経営×人事×タレントマネジメント

タレントマネジメントに取り組まれている企業を訪問し、その導入事例をシリーズでご紹介するとともに、
タレントマネジメントを切り口として、人事と経営の関係性や今後求められる人事のあり方を考察していきます。

Vol.10 次なる飛躍のステージに向けて組織能力を問い直し、MBO-S強化を狙う3年計画の管理職研修をスタート

旭化成株式会社 人事部 採用・人財開発室 室長 岡本 真治氏(左)/
担当課長 小澤 昌子氏(右から2人目)/人事制度室 課長 高比良 和俊氏(右)
聞き手:中央大学 大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール) 客員教授 楠田 祐氏

化学、繊維、エレクトロニクス、住宅、建材、医薬、医療と、世界でも有数の多角化経営を展開する総合化学企業、旭化成グループ。
新社長の下、掲げる目標は2025年に売上高3兆円
旭化成さんといえば、多角化経営を推進しながら成長されてきた企業という印象が強いですが、今のビジネスの状況を教えていただけますか。
当社は創業以来、繊維、化学、さらに住宅、エレクトロニクス、医薬、医療といった新たな事業分野に進出し、事業ポートフォリオを転換し続けてきた歴史があります。多岐にわたる事業を、現在は、「マテリアル(ケミカル、繊維、エレクトロニクス)」、「住宅(住宅、建材)」、「ヘルスケア(医薬、医療など)」という3つの領域に大きく分け、全体の戦略を立てていこうという姿になっています。また、当社は2003年に中核となる全事業を分社化した持株会社制に移行し、スピード経営、キャッシュ・フロー経営を浸透させてきましたが、今後の成長に向けて事業間のさらなるシナジーを生み出すため、2016年4月からマテリアル(ケミカル、繊維、エレクトロニクス)領域の事業会社を旭化成株式会社に吸収合併し、持株事業会社制をスタートさせました。そして、この組織改正と同時に小堀秀毅が社長に就任し、新中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018(2016-2018)」が展開し始めています。
どのような内容なのですか?
将来に向け、多様な“C”で飛躍の基盤を固めることを目指すもので、グループ横断、あるいは社外との共同研究、事業提携など、人と技術と事業をさまざまな形で結合(Connect)させることによって、新たな成長ステージに向かおうとしているところが大きなポイントです。今後、新事業の創出、グローバル展開の加速によって、2025年に売上高3兆円、営業利益2,800億円を達成するという計数計画を立てています。前中期経営計画では2018年度の売上高目標を2.2兆円、営業利益1,800億円としており、現在、それを超える動きになっていますが、さらに大きな目標に向かっていこうと。それを実現するための基盤作りを3年間でやっていくというのが現中期経営計画の位置付けです。
原点に立ち返り、人事全体を見直す「そもそもプロジェクト」
今、海外売上高比率はどれぐらいですか。
全体で見ると35 %ほどです。マテリアル領域では世界トップシェア製品が数多くありますし、ヘルスケア領域もかなりグローバルに伸びており、国内での売り上げが中心の住宅・建材部門を除くと売上高の50%超が海外となっています。
なるほど。では、そういう状況の中で、今、人事は経営に何を期待され、どういう動きをされているのですか。
今、社長と定期的に意見交換、情報交換を行っています。その内容を人事フィールド全員で共有し、人事として社長の意図していることをできるだけ吸い上げ、実現させていこうとしているところです。
小堀が社長に就任した2016年4月から定期的に経営の観点から人に関する今の課題は何か、人事として何をやるべきかといった議論をしています。その上で、社長の考えを踏まえながら、人事全体として、もう一度、仕事のやり方を含めて、これからやるべき課題を見直そうと、「そもそもプロジェクト」というものを立ち上げました。そもそも人事は何をやるべきかという観点から、人事フィールド総出で、今、例えば、処遇制度はどうあるべきか、人財開発はどう行うべきかといった議論をしています。
全事業部長、全部長、全課長が対象のMBOS研修を開始
人事課題としてはどういうことが出てきていますか。
これから会社が成長する上で、中期経営計画を達成できるだけの組織能力が自分たちにあるのかどうか。ここが議論の出発点でした。その組織能力を成長させることが人事部に課されたミッションであり、具体的には、経営に対しては戦略を立案・実行できる人と組織を提供し、マネージャーに対しては、質の良い職場マネジメント力のスキルとツールを提供し、従業員に対しては働きがいと成長の場を提供する、この3つが人事部の提供すべき価値である、その実現のための具体的な施策を現在議論しているところです。
やはり、マネジメントをいかに強くするかというところが一番大事だと。
ここに関しては、組織でどのように良い目標を立て、その目標をどのようにチーム全員で共有し、達成していくのか、そして結果を振り返って次の成長に活かすのかという、いわゆる目標管理がしっかりできているのかということをもう一度見直そうとしています。当社では目標管理と評価の制度を統合した仕組みを導入して、もう20年近く運用していますが、毎年目標を立てて評価するということが、場合によっては、ある意味、評価のための年中行事のようになりがちだったかもしれません。
具体的には、今、MBO-S(Management by Objectives and Self-Control)の強化に注力しています。これまでの組織マネジメントのやり方が本当によかったのか、人を成長させ、組織を強くすることがどこまでできているのか、もう一度原点に立ち返ってやりましょう、そのためにMBO-Sを強化しましょうということで、事業部長職、部長職、課長職の全員を対象に、各層ごとの研修をずっと実施しているところです。
全事業部長、全部長、全課長というと、すごい人数じゃないですか?
全員の研修を終えるまでに3年かかります。でも、そうやって上から浸透させていかないと根付きませんから。
徹底されていますね。