「職場の人間関係を維持するには、各人が期待された役目を遂行することがなによりも大切である」という質問に対する回答は、次の割合です。

そう思う   71.5%
わからない  12.7%
そう思わない 15.7%
(2011年新入社員研修での数値)

この設問、「役目を遂行する」ことが「人間関係を維持することにつながる」という考えに対して、どうなのかを聞いているのですが、社会人なら、「この考え方は当たり前」ですよね?
やるべきことをやらない社員がそばにいて、そいつと仲良くしたいか?というと、そんなことはありません。「なんだよ、あいつ、いい加減な仕事をしやがって」と周りの人が思うのは火を見るよりも明らかです。
すばらしい提案を思いつく社員であっても、役割を果たしていないと、「やることやってから、そういうことは言えよ」と、それがたとえ本当に良い提案でも、周りに拒否されてしまうでしょう。

役目を果たさない社員とは、良好な人間関係は作りにくいはずですが、新入社員がそう答えるのは、全体の7割程度。役目を遂行するとは、成果を出すことですが、成果を出すことと、人間関係が結びついていない新入社員が3割近くもいるのです。

この人達の「良い人間関係」とは「仲良し集団を作ること」であり、「疲れちまったよ~ エ~ン ('_') 」とメールを送れば、必ず「がんばってね (^_^)/~」と3分以内に返信がある関係であったりするわけです。

「そう思わない」と答えた15.7%の新入社員の回答をさらに細かく見ていくと、
「やるべきことをやっていても、職場での不安感はなくならない」
「プラスアルファの仕事をしても、最後にその分も報われるとは限らない」
「利益を出せない会社でも、社会の発展に役立っている」
という意識をもつ傾向が高いようです。

総合的に見ると、「成果を出すということに対する価値観が薄い」と推察できます。企業とは、業績を出すことによって、存続していくわけで、業績こそ最大の判断基準なのですが、そこが腹に落ちていないようです。
では、どうすれば、この考え方を「行動化」することができるようになるのでしょうか?

この数年、「体を使う研修」が増えているように感じています。よーく考えると、ラグビーを体験させたり、みんなでアスレチックをしたりすることで、この「それぞれが役目を果たす」ということが重要だということを理解させることもできるように感じます。
ただし、「理解」はできても、実務に行かせるか?というと・・・正直、ムリだと思います。

運動部出身者が採用で優遇されることが今でもあります。
大学までアメリカンフットボールをやっていた愚息の友人たちは、あれほど勉強してないのに(失礼!)、いわゆる上場企業にほとんどが就職しました。(私の知り限り、アメフットは、最もチームワーク=個々人の役割遂行の徹底、連携の徹底が必要なスポーツです)

これは、企業が「チームワークを発揮できる」人材を求めているということの現われでしょう。実際、彼らは組織の中で見事なチームワークを発揮しているようです。
これは、数年に渡りチームワークを叩き込まれたからこそできる話で、「体を使う研修」のような一日、二日の経験で業務にチームワークを持ってくることができるとは、私には思えません。やるなら、1ヶ月くらい、国の某機関のトレーニング(体験入隊)に預けるくらいは必要ではないかと思います。

そこまでできない時は、どうすればよいのでしょうか?

育成の基本はOJTです。
そのOJTの中で何を体験させ、何を理解させていくのか、そこを突き詰め、明確に示しておくことが重要なのではないでしょうか。

弊社の研修の中では、三日間の研修の中で、毎日リーダーや書記といった役割を交代させることで、なんらかの役割を必ず担当させます。役割遂行をさせていく中で、PDCAをまわさせます。反省するときも「役割から見てどうか?」と考えさせます。

この時に「組織における人間関係とは、業績遂行のためのものである」ということを何度も打ち込んでおきます。
リーダーが、注意しなければいけないことを注意しなかったために、メンバーの一人がルールを逸脱する。時間管理係が「時間です」といわなければいけなかったときに、なんとなく発言者に配慮して言わないために時間オーバーをする・・・役割から反省を促します。

このベース(知識)をもって現場でも、
・新人が複数いる場合には、リーダーなどの役割を決めて、初期の育成を行う。
・組織の中で、新人でもできる役割を必ず与える(朝礼司会等)。
・業務を細分化して教える場合にも、全体の位置づけ、前後の作業やその意味を伝えて、連携をとらせる。
・「質問ノート」のようなものを用意し、一日一人、事業所内の誰かに何かの質問をして、その答えを記録させる(もちろん、その内容も上司に報告させる)。
・業務上のどんな些細な事でも報告させるようにする。

その役割を与える「意味」を明確に説明し、やり方をきちんと教え、そして、役割を十分果たせば、ほめ、新たな役割を与え、周りとの関係の幅を増やしていきます。できなければ叱り、再度やり直させます。可能な限り、社内の人とのコミュニケーションをとれるように仕向け、「どんな新人なのか」を社内に知らしめると同時に、「どんな先輩がいるのか?」を新人に理解させるようにします。

こういうことを繰り返すことによって、役目を果たすことの重要性を行動判断の基準として叩き込んでいくことができると考えます。最低限、知識として「組織における人間関係とは、業績遂行のためのものである」というものを持ち、そこにおける判断基準を体験させることが必要です。
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