前回までは、創造性を発揮させるをテーマにしてきましたが、今回からは「自律性を育てる」をテーマにお送りします。
自律性とは、正に「自分を律する」こと。
つまり、言われたことを言われたとおりにやるだけではなく、自分で考え、自分で自分を管理して仕事を進めることです。
一流のプレイヤーだった人が、マネジャーになって陥ること。
それは、「あれも、これも」と全て自分で仕切ってやってしまおうという行動をしてしまうことです。
部下が何をしているかを逐一チェックし、自分が考えている方向性と違うことをやっていた場合はすぐに、「そうじゃないだろ。そういう時は・・・」と回答を出してしまいます。
一見頼りがいのあるマネジャーであり、メンバーからも頼りにされます。
しかし、そのようなマネジャーは、メンバーの自律性を弱めてしまいます。「最後は上司が教えてくれる」「上司が責任を取ってくれる」といった、依存心を増幅してしまうからです。

では、何も言わずにメンバーに好き勝手にやってもらうのか?
そういうわけにもいきませんね・・・。
そこで、マネジャーとしてメンバーの自律性を発揮させるためにまずやることは、あなたの右腕、つまりNo.2を徹底的に育てることです。そして、そのNo.2に色々な権限を与えて、リーダーシップを取ってもらうのです。

通常上司が「○○をやろう」と言えば、それは指示であり、いわば命令です。「上司が言ったのだから、やらないといけないな」となります。
一方で、No.2は上司ではありません。他のメンバーから見れば同僚です。その同僚が「○○をやろう」と言っても、指示ではありません。
すると、「何で、それやるの?他のやり方のほうがいいんじゃない?」等といった議論が沸き起こったりします。

すると、「ああでもない、こうでもない」とメンバー間で話し合いがなされ、結果的に「メンバーが考えた」結論が出ます。それをNo.2のメンバーにリーダーシップを取ってやってもらう。
もちろん、上司の考えたことと違ったやり方かもしれません。しかし、メンバーを信じて任せ、成果が出たら大いに評価する。

特にNo.2のメンバーについては、
「○○さんが仕切ってくれたから、今回は上手くいった」と高く評価します。すると、ますますNo.2が自律性を発揮してリーダーシップを発揮しようとする。その姿を見た他のメンバーも、「○○さんのように、自分で周りを引っ張って動くのはいいことだ」と感じて自律性が育ちやすい土壌ができます。

上司が自分で考え、全部自分で仕切ってしまうと、確かにミスがなく、上手く行くことも多いかもしれません。しかし、長い目で見たときにメンバーが育たなければ、チームとして成果を挙げ続けることは困難です。

今の安全を取りますか? それとも、今後のチームの大きな飛躍を取りますか?
自律性を育てるためのベースとして重要になってくるのは個々人の目標です。目標に対しての本気度が高ければ高いほど、自律性が発揮されます。
これまでの人生を振り返ってみてください。目標に本気になっていた時には、誰から何も言われなくても自分で行動していませんでしたか?例えば、「なんとしても資格を取る」「なんとしてもあの学校に入る」と本気になっている時の試験勉強。休日の図書館などには、試験勉強をする人で満席です。
誰からも強制されていないのに、一生懸命ですよね。

これは、仕事でも同じ。なんとしても、自分の目標を達成したいと本気になっている時には、自然と「目標必達」のための計画を立てるものです。また、自分で情報を集めたり、周りに働きかけて知恵をもらおうと努力します。正に、自律性が強まっている状況です。

企業でも、一人一人に目標があるはずです。営業であれば数字、総務であれば業務改善、生産であればコスト削減や時間短縮。
しかし「部下に目標はあるが、本気で追っているようには見えない」と嘆く上司も多いようです。期初に目標を確認し、目標管理シート(チャレンジシートなどと言う会社もあります)に書き込んだら、後はお蔵入り・・・。

では、メンバーが目標に本気にならないのは誰のせいか?
それは、我々上司のせいです。我々上司が、メンバーと徹底的に話し合い、その目標に魂を入れる行為を怠っているのです。
では、どうやって魂を入れ、目標に本気になってもらうのか?
「これは、あなたの目標だ。なんとしても達成してもらわないと困る」とプレッシャーを掛けるのか?
これではやらされ意識になってしまい、本気にはなりそうにありません。
では、メンバーに勝手に目標を作らせるのか?現実的には、部門の目標を達成するために、ある程度目標を固定する必要もあります。

目標に魂を入れるために小手先のテクニックはありません。
目標について、上司とメンバーで部下が本気になるまでとことん話し合うしかないのです。
期初には、上司とメンバーで面談を行なって目標管理シートを完成させている企業は多くあります。しかし、多くの場合、その面談は形骸化している実情があります。

次回以降は、目標に本気になってもらうメンバーとの対話を考えていきたいと思います。
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