「自立型の部下」を育てるために、前回まではチームの共通目標が必要であることをお伝えしてきました。今回からは、「部下の個人ビジョンを明確にする」事についてお話します。
まず、ある小学校6年生の作文を紹介します。
「ボクの夢は、一流のプロ野球選手になる事です。そのためには、中学や高校で全国大会へ出て、活躍をしなければいけません。活躍をするには、練習が必要です。
  <中略>
そんなに練習をしているのだから、必ず、プロ野球選手になれると思います。そして、中学、高校で活躍して、高校を卒業してからプロに入団するつもりです。そして、その球団は中日ドラゴンズか、西武ライオンズが夢です。ドラフト入団で契約金は一億円以上が目標です。
  <中略>
そして、ボクが一流の選手になって試合に出れるようになったら、お世話になった人に招待券をくばって、応援してもらうのが夢の一つです。」
これは、イチロー選手が小学校6年生の時に書いた作文です。今や、この作文に書いた以上の存在になっています。

※『野茂とイチロー「夢実現」の方程式』 永谷脩:著 三笠書房:刊

ビジョンを持ち、それに本気になることは、その人を動かします。困難が訪れてもくじけることはありません(事実イチローも様々な困難を乗り越えています)。
もちろんこれはビジネスでも同じ。メンバーがビジョンを明確に持っていれば、自分から動きます。困難も糧にして突き進みます。
正に、自立型の人材に育つのです。

私は毎年様々な会社様で新入社員研修を実施しています。新入社員から最近よく耳にするのが「自己実現」という言葉。自己実現するために会社に入ったというのです。
それ自体は、非常に良いことなのですが、「では、あなたにとっての自己実現は?」と聴くと、「企画をやりたい」「マーケティングをやりたい」等々。
「それは何故か?」と聴くと、あまり明確な回答が出てきません・・・。

理想の個人ビジョンとはなんなのでしょうか?それは、「これぞ、自分のあるべき姿!」と心から思えるものです。そうでなければ、「何としても、成し遂げたい!」と思えず、原動力にはなりません。

そのためには、自分の強みが活かされている姿をイメージし、それをビジョンとする必要があります。
しかし、多くの人は自分の強みに気づいていない・・・。先ほど例に出した新入社員も「なんとなく、格好がいいから」程度で自己実現を語っている。

我々上司は、まず部下の強みを冷静に見極める必要があります。そして、それを部下に教えてあげる。その上で一緒になってその部下の個人ビジョンを考えてあげることが大切なのです。

では、今のチームで一番年下の部下の強みは何ですか?
すぐに答えられましたか?

個人ビジョンを考える中で、「うちの会社では私のビジョンは達成できない」という結果に陥ることがあります。
これでは、今の仕事に集中するどころか、「いつ転職しようか・・・」という状態になってしまうことも想像されます。
その部下の強味や長所を、この会社でどのように活かすかを考えることが重要です。そのために必要となってくるのが、「ビジョンの統合」です。

会社の理念やビジョンをベースに、部下の強味をいかに活かしていくかを一緒に考えるのです。そのためには、会社の理念・ビジョンが何を意味しているのかをあらためて考えていく必要があります

これは理想論ではありません。我々ジェックでは、あらためて自社の理念・ビジョンをじっくりと理解するお手伝いを行っています。
理念・ビジョンをじっくりと理解する事で、「そんなことを意味していたのか!」「自分の会社を見直した」等といった感想が出ます。
その上で、「この会社で、今後自分はどのように強味を発揮していくのか」を考えることで、今の仕事とビジョンが結びつくのです。
これが、ビジョンの統合です。

では、個人ビジョンが形になった後はどうすればよいのでしょうか?

例えば、ある法人営業社員が「将来は、M&Aを手がける部署を立ち上げたい」といったビジョンが掲げられたとします。
では、M&A業務に必要な能力・スキルは何なのか?
例えば、「企業分析力」は必須となるでしょう。
「どのようなビジネスをしている企業か?」
「財務状態は?」
「将来性は?」
「風土は?」
等を調査する力が求められます。

このように、必要な能力・スキル・取るべき行動を洗い出し、それを3年後・5年後・10年後などのスパンでどのようにクリアしていくのかを考えてもらいます。

その上で、目標管理における「成長目標」の中で、「今年は財務の知識を身につけ、顧客分析を正確に行えるようにする」等といった項目を盛り込むことも有効です。
これは、現在の仕事の法人営業にも大いに役に立つことであり、目先の仕事と将来のビジョンが結びつきます。

ビジョン達成に向けて、今の仕事で一歩一歩ステップアップしていると感じることで、目の前の仕事に意味を見出し、自発性が強化されて、「自立型」の社員になるのです。
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