昨年、金沢大学では学長が交替し、ものすごい勢いで変革がすすんでおります。
スーパーグローバルの採択に始まり、大学教育再生加速プログラム、さらには今年度に入ってCOC+の採択、そして、国立大学法人運営交付金の見直しに伴う3つの方向性での重点支援の選択など様々な取り組みの中で、これまでの「北陸での地域NO1大学」という立ち位置から、「グローバルなレベルで研究を行う大学」へと舵を切っているような状況です。
こうした中、これまではなかなか議論が済まなかった分野についても一気に話が進んでおり、その一つに、本学が育成すべき人材についての定義づけがあります。これは、KUGSと名付けられているのですが、KUGSとは,金沢大学<グローバル>スタンダード、つまり「Kanazawa University “Global” Standard」の略称です。
具体的には以下のように定義づけられています。


金沢大学は常に恐れることなく現場の困難に立ち向かっていける次の能力・体力・人間力を備えた人材を育成します。

1. 自己の立ち位置を知る
鋭い倫理感と科学的知見をもって,人類の歴史学的時間と地政学的空間の中に立つ自己の位置,自己の使命を主体的に把握する能力

2. 自己を知り,自己を鍛える
自己を知り,その限界に挑戦し,知的冒険と心身の鍛錬を通して常に自己の人間力を磨き高めていく能力

3. 考え・価値観を表現する
論理的構成力や言語表現力を駆使して概念やアイデアを明確に表現し,かつ自己の感性や価値観を的確に他者に伝える能力

4. 世界とつながる
他者への深い共感に基づいて異文化と共生し,各人にとっての自国と郷土の文化への自覚と誇りをもって,世界と積極的につながっていく能力

5. 未来の課題に取り組む
科学技術の動向,自然環境変動,持続可能性などの多角的視座から地球と人類,国際社会と日本の未来を総合的に予測し,未来の課題に取り組んでいく能力

変化の激しい時代の到来は逆にチャンス。知識基盤社会の中核的リーダーになれ!

実は、これまでも学内ではキャリア教育の議論を何度も行っております。
その中で、キャリア教育は何か? 
キャリア教育を通してどのような能力を養うのか?
そもそもキャリア教育というものを大学が特別に実施する必要があるのか? 
などなどの様々な意見が噴出し、結局は議論が何度もループするようなことを繰り返しておりました。

今回KUGSでこの部分を明確に定義づけたことで、キャリア教育についての方向性が一気に固まった感があります。これから実施する大学の改革を通して生み出される教育から、上記のような能力を養うと明言しているわけです。これらの能力を養うことは大学本来の教育で実施されるべきものであり、キャリア教育という別の仕立てを持つ必要はない、ということになると思います。

本学で「キャリア教育はどうあるべきか」という議論を始めたのはリーマンショック直後で、ちょうどそのころは「キャリア教育」と称して、エントリーシートの書き方や、面接対策などを国立大学法人でも正規の科目として行い始めていた時期でした。それは「キャリア教育」ではなく「就職指導」ではないかということで、本学ではガイダンスは行うもののキャリア教育の対象にはしなかったのですが、改めて考えてみると、やはり補完すべき科目とする必要性があるのでは、と考えております(就職支援コンテンツという意味ではなく)。

今の学生と接していて感じるのは、進路を決めるにあたって視野が狭いというか、情報量が圧倒的に不足しているということです。これは、戦後70年も安定した社会構造が維持されていることによる社会階層の固定化の影響が大きいように思います。
もう一因には、本学に進学してくる学生の家庭環境と両親の職業が均質化していることにあるのではないかと感じています。本校では、石川・富山・福井の北陸3県からの進学者が半分を超えるのですが、両親が地元の企業勤務か公務員、もしくは教員である、という家庭の割合が高いのです。そうすると、転勤そのもののイメージが持てないことをはじめ、海外に赴任することなど想像もできないような環境で育ってきているので、これからのキャリアイメージ―たとえば海外勤務がある程度当たり前になるような世界で、どうやって自分のキャリアを磨いていけばよいのか、というビジョンがほとんどつかめていないように感じます。

ですから、変化の激しいこれからの世界で、KUGSで習得した汎用的能力を使いどうやって生きていくのか、という部分についても、少し情報をインプットする必要があると思っています。これまでにもこのコラムで何度か書いていますが、就活時期になってのこうした情報インプットでは遅いようなので、初学年からそうしたキャリアと人生の可能性を広げるような、いわばライフデザイン教育が必要になっているのではと感じております。

キャリアデザインだけでなくライフデザインまで含める形での情報提供とその中で自分の人生について考え、自らの意思で臨む方向性を選ばせるような仕立てが必要になっているのではないでしょうか。
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