最近、次世代リーダー研修(30代・40代の将来の経営幹部候補者研修)を各企業とも考えられ、講師として登壇する機会が多い。
  各企業とも、「階層別研修」に貴重なお金を投資するよりも、「選抜型研修」を実施し、若いころから「経営者候補者」を見出し鍛えていこうと、研修そのものが大きくシフトしてきている。そんな中、30代~40代の次世代リーダー候補者の傾向として、とても気になることがある。

 日本の偏差値の高い大学を卒業した後、欧米の大学院・MBAコースや日本のビジネススクールで、数年勉強してきた受講生に多い傾向なのだが、事前に渡したケース研究において、「現状分析のフレームワーク・テンプレートワーク」はとてもよく学んできており、現状分析まではほぼ完璧にやってくる。

 しかし、そこから「戦略構築」「運営方針策定」になると、急に稚拙になり「現状の問題の裏返し」を安易に書いて、ケース研究をしたつもりになってしまっている。

現状分析に95%以上のパワーを割き、肝心の「戦略構築」「運営方針策定」には5%程度のパワーで終わってしまっている。そして、「私はケース研究を真剣にやってきました。パーフェクトの中身です」と、自信をもって研修会場にやってくる。

 私は、これを「フレーム病」「テンプレート病」と名付けている。MBAやビジネススクールで学んだフレーム・テンプレートを駆使することだけで、「経営学を学んだ気」になってしまっている。

 最も重要な戦略構築・運営方針策定は、「現状を分析したら自然とできるものだ」と安易に思い、現状分析に大きなパワーを割き、現状を裏返してそこで終わる。そういう受講生が、ここ3~4年で随分増えてきたように思う。

恐らく、欧米の一流MBAや日本のビジネススクールで、そういうフレームやテンプレートを熱心に教えてもらってきたのだろう。

 戦略構築にとって一番重要なことは、「現状分析した後に現状を一旦置いて、マネジリアル アイデンティティ(マネジャーが、これだけは絶対にやって行きたいという主体的意思)を持って、新たなビジョン・組織目的を作っていく」ことである。

 そのマネジリアル アイデンティティがまるで無い中で、どんなに現状を深く分析し完全に現状を押さえたとしても、戦略も描けなければ、創造・変革も起きない。

将来の経営者を、本気で目指すつもりなら、現状分析のフレーム・テンプレートを学ぶことよりも、若いころから哲学書や歴史小説を読み、一流の絵画・音楽を鑑賞し、映画を観、世界各地を一人旅して「真・善・美」を磨くべきだ。

 「真・善・美」を磨きこんでいないと、将来孤独になって「会社の未来構想・ビジョン」を練るだけの胆力も、主体的意思も身につかないだろう。

 「現状分析」のためだけに「フレームとテンプレートだけを学ぶ、MBA通いやビジネススクール通い」は、そろそろ限界にきている。そこで学んだあと、いかにマネジリアル アイデンティティを身に着けていくことができるか? ここにかかっていると思う。
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