「ゆとり教育世代?確かに、また変わった新人が入ってくるんだろうが、いつもとそんなに変わらないだろう?」
と思っていると、それはそれで大変なことになります。
「育成の基本は何も変わっちゃいない。俺たちの若い時だって、新人類だとか、モラトリアム世代だとか言われたじゃないか。普通にやるべきことをやるだけだ!」というような感想・批判も、出てきそうです。
確かにその通りで、「Y理論」や「マネジアルグリッドの9.9精神」「目標と自己統制」などマネジメントの基本は何も変わりません。

ただ、その「味付け」は変えないと、うまく適合させられません。
そういう意味での留意点です。
そこで、「ゆとり世代の育成の留意点」その2。

(3)失敗することの大切さと意味を教え企業人として必要な「チャレンジ精神」を養う。

・失敗は成功の母
・失敗なくして成長なし
・成功の反対は、失敗ではなく、「何もしないこと」だ
・石の上にも三年

このような「正論」は、通用しないものと考えましょう。
「失敗」に対する見方を変えることが、ここは最大のポイントです。

そのために、私たちがまずやることは、「最初の失敗は叱らない」ということだけです。そのことをしっかり「伝えておく」ことです。
「最初の失敗は叱られない」というのは、ちょっとした行動促進剤になります。
「教えられていないことは、できない」プラス「教えられたことも、条件がちょっとでも違うとできない」のです。一度教えたことでも、かならず「これでよいですか?」と確認してくるのが彼らです。どんな失敗もしたくありませんから、失敗してもいい、むしろ失敗して来い、ということは、第一歩を踏ませる道具にはなります。

しかし、チャレンジ精神を呼び起こし、繰り返しチャレンジさせるほどの効果は、全くありません。チャレンジ精神を養うには、「失敗」を次々させること、失敗に耐えることを経験させるしかないと思います。その際、

・プラス思考で考える(失敗も成功のうちと考えるなど)
・うまくいったら、すぐほめる
・新しいことに次々取り組ませる

私が、飛込みで営業を始めた時、当時の先輩から「一軒、断られるということは、その一軒は売れないということがわかったという成果だ」と教えられました。そんな意識転換が必要でしょう。
仕事をやるための基本的な能力がないわけではないのです。やればできるようになるのですが、やらないのです。

そこで、次に、チャレンジ精神を養い、自発的に仕事ができるように成長させるためにも、

(4)すぐに結果が出なくとも諦めない粘り強さを培うために、一つのことを最後まで「やり切らせる」

「一つのことをやりきる」、これを実践することは、実は並大抵のことではないこと、あきらめずにやり切った人が成功することは、社会人なら皆知っていることです。プロとは、やるべきことをやりきる人であることを理解するには、少し時間がかかるかもしれません。

だって、彼らは、「好きなことだけをしていればいい」と言われた世代ですから。入試だって、「AO入試」などという「個性や適性」というやや曖昧な評価基準で乗り越えてきていたりもするのです。一般の入試でも7教科12科目などではなく、わずか3科目で行われますが、AO入試の場合は、「学校の教科に入ってない何か」で認められて大学に入っていたりするわけです。学校の教科は「やるべきこと」ではなくなってしまったかのようです。

(全員がAO入試じゃないだろ?ハイ、そうですが、彼らは「それが許される風土」の中で育ってきたわけです。ここもよく間違えられるところです。「いつの時代も新人はそんなもの」とか「一人ひとりを見たら、違うじゃない」という人は多いのですが、風土は否応もなく一人ひとりの中に入ってしまうのです。行動判断の土台のどこかで影響を及ぼしているのです。殊に、集団で動くときには、多くの場合、この風土が表に出てきます)

一人前の社員を育てるために、私たちがまずやるべきことは、「やらせきること」に尽きるわけです。やるべきことをやらなくても済んだ世代ですから。

「『百の知識よりも一つの成果』の精神で」と、弊社の新入社員研修では教えています。何よりも、結果、成果を出すまでやることの重要性を伝えています。
新入社員も、「できる力」も「知識」もあるのです。それは、教えれば身に付けることができます。が、行動しないことが多いのです。場合によっては、追い込んででもやらせきることが必要でしょう。

ただし、メンタル面に課題がある場合が多くあります。
「親父にもぶたれたことがないのに」というニュータイプよりも、数段「打たれ弱い」ので、ちょっと叱った(怒るわけではない)だけで、「駅まで来たけど、会社に行けない」「なんとなく、会社休んじゃいました」という事態も起こり得ます。

残りは、次回!(つづく)

(2011.12.12掲載)
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