近年労働市場は発達し続けており、今や新卒で入社した社員が定年まで勤めるということ自体が比率的に低くなってきています。この労働市場の発達は、企業人事にとって好ましい効果があります。それは今まで自社で育成できなかった社員や即戦力の社員を中途で採用できるということです。この中途採用が容易になることで、成長に対してダイナミックに採用を連動させることができるということです。
  しかしこの労働市場の発達は、企業の人事管理に対して別な大きな影響も与え始めています。それは労働市場での人材区分が企業の人材区分へ強い影響を与えるということです。労働市場では人材の本来的な価値とその時の人材の需要と供給のバランスによって賃金水準が決まってきます。そのため工場の現業社員の賃金水準は労働市場では比較的低かったり、逆に需要が逼迫している職種などの賃金水準は高騰することもあります。管理系の人材では法務の職種などは供給以上に需要が多いために高い賃金水準となっています。他の管理系人材の賃金水準より高い賃金を提示しなければ、優秀な社員の獲得ができないのです。こうなると社内の管理系の人材の賃金も一律の賃金水準では対応できなくなります。

 このような状況が今後も続いていくということは、労働市場での職種別の賃金の高低が、社内の人事制度に強く影響を与え、方向的には社内の人事制度も職種別の賃金を反映させることになる可能性が高くなります。職種別の賃金は、そのうち職種別の等級制度などの複線的な等級制度へ変更する方向性にもなるでしょう。当然評価のあり方などもその職種に合った評価になることも予想されます。このように将来的には職種別の人事管理が浸透していくことになるということです。

 この職種別の人事制度は、職種によって等級の定義や賃金、評価が異なるという、いわゆる複線型の制度ということになります。この複線型制度は構造的には簡単ではありません。まず単一の職種で採用して将来もそのまま単一の職種がキャリアゴールの社員は問題ないのですが、企業としては複数の職種を束ねる総合職的な社員も必要となります。この総合職的社員は、様々な職種の経験をして、将来は管理職や事業を統括できる人材への成長が期待されます。そうなると総合職的社員も企業独自の一つの職種ということになります。複線型といっても総合職と特定職務領域の職種に分化することになるのです。そうなりますと総合職と特定の職種の社内的な処遇の比較などが実務的には問題になることが多く発生します。

 労働市場の発達と同時に企業に必要な人材を長期にわたり育成するためには、総合職と他の職種の組み合わせが合理的な解になります。ただしこの合理的な人事制度への転換は様々な障壁もあり、なかなかスムースな転換が難しいのが現実です。今までの単線的な人事制度を職種別の人事制度に変更することは、実際には非常に大きな反発があるからです。

 しかし外部環境は職種別管理を求めており、その大きな流れからは企業の人事制度は結果として職種別管理に移行せざるを得なくなることが予想されます。
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