「適職だとまず自分で思わないかぎり、いくらさがし回っても見つかるものではない」という設問に対する回答は、

 そう思う   54.6%
 わからない  21.7%
 そう思わない 23.7%
(今回から2016年度のデータ)
経年でみると2001年に50.7%だった「そう思う」という回答率は、2013年に58.7%まで上昇した後、2014年以降、56.0%、55.0%、54.6%と下がり始めました。この傾向がこのまま続くのかどうか、わかりませんが、職業観に関して微妙な変化が出てきたようにも思われます。

本年に関しては、採用活動の時期が変わったことが影響していると考えています。適職感を聞くこの設問は、自己分析をしっかり行い、採用活動で多くの企業との接点を持ち、企業研究もして、最終的に納得して就職を決めたかどうかが影響するのではないかと思うのです。他社の調査になりますが、産能大学の「新入社員の会社生活調査(2015年)」における「就職活動の満足度」のグラフと上下動が一致する年度が多数、あります。

飲食業を営む弊社のお客様では、サービス部門と厨房の板前さんの両方の採用を行っています。弊社とのお取組みは「定着率の向上」を目標にスタートしました。
料理学校出身の新卒社員は、専門学校一年目の終わりから就職活動を始めていました。すると、自分はどんな調理師になりたいのか、どんな種類の料理を作りたいのか、極めて曖昧な時期に採用が決まってしまいます。すると、入社後は、「こんなはずではなかった」の山に囲まれ、退職してしまうことが多くありました。
気が付くと、「居酒屋に就職した友人は、もう包丁を握っている」、「下積みが長いとは聞いていたが、毎日が単調だ」、「まかないを作るまでに2年もかかるなんて」等、分かってはいたはずのいろんなことが「こんなはずではなかった」となるようです。
サービス部門の方はサービス部門で、「あらぬ理想像」を描いて入ってきて、そのギャップに倒されてしまう新入社員が多くいました。

これを「ミスマッチ」という一言でまとめて良いのでしょうか。

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適職かどうかというのは、その職に就いて、何年もしないとわからないと思いますし、適職感は働く中で持つものであると確信しています。
何事もやってみないとわかりませんし、最低限「これは無理」とか「こういう要素があればいい」という程度の選択肢で選んで、後はそこでどこまで精進できるかだと思います。

大卒の学生にとっては、企業研究から始まり、それなりの期間の就活で、この最低限のものをつかむのだと思います。
「これならできそうだ」、「今度の会社は、自分の特性を理解してくれている」という職業、企業に出会ってそこで「適職だと思って取り組もう」という覚悟ができるのではないでしょうか。
残念ながら、何でも選ぶことができた今の新卒社員は、職業も「自分のなりたいものに、だいたいなれる」と考えていると推察します。
これまで、かなわなかった希望などほとんどなかったのです。なので、キャリア教育そのものは高校生、可能なら中学生の段階からやっておくことが必要なのではないかと考えます。
ただ、あまりにも「地に足のついていない夢」を肯定するようなものは困ります。現実を踏まえたキャリア、職業教育が重要です。
「頑張れば、○○になれるよ」というウソはやめてもらいたいと思います。頑張ったって無理なものは無理なのです。

キャリア教育の充実は望むところですが、採用した企業は、採用した以上、育てねばなりません。「ミスマッチ」という一言で、新卒を辞めさせていくことはできないのです。

では、どうすればよいか?

遅ればせながらも、正しい職業観を持たせること以外に方法はないと思います。
指導の側面では、これから就く仕事は、どれくらいお客様に役立っているのか、1年後にはどんなスキルが得られるのか、今日一日でできるようになることは何なのか、中長短期にわたる成長実感を感じさせることしかないと思います。

新入社員には、客観的に自分の置かれた状況を把握し、「こういう時はこうする」と、陥りそうな配属後の罠に対して、対処法を伝授しておくことが必要です。
飲食業を営む弊社のお客さまでは、「先輩・上司からの視点」を学ばせるように仕組みました。新人が良かれと思って取る行動を先輩や上司はどう見るのか、どうすればその集団になじめるのか、を考えさせるようにしています。

「仕事が終わったので、挨拶をして定時に帰った。先輩はまだ仕事をしていた」
「やり方がわからなかったので、別部署にいる同期に聞いて、何とか仕事を仕上げたが、先輩からダメ出しをされた」
等、簡単な事例です。

まずは、組織になじみ、仕事になじませること、それが「ミスマッチ」と言わせない施策だと考えます。
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