「体力のある男性歓迎」「徒歩で通勤できる方」「ヒゲ・長髪不可」。つい求人・募集原稿に書きがちなこれらのワードは、実はいずれも法律違反です。求人媒体に原稿作成&チェックを任せる場合はさておき、自分で原稿を作る場合は、「書いてはいけないこと」「書くべきこと」を知っておかないと、法に触れた内容を掲載してしまうことも。そこで、求人や雇用の法律に詳しい行政書士の小山内怜治先生に、アルバイト募集における原稿作成時の注意点を伺いました。

求人・募集原稿に関する法律には何がある?

第16回 アルバイト採用担当者必読 法律から見る求人・募集原稿の書き方入門
求人時に関係する法律にはいくつかありますが、基本的に覚えておきたいのは、大きく分けて以下の3つです。

募集原稿に関連する法律3つ
●雇用対策法

求人における年齢制限の禁止などを定めた法律
●男女雇用機会均等法
職場での男女平等などを定めた法律
●職業安定法
企業による労働者募集などについて定めた法律

 上記の法律は、一言でいえば“労働者の権利を守る”ためのもの。本来、雇用者側には自由に採用基準を決めてよい“採用の自由”がありますが、募集の段階に限っては求職者側の権利が尊重されます。

 わかりやすくいうと、「募集する段階では募集要件は最低限にとどめ、なるべく求職者への門戸を広く設けて、応募できる機会を与えましょう」ということです。

 これらの法律は、新聞や雑誌などのメディアに載せる求人広告はもちろん、店長自らが書いて店頭に貼り出す求人・募集チラシからヘッドハンティングにまで、広く適用されます。

年齢・性別・国籍・地域……“限定”はNG!

先に述べた3つの法律によって、年齢や性別、国籍、居住地域など、応募者を“限定”する募集の仕方は、原則として禁じられています。冒頭の「体力のある男性歓迎」「徒歩で通勤できる方」は、この“限定”にあたるため、法律違反なのです。

 また、資格の有無を要件に掲げる際も、時として“限定”にあたる場合があるので、注意が必要です。もちろん、配送の仕事で「ドライバーは運転免許必須」、薬局の仕事で「薬剤師資格必須」など、職務上必須の資格であれば問題ありません。

 ただし、「必須ではないけれど、持っていてほしい資格」は、資格を持たない求職者を排除しかねないため、記載するのは不適切。そんな時は、「○○の資格を取得している方」ではなく、「○○の資格“程度の能力”がある方」と、能力を求める記載に変えれば、法律上の問題を回避できます。

“限定”にあたる募集原稿のNGワード例
●年齢を限定する「25歳以下まで」
●性別の限定を示唆する「男性(女性)歓迎」
●国籍を限定する「日本人のみ」
●地域を限定する「徒歩で通勤できる方」
●必須ではない資格を求める「簿記2級をお持ちの方」

「仕事に必要な能力」や「客観的事実」なら記載OK

この記事にリアクションをお願いします!