8月31日(日)の日本経済新聞・東京版朝刊に、採用ブランディングに関するパネルディスカッションの記事が掲載されました。私がコーディネーター役で、旭化成の永並 晃氏(人財・労務部 採用グループ長)と、伊藤忠商事の藤川 寛氏(人事・総務部 採用・人材マネジメント室長)にお話を伺いました。2016年度新卒採用はかなり混乱が予想されますが、だからこそ一層、企業には採用ブランド力を高める工夫が求められてくるのだと思います。関東にお住まいでまだお読みでない方は、ご一読をお勧めします。
 さて、今回も前回に続き、HR総研が7月に実施した調査を基に、「インターンシップ」について見ていきたいと思います。

3割近い企業が定員枠を増大

昨年もインターンシップを実施した企業に対して、前年からの変更点を尋ねたところ、28%の企業が「募集定員を増やした」と回答しています[図表1]。そのほかの「1dayタイプを取り入れた」「回数を増やした」「開催月を増やした」も、その目的は「募集定員を増やす」ことにほかなりません。学生情報の早期入手だけが目的であれば、わざわざ定員を増やさなくても応募学生数が増えればいいわけですが、「募集定員を増やす」ということは、「早期に直接会ってコミュニケーションできる学生を増やす」ことを目的としており、一次母集団として緩やかに採用につなげていきたいとの企業の意思が伺えます。
第42回 HR総研の調査から見える「インターンシップ」 その2
以下、企業から寄せられた具体的な変更点をいくつか紹介します。
「募集方法の変更」では、
・キャリアセンター経由での申し込みだけでなく、学生からの直接応募も受け付けるようにした(情報処理・ソフトウェア、101~300名)
・就職ナビサイトのWEBシステムを利用して、学生数をさばけるようにした(食品、501~1000名)
・ターゲット校を拡充した(精密機器、1001~5000名)

「プログラムの変更」では、
・どういう業界かを知るようなプログラムの導入(フードサービス、5001名以上)
・グループワークのテーマの与え方(店舗研修で顧客ヒアリング~働く意義の再認識)(商社、101~300名)
・1週間程度のプログラムを新設した(商社、501~1000名)
・「半年間で6日間」のインターンシップを、「2週間で6日間」に変更した(フードサービス、101~300名)
・1カ月だったものを2週間に短くした(情報処理・ソフトウェア、501~1000名)
・1dayを夏季に実施し、学生に対しての門戸を広げた(食品、501~1000名)

絞り込みは「大学側に委ねる」がトップだが

前回、インターンシップ実施企業が急増している割りに、想定以上の応募学生を集められている企業が7割となっていることを紹介しました。応募者が定員以上となれば、当然全員を受け入れることはできませんので、何がしかの方法で選抜(絞り込み)をする必要が出てきます。その方法を尋ねたところ、トップは「大学側によるマッチング」の37%、次いで「書類選考」の35%という結果になりました[図表2]。インターンシップの広報手段でも「キャリアセンター」は55%(前回の記事参照)と半数を超えており、告知ルートとしてだけでなく、応募者の絞り込み(マッチング)機能としての役割を果たしていることが分かります。
第42回 HR総研の調査から見える「インターンシップ」 その2
「適性検査」(4%)や「学力検査」(2%)を実施している企業は少数派にとどまりますが、中には今回の選択肢には含まれなかった「面接」まで行っている例もあります。インターンシップ参加者を採用選考につなげるだけでなく、すでに応募の段階で選考につながる行為が横行していると言えます。
 一方、「絞り込みはしていない」企業は42%と半分以下にとどまります。定員に達していないか、予定していた定員を超えたものの、何とか希望者を受け入れたということなのでしょう。
 もちろんインターンシップのプログラム内容によっては、ある一定レベルの学力や専門知識が求められるものもあるでしょう。ただ、インターンシップの内容が実務経験ではなく、テーマを与えてのグループワークということであれば、企業による「書類選考」や「適性・学力検査」、ましてや「面接」までしての絞り込みというのは行き過ぎで、まさに採用活動の一環と考えられても仕方ないでしょう。

6割の企業でインターンシップ参加者から内定者

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