気がつけば9月、そしていつの間にか猛暑も終わり、そして就活もいつの間にか終わっていた・・・そんな印象です。金沢大学では結局、2016年の就活に関して言えばピークというものがほとんどなかったまま終わってしまった感があります。
  首都圏の大学では8月から始まった大手の選考がひと段落ついたところですが、大手のみに就活を絞っていていまだに内定が決まっていない学生が一定数いる、みたいなお話も風のうわさに入ってきます。
 本学について言うと、大手の選考が始まる前に数社内定を持っていた学生がほとんどだったため、大手の選考を受け終わって内定がゼロという学生はほぼいなかったようです(応募企業の規模に関係なく、アプローチが上手くなくて苦戦している学生は例年通り一定数いますが・・)。

 企業側から入ってくる情報としては、中堅クラスの企業がいちばん苦労しているようですね。大手の選考が始まる前に内定を出し、「今年は割合と良い学生が集まったよね~」と言っていた企業が、8月以降にバタバタと上の方から大手にさらわれてしまった・・・という話をいたるところでお聞きしています。日程が大手とかぶらなかったため、学生も幅を広げて応募したことも、結果的にはこのクラスの企業の大量辞退につながってしまったように感じています。

 中小企業はどうだったかというと、「内定は出したけどほとんど辞退されてしまった」という企業と「ほとんど辞退がなかった」という企業と、二極化が見られたのが今年の特徴だったように思います。ほとんど辞退がなかった、という企業は決して多くはないと思われますが、いろいろ詳しくお話をお聞きしていると共通項があるように感じております。
 その共通項とは、「学生の一本釣りを徹底していた中小企業」です。こういった企業は採用がうまくいっていたところが多いようです。広報の段階から自社の立ち位置や求める人材タイプを明確にし、ターゲットとなる学生をある程度絞り込んで設定、反応のあった学生一人一人に時間をかけて面談し、納得づくで応募してもらう、というプロセスをしっかり行ったようです。学生の方も企業規模や条件などに惑わされずに自分の立ち位置にあった企業選びをしている層が一定層いるように感じます。そうした学生とうまく接点を構築し合意形成を行うことができている企業が、上手くいったように感じます。

 もう一つ、これも当たり前といえば当たり前の話なのですが、辞退者がほとんど出なかった企業は離職率が極めて低いところが多いようです。学生と時間をかけて面談する際にも話題に上る部分でもあり、アピールできる要素という見方もできますが、視点を変えてみると、自社に合う学生しか入社させていないという採用方針が徹底されているために離職者が出にくいという側面もあるように感じております。
 一方、何らかの方法で応募母集団を多く集めその中から優秀な人材を選んでいくというやり方で選考を行っていた企業は、軒並み苦戦していたといえるのではないでしょうか。こうした選考を行っている企業には同じような考え方で会社を選ぶ学生が集まっていたように感じます。そうすると優秀な評価を受ける学生ほど、より大きな会社、ブランド力の会社に流れます。今年のように大手の選考が後ろ倒しになると最後の最後に上位層がみなそちらで内定を得て流れて行ってしまった、という状況が今年の中堅企業の大苦戦につながってしまっているように感じました。

 この5年くらいで急速に進んだデジタル就活からアナログ就活への変化も、この流れを後押ししているように感じております。就職サイトも以前のような企業の魅力を発信するツールというより、情報収集とポータルの機能のみ使用されるような感じになっていて、結局のところどれだけ直接会って話をするか、雰囲気やマッチングをどれだけ伝えられるかという部分が重要になってきているように感じております。結局のところ人を大事にしている良い会社が企業規模に関わらず選ばれるような流れになってきており、それも自分の価値観やこだわりに合う会社という視点で選定する、という動きがすこしずつ顕在化しているような印象です。これまでは企業規模の小さいところは良い人が取れないといわれてきましたが、企業規模に関わらず人を大事にする会社が採用活動において手間暇を惜しまずやるべきことをきちんとやっていれば、報われる可能性が高いというのはある意味とても自然で素晴らしいことなのでは、と感じています。
 悪評の多い今年の後ろ倒しの日程変更の中でも、こうした動きが見えてきている部分はとてもよかった(ピンチをチャンスに変える取り組みを行った企業が成功できた)ように感じております。

 しかし来年はどうなるんでしょうか・・・
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