チームメンバーの実績を促進する方法として、「チーム内で競わせる」ことを実行するマネジャーが多くいます。一番代表的な方法が、「カベ管理」と呼ばれる手法です。メンバー全員の個人名を書いた紙をカベに貼り、実績を上げるたびにシールを貼ったり、グラフの線を伸ばすなどして、個人の成績が一目瞭然になるやり方ですね。
 このやり方を非常に効果的にチーム力向上に使っているケースも見られますが、逆にチーム力を弱める結果になっているケースもあります。
チーム力を弱める結果になっている例として挙げられるのは、「実績の悪い人を中心に見てしまう」マネジメントです。通常、カベに貼られたメンバーの実績を眺めていると、最初に目に入ってくるのが一番実績を上げているメンバー。そして、次に気になるのはやはりもっとも実績を上げていないメンバー・・・。
 すると、実績の悪いメンバーに対して、次のように指導するマネジャーがいます。「〇〇さん、なかなか実績が上がっていないね・・・。一番実績を出している△△さんは、1日に4件以上はアポイントを取っているよ。やっぱり、行動をしているんだ。でも、〇〇さんは、それをやっていないよね。△△さんの良いところは・・・」

 要するに、実績を上げているメンバーの「良い点」を引き合いにして、「なぜ、あの人のようにやらないんだ」と比較しながら指導してしまうのです。
 この指導が一概に悪いとは言いません。なぜなら、「よーし、私もやってやる!」と奮起する人もいることはいるのです。しかし、「あの人はできている。あなたはできていない」と言われると、「このマネジャーは、私のことをできない人間だと思っているんだ・・・」「私はどうせダメな社員だよ・・・」と自信を失わせたり、ひねくれてしまうリスクが非常に高いのです。

 そのような状況になったら、チーム内の雰囲気はどうでしょうか?なかなかうまく実績の出ないメンバーがふさぎ込んだりひねくれたりして、全体的に荒んだ空気が流れそうですね。

 もちろん、実績が出ない人を指導するのは必要です。ただ、まず最初にやることは「実績をうまく出している人」に対する指導です。いくら実績を出しても、「自分さえ実績を出せればよい」という感覚では、他のメンバーから敵視されるだけ。実績を上げているメンバー(特に、目標を既に達成しているメンバー)に対して、「あなたは、非常に素晴らしい実績を出している。ぜひ、他のメンバーにも手を貸し、チーム全体の実績が上がるように協力してほしい」という観点で指導します。
 人事考課にも、「チームへの貢献」「全社的な貢献」がある企業も多いはず。

 実績が出ていないメンバーに、「あの人は、自分の実績を上げながら、我々に情報をくれたり、フォローをしてくれる。私も頑張らなくては!」と感じてもらうようにするのです。そのような状況でしたら、実績の出ないメンバーに、「実績を上げている〇〇さんから、何か学ぶことは?」と指導しても、ギスギスすることはない。それどころか、積極的に学ぶ点を見つけようとするはずです。

 この話はあくまで一例ですが、カベ管理を単なる「競争をあおる」道具に使うのか、メンバー同士が協力して成長するきかっけにするのかは、我々マネジャーの意識にかかっています。
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