人材育成の話をする際に、次世代リーダ育成に関する話題になることが多い。コア人材を効果的に育成して、次世代リーダとして会社を引っ張っていく優秀な管理職を輩出したいというのが狙いである。
 確かに、経営の一端を担う管理職は、会社にとって重要な人材ではあるが、当然、リーダだけでは企業としての付加価値は生み出せない。

 人事制度改革において、このようなリーダ(組織マネジメントを行う人材)と並行して語られるのが、部下を持たずに高い専門性によって経営に貢献するスペシャリストである。キャリアパスを分けて管理する企業も増えている。
 細分化、高度化するとともに、より専門性が求められるビジネス環境においては、高度な知識・技術を持ったスペシャリストが必要とされているためなのだが、本来的なスペシャリストが機能するような仕組みとして効果的に運用されている例は多くない。
  一定以上の能力があるものの、限られた管理職ポストには就けない人材の受け皿として使われていないか、また、人事制度改革においては、等級別人員構成の管理職層の余剰を解消して、人件費を適正化するための救済措置として使われていないか、改めてそのあり方を考え直したい。

 このような仕組みやその運用とともに見直したいのが、スペシャリストの育成である。これからの会社の存続にはリーダも必要であるが、既存事業でより高い付加価値を生み出す、あるいは、新規事業に乗り出すためには、強力なスペシャリストも必要である。それは、管理職からあぶれた人材でもなく、人件費適正化の為に仮置きされる人材でもない、本来的で本格的なスペシャリストである。このようなスペシャリストの育成に対して、本格的に取組んでいる企業は少ないのではないか。多くの企業では、教育研修企画の際に語られてもいないことが多い。

 企業内スペシャリストに求められるのは、自身の専門性をさらに掘り下げることだけではない。求められるのは、自身の専門分野と他分野の組み合わせによるイノベーションなど新たな付加価値を生み出すことである。このようなイノベーションを、現場のOJTなど実務の延長線上に求めるというのは、確率の低い偶然に会社の将来をかけるのと変わらない。必要なのは、発想の転換や創造性、分野を超えた本質的な思考と議論である。例えば、研修の一環として実務では不可能な思い切り自由度の高い研究を推進する、あるいは、スペシャリストの他流試合も有効かもしれない。会社は、次世代スペシャリスト育成として、このような機会を与えることを真剣に検討すべきである。また、本人にも、スペシャリストとしての責任感とプライドを持ってもらいたい。管理職に対して、「組織マネジメントを行う者としての意識が足りない」などとよく言われるが、スペシャリストにだって専門家としての高い意識は必要である。

 企業競争力に直結するスペシャリストを有効に活用するとともに、正社員全員が管理職を目指す時代をいち早く終わらせ、新しい人事管理に踏み出したいものである。
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