三浦 展・菊入 みゆき著
講談社プラスアルファ新書 880円

 書籍には「モテ本」というジャンルがあり、どうすれば異性の関心を惹き、好意、恋愛感情を持ってもらえるかのテクニックを教える。圧倒的に多いのは男性向けのモテ本である。本書もタイトルからモテ本と勘違いされそうだが、まったく違う。モテを切り口にして描いた「現代職場事情」として読める。
本書は三浦氏の企画で成立したようだ。JTBモチベーションズが2010年に行った「『仕事』と『恋愛』に関するモチベーション調査」が新聞に紹介され、「出世志向の恋人はイヤ」という見出しに三浦氏が驚いたことがきっかけだった。
 その驚きを三浦氏は「まえがき」に「今の40代、50代以上の男性には、いい大学に入り、いい会社に入り、出世をし、収入を上げることが良いことだと信じてきた人が多い。ところがそういう男性を恋人にしたくないというのだ」と書いている。
 この調査を行ったJTBモチベーションズには、三浦氏が以前に勤めていたパルコの後輩である菊入みゆき氏がいる。そんな縁によってできあがったのが本書である。

 本書にはいろんな人材タイプと調査データの数字が紹介されているが、タイトルに使われている「仕事を楽しむ男」の数字だけを取り上げてみる。
 調査では「仕事への態度」を11タイプに分けて質問している。「仕事を楽しむ」「プライベート重視」「アイデア」「サバイバル」「きちんと仕事」「協調」「目標達成」「期待・評価」「スペシャリスト」「報酬志向」「出世志向」。
 この11のタイプから女性社員に「恋人にしたい人を選ぶとすればどのタイプか」と質問したところ、圧倒的に多かったのは「仕事を楽しむ」タイプで36%。「出世志向」は2%、「報酬志向」は1%と皆無に等しい。
 男性社員に対しても同じ質問をしている。男性が女性に対して一番多いのは「プライベート重視」タイプ36%。次が「仕事を楽しむ」タイプと「協調」タイプでともに22%だ。

 モテを切り口にして開始された対談は、第2章に入ると「モチベーションの高め方」というテーマに変わる。そして「仕事を楽しむ」というキーワードから2人はメインテーマを語り始める。内発的モチベーションである。
 最近の研修には「モチベーション」を冠するものが多いが、昔はそんな言葉を使っていなかった。「モチベーション」を社名に使ったJTBモチベーションズが設立され、菊入氏が入社したのは1993年だが、その頃は「やる気出せ!」「やれ!」と言っていた。
 モチベーションという言葉が普及した同年にできたJリーグのおかげと菊入氏は話している。サッカー関係者が「モチベーション、モチベーション」と言い、世の中に広まっていったそうだ。
 菊入氏が興味深い指摘をしている。「職場に好感が持てる・気になる異性がいるという人ほど、自分自身のモチベーションが高いと思う人が多い」。また「職場に仕事を楽しむ異性がいると、職場全体のモチベーションが上がる」。つまり「モチベーションが伝染する」。

 三浦氏も女性のタイプについて新鮮な指摘をしている。女性の趣味や関心事を分類すると、5つのクラスタ(集団・群)ができるそうだ。「手作り系」と「OL系」は従来型の女性タイプ。OL系はより若く、「手作り系」は既婚者に多い。この2つが全体の5割を占めている。重要なのはここからで、三浦氏によれば「OL系と手作り系がまだ女性の7割いると思っている企業が多いのではないだろうか」と語り、「それだとマーケットを見間違う」と断じている。
 残りの3つのクラスタは「文化系」「アウトドア系」、そして「オタク系」だ。三浦氏は「文化系」「アウトドア系」に注目し、この2つのクラスタが出現した背景として同性からのモテを上げている。
 「文化系女子」は、結婚相手として自分を成長させてくれる男性を挙げており、付き合う男性がかなり年上でもいいと回答している。50歳以上でもいいという「文化系女子」が28%もいるそうだ。
 詳しく紹介するスペースはないが、女性社員を理解する上で重要な指摘だと思う。詳細については読んでもらいたい。

 第4章「モテる上司は協調型」では、ほめ方のテクニックを伝授している。54歳の三浦氏は「我々の世代は、今度はどうやってけなしてやろうかって考えちゃいがちですよね」と話し、菊入氏が「ダメダメ(笑)」と返している。
 含蓄のある言葉だと思ったのは、菊入氏の「具体的にほめられると、ほめられた行動を再現できる」という発言だ。確かにその通りだ。本書の随所に部下の指導に使える知見がちりばめられている。データを使った分析も紹介されているが、本書の眼目はこういう実践的な洞察にあると思う。
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