところまで追い込まれました。その後の経営改革によってV字回復したとはいえ、大手術をしてリハビリが終わった段階に過ぎません。そこからいかに本格的な成長を実現させるかということで、グループグローバルに世界で勝負していこうという経営方針が打ち出されてきましたが、世界のグローバルメジャープレイヤーと経営数値を比較すると、当社は営業利益率やフリーキャッシュフローの面で劣っているのが現状です。今、我々はまさに今後成長するか衰退するかの転換点に立っているという危機感を持ち、「2018中期経営計画」において、次の日立を作ることに挑戦しているところです。
GEやシーメンスといった企業と世界で戦って勝つ会社を作っていこうということですね。
そこで、「2018中期経営計画」では、「IoT時代のイノベーションパートナー」として、再生可能エネルギー、都市の安心・安全、鉄道システム、予防医療、物流といった多様な分野で「社会イノベーション事業」を拡大させ、社会とお客様にバリューをご提供する会社への変革を遂げること、そして、「グローバル」を拡大させ、営業利益率を高めて、稼げる会社に体質転換することを掲げています。
「人基準」から「役割・仕事基準」のマネジメントに転換
社会イノベーション事業とはどのようなものですか?
これまで、日立はお客様からいただいた「こういうものが欲しい」というご要望に基づいて製品やシステムを作り込み、ご提供してきました。一方、社会イノベーション事業は、僭越ですが、お客様と一緒に、お客様のお客様、そして社会にIoT、ビッグデータ、AIなどのイノベーションを活用したサービスを提供し、それにより社会的課題やお客様の経営課題を解決して社会に貢献するというものです。例えば、イギリスでは鉄道の老朽化と遅延や事故の発生が社会的課題になっていましたが、現地の鉄道運行会社に対し、IoTを活用した車両保守サービスと長期の稼働保証を付けた車両リースのサービスを提供しています。こうしたリースの仕組みを我々自身で作って、資産を持たずに鉄道の信頼性・安全性を向上できるメリットをお客様にご提案していくというビジネスです。
今までのビジネスとは違いますね。そういう会社に変わっていこうとすると、人の部分でもかなりの変革が必要でしょう。
ですから、我々人財部門では、この社会イノベーション事業の成長加速と、グローバル事業の拡大を実現させていくため、グループグローバルな人財マネジメントへの移行を進めてきています。考え方として大きく変えたのは、「人基準」から「役割・仕事基準」のマネジメントへ、ということです。変化が激しく、先行きが不透明な今の時代にグローバル市場で成長していくためには、組織と個人のやるべきことを明確化し、目標達成に向けて最適な方法を追求する「役割・仕事基準」のマネジメントが求められます。グループグローバルに、国籍や性別、働き方が異なる多様な人財がひとつのチームとして協業するためにも、「役割・仕事基準」のマネジメントへの転換が必要だと考えています。
おっしゃる通りですね。
グループ各社の人事制度がばらばらでは、グローバルに戦えない
グループグローバルな人財マネジメントへ、これまでどのように移行されてきたのですか?
取り組みを始めたのは2011年度からですが、当初、大きな課題がありました。従来、当社では社内カンパニー制の下で事業ごとに自主独立経営を行うという戦略を取っていたため、海外展開に際してもそれぞれが現地法人を別々に設立し、アメリカだけで180社を超える状況でした。そして、グループ各社が個別最適による人事制度をバラバラに作っているので、どこでどういう人財がどういう形で仕事をしているのか、把握できなかったのです。これではグローバルで戦っていけない、というのが出発点でした。
個別最適でやっていくと、どうしてもそうなりますね。
そこで、グループグローバル共通のさまざまな人財マネジメント基盤を作り、導入してきました。グローバル共通、地域共通のベースは作りますが、そこに各社が独自の制度を組み合わせてもいいという考え方です。例えば、グローバル人財データベースとして25万人の人財情報をデータベース化しました。各社に月1〜2回、人財情報のアップデートをお願いする形で始めましたが、今、クラウド型システムをグループグローバル共通のプラットフォームとして導入し、各社にはまずここに人財データを入れてもらって、そこから各社のシステムに自動的に流し込む形に変えようとしているところです。これで、リアルタイムに人財の見える化ができるようになります。
25万人の人財データベースとはすごいですね。
また、グローバル・グレードとして、マネージャー以上の5万ポジションを対象に、仕事の役割がグローバルベースなのか、何人の部下をマネジメントしているのかなど全て指標化し、格付を行いました。ほかにも、11万2000人を対象にグローバルパフォーマンスマネジメントを導入しており、順次導入を拡大する予定です。