「他人の欠点を冷静に見ようとする人より、できるだけ長所を見ようとする人の方がリーダーに適している」という設問に対する回答は、

そう思う    69.5%
わからない  15.4%
そう思わない 15.1%
この設問、普通の企業人であれば、「そりゃ、そうだろう」と思うはずの設問です。
実際に、ある企業での中堅社員研修(東証一部上場企業の現業社員、30歳前後、26名の回答)でこの意識調査を実施した結果、この設問には、89.2%が「そう思う」と応えています(それでも10%は間違える)。

この新入社員と一般社員の回答数値の乖離に関して、私は次のように考えています。

この設問は、リーダーというのは、部下の「長所を生かす」か「短所を改善する」か、どちらが良いかを聞いています。
新入社員の場合、まだまだできないことも多いという自覚があり、なんとか自分の欠点を改善してほしい、それをリーダーに求めている人が「そう思わない」と答えている、とも判断できるのではないでしょうか。

また他の設問とあわせてみてみると、この設問で「そう思わない=自分の欠点を改善してほしい」という人は、次のような傾向も強まります。

●「叱られても良い」
●「明確な指示を出してくれれば従う」
●「仕事は所詮つらいもの」

総合してみると、叱られたり、命令されたりすることに対して抵抗感は少なく、仕事はつらくても、やらなければならないものと考えるようです。

この数年、「指導されたい」と待ちの姿勢があり、「会社に入れば指導してもらえる」と依存的に考えている新人も増えたように感じます。
このような新人には、根っこのところで、仕事に対する見方が間違っている可能性があります。
そこから手を入れないと、「長所を生かそう」という方向にはなりにくいといえるでしょう。

弊社の新入社員研修では、組織を作る理由を「凡人に非凡なことをさせる」と伝えています。
なぜ、凡人が非凡(すぐれたこと)なことをできるのか?という説明に、
「それぞれが持つ長所を生かし、相互補完するのが組織だ」
という説明を加えます。

さらに、「組織は、一人ひとりの長所を生かすことで生産性を上げている。その仕事で生かせる長所は、まだ新入社員のみなさんには見つけられないかもしれない。
しかし、仕事をしていくなかで、その長所を身につけ、生かして貢献していくことができる。
組織は、皆さんのいいところを生かすためにある」というような話を研修の中でするようにしています。

目の前にあるその仕事に真剣に取り組み、それを得手としていく・・・
そういうような気付きが得られるようにしています。

長所や才能とは、今あるものではなく、これから磨き上げていくものなのだ、と伝えています。

つまり、仕事における「長所」は、実際のところ、その会社に入り、業務に就き、その業務を極めていく中ででき上がるものではないでしょうか。
多くの企業では、どこでも通用するような技能・技術(一般的人的資本)よりも、その企業特有の技能、知識(企業特殊的人的資本)の方が有用であることが多いのが現実ではないでしょうか?
(年功序列賃金や終身雇用制との結びつきで語られる内容ですね)

だからこそ、企業としても、長く勤めてほしいですし、長く勤めてもらわないと技能が磨かれず、生かせず、生産性が上がらないのです。

幸いにして、「他人の欠点を冷静に見ようとする人より、できるだけ長所を見ようとする人の方がリーダーに適している」という設問に対する回答では「そう思わない」と応える(欠点の是正、矯正がリーダーの仕事と考えている)新入社員は、「そう思う」という答えを出す人よりも「指導」を受け入れる素地は整っているようです。

で、あるならば、我々上司、先輩社員は、心おきなく彼らに目の前の仕事に取り組ませ、その技能を引き上げ、彼らの長所とすべく指導していきましょう。

(2012.03.21掲載)
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