今年も、新入社員研修で多くの新人の方々とお会いしました。人事担当者のお話をお聞きすると、「年々おとなしくなっている」という声を良く聞きます。確かに、数年前に比べると一見おとなしく見えるかもしれません。

 しかし、学校でプレゼンテーションやディスカッションに慣れている方が多く、しっかりと自分の意見を主張できるのには感心させられます。また、今年はリーダーシップを取れる新人も目立ちました。これも、「グローバルリーダーを輩出する」という教育現場の熱意から生まれている状況なのかもしれません。
  さて、私はこの連載を持っているので、新入社員の皆様に「理想の上司像」を聞いてみました。かつては、星野仙一さんが理想の上司第一位になった時期もあり、「熱い」上司が好まれる傾向がありましたが、今はどうだと思いますか?
 私が担当した新入社員研修の範囲内ではありますが、一番多かった意見は「やさしい上司」でした。

 これを聞くと、「やっぱりゆとり世代だな・・・」「厳しい社会で生き残っていけるのか?」などといった意見もありそうです。私も最初は「やさしい・・・」と少し残念に感じたことは否定しません。
 しかし、よくよく聞いてみると「やさしい」というのは「怖くない」「厳しくない」という意味だけではなさそうです。「自分が提案したことを思い切ってやらせてくれる」「自由な動きを許してくれる」という意味も含まれているようなのです。つまり、「思い切った行動に寛容である」ということです。

 「今の若手はマニュアル世代である」という言い方をする人がいます。「言われたことしかやらない」「やり方を自分で考えない」という見方をしています。しかし、彼らが言う「やさしい上司」を求めているのを見ると、決してマニュアルがないと動けないような人たちではありません。むしろ、新たなことに果敢にチャレンジしたがっているアクティブな世代と言ってもいいのではないでしょうか?

 しかし、この様に野望を持って入社してきた新入社員はずっとそのマインドを保てるのでしょうか?
 入社して10カ月程度経過した、2月くらいに新入社員フォロー研修を実施することが良くあります。4月の頃に比べて、すっかり社会人の顔つきになった新人が揃うのですが、少し様子が違う・・・。4月の頃のアクティブさが失われている人が目立つのです。特に、4月の新入社員研修の際に、少しやんちゃで「私に発表させてください!」「私から先にやらせてください」と言っていた人に限って静かになっていたりします。

 もしかすると、我々上司が彼らが言う「やさしい上司」に慣れていなかったのではないでしょうか。「まだ新人なんだから、言われたことをやっていればいいんだよ」「そんな提案は、もっと仕事が出来るようになってから言いなさい」といった接し方をして、枠にはめてしまったのかもしれません。

 確かに新入社員は上司や先輩の言うことに従って素直に動くことも大切です。一方で、変化の激しい世の中、多様化するお客様ニーズに対応できる企業になることを考えると、新入社員のような、何の固定観念も持っていない人達のアイデアはある意味貴重とも言えます。新入社員の柔軟なアイデアを受け入れ、「それ、やってみるか」と言える度量があるかどうか?

 これからの上司は、「やさしい上司」である必要があるのかもしれません。
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