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【トランストラクチャ組織・人事コラム】

軽視されるローテーション


株式会社トランストラクチャ 代表取締役シニアパートナー 林 明文

  ビジネスマンのキャリアを語るときには、過去の経験について説明するのが普通です。現在のキャリアは過去の経験の積み重ねの上に成立しているのであり、そのため転職する際も過去の職務経験を列挙した”職務経歴書”はきわめて重要です。履歴書、職務経歴書には、保有している能力などはあまり書きません。職務を列挙することで、職務領域や能力レベルが十分に想定されるからです。

ビジネスマンのキャリア形成によって職務の経験は最も重要なものでありますが、この職務経験を仕組化するものがローテーションと言えます。ローテーションは社員の成長に非常に強い影響力がある仕組と言えるでしょう。しかし現在の人事管理においてはこのローテーションは、不当と言えるくらいの低い地位しか与えられていません。重要性は理解されていても、実際にこのローテーションを計画的体系的に実施している企業は希と言えるでしょう。銀行などでは不正防止などの目的で一つの職場に数年しかいれられません。行政による指導が徹底しており、日本でも珍しい、ローテーション先進企業です。一般の企業では、ローテーションは必要であると言いますが、実際に人を動かそうとすると組織責任者が反対するなど、総論賛成各論反対の代表的な状況となります。自組織の優秀な人材を他の組織に異動させることは、短期の組織目標達成のためにマイナスであるからです。

ローテーションは組織を跨ぐ人事異動ですので、組織の長の権限を越えた人事異動権が人事部門になければ円滑かつタイムリーに実施することができません。日本企業では概して人事部門が弱く社内発言力がありません。多くの企業では事業部などのラインの権限で人事が決められますので、人事部門はその決定に従属的にならざるを得ないのです。したがって会社としては戦略的な部門間ローテーションはなかなか実施されないのです。

優秀な社員を育成するために最も重要であるのは、計画的、戦略的な職務の経験の積み重ねであることは誰も疑義を挟みません。しかし実際のローテーション実施、要は人事異動を行おうとすると、中長期の会社全体の人材育成よりも、短期の自部門の目標達成が意識されます。中長期的に見れば部門エゴとも言えるでしょう。そのため人材育成はローテーション手段ではなく、集合研修などが主要な施策になりがちです。

高度成長期にはポストの増加に比較して管理職人材の人数が追いつかない状況であり、そのため必要なポジションに機動的に人を配置する必要性がありました。これは結果社員に様々なポジションや環境で仕事をさせることで、副次的に育成効果が出たと言えるでしょう。しかし現在ではポスト数に比して管理職人数が多く、また概して総合職的社員が相対的に多いために、敢えて費用をかけて人の配置を換える必要がなくなりました。その結果職務経験が限定される傾向になり、優秀な管理職や経営者が輩出できなくなってきたのです。

ローテーションは軽視されています。これからはグローバル競争も意識した優秀な人材を育成しなくてはなりません。そのためにも戦略的、戦術的なローテーションは必須であり、この機能が人材育成の根幹であると再認識しなければなリません。
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株式会社トランストラクチャ 代表取締役シニアパートナー 林 明文

青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。
【執 筆】
「人事マネジメント30講」(トランストラクチャ)、「人事の定量分析」 (中央経済社)、「よくわかる希望退職と退職勧奨の実務 」(同文館出版)、「適正人員・人件費の算定実務 」(中央経済社・共著)、「雇用調整実行マニュアル」(すばる舎リンケージ)、「CFOハンドブック」(中央経済社・共著)、「人事制度改革と雇用調整の実務 」(中央経済社) その他人事雇用に関する講演、執筆多数。

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