「自律的なメンバー」は、自分で考え、自分で工夫をし、自分で行動を起こします。では、「自律」と正反対のメンバーとはどのような人か?
例えば・・・
 ・言われたことしかやらない
 ・自分で創意工夫をしない
 ・消極的であり、周りに働きかけない
このようなメンバーは、自律的とは言いがたい。
しかし、このような人は決して少なくはありません。
私も、クライアントの経営幹部から「うちの社員は言われたことしかやらない・・」と悩みを打ち明けられることがしばしばあります。
 では、なぜこのような状況になっているのか?
それは、「仕事をやらされている」というやらされ意識だからです。

 仕事を「やらされている」というやらされ意識の人は絶対に自律的な動きは起こしません。
本音では、嫌々ながらに仕事をしているわけですから、
「最低限の仕事をする」「余計な事はやりたくない」「早く終わらせたい」という気持ちが心を支配していますから。

 結局、このようになってしまっている人達は、仕事が楽しくないのではないでしょうか?
「仕事は面白くない」「できればやりたくない」という考えになってしまっている恐れがあります。
 我々上司は、そのような状況を見て、「けしからん」「何を考えているんだ」と思わずイライラしてしまうこともあります。
「最近の若い人たちは、気合が入っていない」等と、年代のせいにする上司もいます。

 しかし、メンバーが仕事に興味を持てていないのであれば、それは、我々上司にも大いに責任があるのではないでしょうか?
 例えば、「あと100万で達成率120%だ。そうしたらボーナスが増えるぞ」「係長になりたいのだったら、もっと成果を出せ」といった鼓舞を我々上司は、する事があります。
一見、何の問題もないやり取りです。
 しかし、このような「給料が上がる」「出世に響く」等といった鼓舞の仕方は
「ニンジンを目の前にぶら下げる」方法です。

 ニンジンをぶら下げられて、「がんばればニンジンが食べられる」と言えば、がんばって動いてくれると思っている人が多い。確かに短期的には、がんばって動く人もいます。

 しかし、長期的に見るとこれは危ないですね・・。
なぜなら、「ニンジン」つまり、給料や昇進などのために成果を挙げるという発想ですと、仕事はその手段に過ぎなくなります。「単なる手段」の仕事ですから、段々と興味を持てなくなってくる。

 結局「仕事は面白くなくて当たり前。でも、がんばらないと給料が増えない」という発想で、仕事を楽しめそうですか?
 これは無理でしょう。

 メンバーが仕事そのものを楽しめるように、我々上司が導く必要があるのではないでしょうか?

 つまり、自律性を育てるためには、「楽しんで仕事に取り組む」ことが大切です。

 例えば、マラソンが好きな人がいます。
傍から見ると、あんなに大変なスポーツをなぜ好んでやるのだと不思議になります。
良くマラソンを知らない人は、「きっとゴールする瞬間がたまらないのだろう」と考えます。
 確かに、ゴールする瞬間は達成感に満たされることでしょう。
 しかし、本当にマラソンが好きな人は、そこではないんです。
走っていることそのものが楽しいのです。

 私の知り合いに、毎日のようにジョギングを行なっている人が数人いますが、「走っているとスッキリする」「ウキウキしながら走っている」という言葉を耳にします。

 ただ、ある程度慣れてくるまでは、走っている最中はものすごく苦しい。
本当に、苦しいだけです。そのような状況のときは、ゴールして「やっと、終わった・・」という時が一番スッキリする。

 仕事も似たようなところがありますね。仕事自体が苦しいと、「やっと開放された。明日は土曜日で休みだ、ヤッター」となる。
そして、日曜日の夜になるとブルーに・・・。
 逆に仕事自体が楽しい人は、日曜の夜になってもブルーになりません。
むしろ、明日からの仕事を考えてウキウキする。
 私自身も、今の仕事で、休みの日の夜にブルーになることはありません。
明日からの仕事を考えて、ワクワクすることも多いです。

 いずれにしても、嫌々仕事をして「やらされ意識」に陥っている状況では、自律性が発揮されにくい。

 では、どのような状況だと仕事を楽しむことができるのでしょうか?
 私は下記の事柄が重要ではないかと思っています。


①「この仕事は適職(天職)である」と感じられている
②自分の仕事に誇りを持っている
③自分の強みが大いに活かされている
④創意工夫をして、自分のやり方を編み出している
⑤周りの仲間と創発をして、新たな価値を作り出している

 現在、学生の就職環境が非常に厳しくなり、「本当はこの仕事をやりたかった訳ではない」ということが起こりやすい環境です。つまり、「適職」ではない仕事に就いてしまうという、いわゆる「アンマッチ」です。
 しかし、どのような企業に入ろうが、適職は見つかります。
 次回以降、上記の①~⑤について、順を追って考えていきます。

(2011.11.21掲載)
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