SPECIAL INTERVIER HR トップが語る「人材開発のいま」

第4回

一人ひとりが変わり、
会社全体を変えるために

株式会社カネカ
取締役常務執行役員
業務革新本部長兼人事部・総務部・法務室・情報システム部・物流統括部担当
亀本 茂氏

Interviewer/株式会社セルム 常務取締役 田口佳子
2013年5月取材 ※所属・肩書・記事内容は取材当時のものです。

「研究開発型企業」としてグローバルに成長を続けるカネカだが、
更なる成長に向けて取り組むべき課題は、全社員の発想と行動の変革だという。
その羅針盤として「KANEKA UNITED宣言」を策定し、
社員一人ひとりがイノベーションに挑戦し、カネカグループの組織力の強化に
取り組む、カネカグループの人事部門担当役員である取締役常務執行役員の
亀本茂氏に、詳しいお話を伺った。

求心力を持たせるための「KANEKA UNITED宣言」

田口

カネカ様では「KANEKA UNITED宣言」を掲げられ、"「変革」と「成長」を実現するカネカの絆"という方向性を打ち出されていらっしゃいます。この長期ビジョンを作ろうという話になった背景について、お聞かせくださいますか。

亀本

2008年度は、当社の業績を支えていたライフサイエンス分野、エレクトロニクス分野の競争が激しくなり、収益が悪化してきました。そこにリーマン・ショックが追い打ちをかけ、営業利益こそ若干プラスでしたが純利益では赤字に陥りました。当時は、カネカはこれからどうなるのか、カネカは本当に大丈夫かという不安感が社内に色濃く漂っていたと思います。このままだと社内の雰囲気が暗くなる、一体感が崩れていくといった危機感を強く持ちました。
 この状況を打開するためには求心力、みんなの気持ちを一つにしていかなければいけない、ということで、会社としてのビジョンをはっきり示し、そのビジョンに向かって一致団結する組織に持っていこうと考えたのです。そこで、次代のカネカを支えるリーダーたちを集め、「10年後のカネカをどうしたいか」を考える「長期ビジョン策定委員会」を作り、徹底的に議論を繰り返しました。それを形にしたのが「KANEKA UNITED宣言」です。全社的に発表したのはカネカ創立60周年の創立記念日にあたる2009年の9月1日で、その実現に向けた中期実行計画のスタートは2010年の4月からです。

田口

「KANEKA UNITED宣言」で議論の中心となったのは、どのような点ですか。

亀本

一番に議論したのは「求心力を持たせる」という部分です。そこで、カネカはどんな会社でありたいかという存在意義や社会的使命をきちんと定義するために、「企業理念」から議論を始めていきました。そこで、「人と、技術の創造的融合により未来を切り拓く価値を共創し、地球環境とゆたかな暮らしに貢献します。」という「企業理念」を定めました。ただ、どうしても「企業理念」は抽象的な表現となるので、社員に対してどのような会社になりたいのかが分かるような説明をする必要があります。そこで、あるべき姿・大切にしている価値観を表現した「目指す企業像」と、行動指針としての「CSR基本方針」を定め、この3つをカネカのアイデンティティとして明確に定めました。
 「企業理念」の部分はカネカのアイデンティティですから、少なくともこの10年間は変えないで"拠り所"として大事にしていきます。一方、具体的な経営活動方針については、環境変化に応じて柔軟に切り替えていくつもりです。

田口

イノベーションマインドを高め、組織としての力を高めていくために、まず求心力を持たせることをお考えになったわけですね。そして、同じ価値観、同じ方向の下で、「変革」と「成長」を実現していこうということですか。

亀本

はい。以前の長期計画は、「企業理念」と「事業目標」だけでした。これでは、目標とする数字は示せても、どんな会社になりたいのかという想いがよく分かりません。目的は求心力であり、次の成長に向けての行動変容の指針ですから、今回は数字よりも「企業理念」を受けて、カネカの目指す姿を明らかにする必要がありました。
 そこで、研究開発型企業として「未来をつなぐ」、グローバル企業として「世界をつなぐ」、カネカグループとしての「価値をつなぐ」、絶えずチャレンジして「革新をつなぐ」、そして人の成長を大切にしてイノベーションを実現するために「人をつなぐ」という、「つなぐ」をキーワードにした目指す企業像を示しました。
 また、「CSR基本方針」についてですが、「企業理念」でも社会に貢献することを宣言していますし、私たちは当然、社会的責任を強く意識して行動すべきです。そこで、社会的責任を果たすための社員の行動指針として位置づけたい思いをこめて「CSR基本方針」という表現にしています。

一人ひとりの創意・工夫がイノベーションを引き起こす

田口

「KANEKA UNITED宣言」を遂行している最中ですが、難しかったとお感じになられていることはございますか。

亀本

例えば、「目指す企業像」の中でカネカのことを研究開発型企業と言っていますが、これだと研究開発部門へのメッセージと受け止められてしまいがちです。研究開発型企業というのは研究開発部門だけに言っているのではなく、社員一人ひとりにイノベーションマインドを持ってもらうということを発信したものなのです。つまり、製造やその他のスタッフ部門の人たちも研究開発型の発想や行動を取らなければいけないということを、どうやって納得し、分かってもらうかということです。このあたりの理解と浸透がなかなか難しいところです。  一人ひとりが自分の仕事を見直し、工夫を織り込んでいくことによって、組織全体としての効率化を図っていく。一方で、仕事に対するモチベーションを高めていってもらいたいと思っています。例えば、製造部門では以前からコストダウンの取り組みを行っていますが、今は全社・各部門をあげてコスト改善に取り組んでいます。一人ひとりがコスト改善には何が必要となるのかを考えていくことで、仕事に対する考え方や行動を変えるヒントにつながります。それが、組織としてのイノベーションに結び付いていくのです。

田口

つまり、社員一人ひとりの発想と行動をどう変えるか、そこが一番の課題ですね。一人ひとりが考えることで発想が広がり、発想が広がることで創意工夫が行われ、アイディアを出したり、イノベーションを起こすということに積極的になってくるように思います。

亀本

コストを下げるという取り組みにも創意工夫が必要なのです。単に指示された仕事をするのではなく、自分で創意工夫を凝らすことで、仕事を楽しくする。そんな取り組みにしていこうということです。

『「変革」と「成長」の実現に向けた人事・人材開発の取り組み』など、
インタビューはまだまだ続きます。ぜひダウンロードして、お読みください。

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