前回、「創造性を発揮するためには安心感が必要」と書きました。
職場に対して不安感があると、そこに意識が集中してしまい、「新たな事を生み出そう」「仕事に工夫をしよう」等といったことを考える余裕がなくなってしまいます。
では、職場に対する不安とは何か?
最も大きな不安が人間関係です。周りから「あの人とは一緒に仕事をしたくない」等と言われている状態では、仕事をするにも居心地が悪くなります。
また、周りから何か言われると「何を言っているんだ、お前こそ大した仕事をしていないじゃないか」と開き直る人もいます。自分を正当化させようという心理です。
しかしこれも、「周りの奴らはひどい」と結局不安を深めるだけです。

では、人間関係を良くし、仕事に安心感を持つためにはどうすれば良いのでしょうか?

周りに媚を売り、好かれるように努力すればよいのでしょうか?
結局、人間関係を良くし、安心感を持つためには周りから信用されるしかありません。
「あの人はやるべきことをしっかりやっている」と感じてもらうしかないのです。ようは、当たり前のことを当たり前にやるということです。

例えば、職場のルールを守る、すれ違ったら挨拶をする、きっちりと報告を行なうといった、当たり前のことです。
私は、色々な企業様に訪問しますが、創造性を発揮して新しいことにチャレンジしている企業様は、研修時間の15分前には全員集合している。提出物は確実に全員出している。部屋に入ってくる際は、「おはようございます!」と元気な挨拶がある。確かに、当たり前のことを当たり前に行う習慣がついているようです。
ですから、お互いに関係性が良い。ギスギスした雰囲気は全くないのです。

たまに、「うちの職場は創造性がない。言われたことしかやらないから、何とかして欲しい」と言ってくる企業様があります。そのような職場は、挨拶がない、皆机の上が汚い、提出物の期限遅れは当たり前・・・。そんなことも多いのです。
結局、お互いがお互いを信用できず、人間関係が良くならず、安心できる職場になっていない。そんな職場で創造性を発揮できるでしょうか?

創造性を発揮するメンバーを作りたいのなら、まずは職場で「当たり前が当たり前にできる」状況を創ることです。そしてそれは、我々上司の仕事です。
それを抜きにして創造性のある人材づくりは不可能なのです。

例えば、営業部隊のメンバーを集めて、「もっと効率的に新規開拓をするにはどうすれば良いか?」を話し合う。
今の市況の中ではなかなか難しいテーマです。正に創造性を発揮すべき場面です。しかし、「そんなこと分かってたら、とっくにやってるよ」というのが集まったメンバーの本音・・・。いつも営業会議でそのような事は散々話し合っているのです。

ではどうすれば良いか? 例えば、皆さんの会社では営業部門、スタッフ部門、生産部門などのメンバーが一緒にアイデアを出し合う場面はありますでしょうか?
「もちろんあるよ、毎月幹部が集まって話している」という人もいるでしょう。幹部ではありません、メンバーが話し合う場があるかどうかです。

私の知る限り、現場に近いメンバーほど色々なアイデアを持っています。
毎日毎日現場で仕事をしている中で「もっとこうなったらいいのにな・・・」と考える機会が多いからです。しかし、あまり発言をする場は多くありません。「もっとこうなったらいいのにな・・・」というのが正に創造性の源なのです。
一方で、同じ部門のメンバー同士が集まるだけではグチの言い合いに終わってしまったり、いつもの話で終了と言うこともありえます。

そこで、部門を越えメンバークラスが色々な意見を出し合う場が必要なのです。
以前、ある企業の営業研修にたまたま経理の人が参加していました。その経理の人が一言、「何で営業の会議はあんなに長いのですか?」と質問したのです。営業側は「色々話す内容があるのだから仕方ない」という意見。
しかし、経理の人は「では、みんなが意見を出し合ってワイワイやっているのですか?」との指摘。
営業側は「・・・」。

営業会議は一人一人がその月の業績を発表しているだけで、他の人が発表している間、他の人はボーっとしているだけだったのです。
しかし、それがあまりにも当たり前になってしまっていたので、指摘されて始めて「それって変かも・・」と気づくことができました。

そこで、「どうすればもっと会議が効率的になるか?」
「どうすれば、もっと意見を言い合う創造的な場になるか?」という話し合いが行われ、会議の内容が大刷新されました。因みに、そこにいた役職者は皆無。全員メンバークラスでした。

なお、このようなメンバークラスの話し合いを定期的に行っている会社は多くなりつつあります。メンバークラスが一緒に話し合う場を作るためには、各部門の上司同士が良い関係を築いていることが前提です。上司同士の関係性が悪ければ、「あんな部門と一緒に話し合いなど出来るか」となりますよね。

セクションを越えた、「気づき」のメンバー交流。おすすめです。 (つづく)
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