住宅手当とは社員の住宅費を補助する手当です。この手当は、まだ給与の安い若年社員の住居費を補助する目的や、転勤する社員の住宅費の補助の目的のために設置されることが一般的です。また住宅手当という形ではなく、会社が社宅や寮を用意して、安い家賃を徴収するという形態もあります。いずれにしても住宅費負担が通常の社員に比較して重いと想定される社員への補助が目的となります。
  この住宅手当の支給の考え方や支給方法、金額は企業によって様々です。例えば全国転勤をほぼ全員の総合職が繰り返すような企業では、住宅費の安い地域に居住する期間もあれば高い地域に居住する期間もありますが、ローテーションを繰り返すことにより長期的に見れば家賃負担は均一になるため、住宅手当をそもそも設けない会社などもあります。逆に地方に本社のある企業で、東京などの住居費の高い地域への転勤をさせなくてはならない場合などは、住居費の補助をしなければ快く転勤に応じてもらえないでしょう。また新卒社員などは、勤務地に通勤できる自宅の社員は新たな住宅費は発生しませんが、地方から就職のために転居した社員などは住居費負担が大きく、結果新卒社員の実質的な可処分所得に大きく差が出てしまいます。そのため若年段階では一定期間住宅費の補助をすることも多くの企業で行われています。

 さて問題になるのは、どの地域に居住していても、それが賃貸であろうが持家であろうが、居住に関する費用は発生しているのであって、そもそも住居費を会社が補助すること自体が、多様なライフスタイルの社員の雇用を促進する上で必要なのかということです。確かに地域によって居住に関する費用は大きく異なります。東京で家族3人で生活するには家賃は13万円程度が平均値といわれています。しかし地方に行くと同じ広さでその半分以下という現実があります。そうなると転勤などの理由よりも地域による家賃差を基準に住宅補助を考えることが妥当ということにもなります。

 実際には転勤し居住地が変わる場合には、金銭的なもの以外に様々な苦労が発生します。子供の学校や生活環境の変化などで精神的にも大きな負担が発生します。この精神的な負担に対しての慰労としての転勤時の住宅手当はあってもよいと思います。しかし転勤を一度した社員に対して10年以上などの長期に渡り住宅費補助をする企業などもありますが、10年も経つと過去転勤した社員と転勤を一度もしていない社員に対して、住宅手当の存在により給与額に大きな差が発生し、ひどく不公平な状況になることもまま見られます。

 社員が持家を持っているか賃貸住宅に住んでいるか、持家の家賃収入があって賃貸住宅に住んでいるか、親の住居に住んで全く住宅費を負担していないのか、一部負担しているのか、など個人の生活のスタイルや収入などがバラバラな中で、地域差以外の住宅の補助が本当に必要かを再考する必要があります。
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