前回まで、メンバーの「創造性を高める」「自律性を高める」ことで、強いチームづくりを考えてきました。
「自律性を高める」の最後の回(前回)で創発の話をしましたので、その続きを書かせていただきます。
創発とは、前回も書いたとおり「新しい何かが生まれる話し合い」のこと。
単に意見をぶつけ合うだけではなく、話し合う中で色々なアイデアが生み出されます。
職場での話し合い(ちょっとした立ち話なども含む)で、創発が行なわれれば、本当に生産性の高い仕事ができそうですね。もちろん、「強いチーム」が実現できます。

では、創発を実現するためには、何が必要なのか?
まず、一番必要なのが「Yes・And」です。聞いたことある人もいるのではないでしょうか?
誰かが話したアイデアに対して、「それはいいね(Yes)。
○○もしたら、更にいいんじゃないかな(And)」
つまり、相手の意見を肯定し、それに対して「更に・・・」とプラスのアイデアを付け加える。
この感覚が、創発の基本中の基本です。

一見、「まあ、それくらいだったらできるでしょう」と思いますよね?簡単ではありませんよ。
これは、意識しないとなかなか難しいです。
「Yes・And」ではなく、どうしても「Yes・But」と言いたくなりますから。
「確かにそれは悪くはない(Yes)。ただ、難しいと思うよ・・・。だってさ・・(But)」

人は、「自分の意見が正しい。他の意見はおかしい」と思いがち。
自分と違う意見が出てくると、「それは違うでしょ・・」と瞬時に思ってしまうものです。
そうすると、「でもさ・・・」と否定(But)したくなります。

お互いがお互いの意見を否定し合い、なかなか話が進まない。
また、自分の意見を主張しあってなかなか意見がまとまらない。
そのような話し合いは通常「Yes・But」が繰り返されています。

「Yes・And」を意識してみませんか?すぐに「その意見、ちょっと違うんじゃない?」と頭から否定せず、「あー、そんな意見もありだよね」と肯定してみる。
その上で、「更に○○をしてみたらどうかな」「それにプラスして、△△もできそうじゃない?」
「それに、□□を追加してさあ」等とプラスのアイデアを上乗せする。

これを意識するだけで、創造以上の面白いアイデアが、どんどん出てきます。
ただ、「そんなの急にいっても無理だよ。
だって、周りにいる連中は自己主張の強い人ばっかりだから・・」と嘆く人もいます。
確かに、いきなり全員が「Yes・And」を意識するのは難しいかもしれない。
ただ、まずあなたが意識してください。
だって、自分の意見を肯定してくれて、更に「こうしたら、もっと面白いよね」等とコメントしてくれたら、誰だって嬉しいですよね。
そうすれば、その人もあなたの意見に「Yes・And」してくれるようになりますよ。

まず、我々上司は、チームのミーティングで部下が発した言葉に「Yes・And」する。
これが最も重要ですね。

創発するチームのもう一つの条件をお話します。それは、「自分と違った意見を受け入れる」ということ。
自分と違う意見を言った人がいても、「あー、確かにそういう意見もあるなー」と一旦受け入れるということです。

人間はともすると、「自分の意見が正しい」と思っています。
自分と違う意見が出ると「それは違うだろ!」と反論したくなるものです。v 特に、我々上司は要注意。議論している最中に部下が言った意見に対して、「それは違うだろ!」と思いがちではないですか?「お前、入社何年目だよ?オレの方が圧倒的に経験が長いんだぞ。
こっちの意見のほうが言いに決まってるだろうが」という気持ちが湧いてしまう・・・。

これが、創発を打ち消してしまうんですよ。
「自分が言った意見は、どうせ上司につぶされる・・・」というお話をメンバークラスの人からよく聞かされます。
もっとひどいケースでは「会議なんて意味ないですよ。
だって、上司が一方的に話しているだけなんですから。
我々の意見なんて受け入れてもらえませんよ」等といったグチが出る。

私は、メンバークラスでこのような意見をよく聴きます。
このような意見は、全く珍しくありませんよ。

自分と違う意見でも、受け入れる。具体的には、「あれ、何でその意見なの?」と思ったら、質問してみてください。
「なんで、そう考えているのか教えてもらえるかな?」
「あなたは、どうしてそういう意見なの?」その奥にある、メンバーの思いがわかります。
「あー、そうか。そんなことを考えていたのか」と思うことも多いと思いますよ。

皆さん、嫌われる上司はどのような上司かお分かりですよね。
一番嫌われるのは「頑固」な上司です。つまり、自分の意見を押し通し、メンバーの意見を聞き入れない人。
最終的には「この人に何を言ってもムダだ」と無視されます。
しかし、無視されていることを当の上司はなかなか気づかない。
ともすると、「反抗せずに、私の意見を聴いてくれるよい部下達だ」等といった勘違い。

「自分の考えと違うな」と感じても、がまんです。
「いや」「でも」「ただ」と反論しないで下さい。
その代わりに、「どうしてそう思うの?」と聴いてあげる。
これだけで、創発が加速して、創造性の豊かなチームに近づきます。

(2012.03.21掲載)
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