『どんな仕事にも働き甲斐はあるし、それは、単なる自己満足ではなく、他者への貢献の中にこそある』という実感を持たない社会人は少ないと私は思っています。
え、そんなことない?
自分の満足のために働いている?
そうですね。私がこのような考えを持ったのは、働き始めて10年くらい経った頃でしょうか。それまでは、自分の収入を増やすことにしか興味はありませんでした。それが働き甲斐でした。顧客満足は二の次、買ってもらってるから、満足しているんだろう、それで収入が増えることが働き甲斐。給料が増えないところに働き甲斐なんてないね~、と思ってました。
でも、徐々にわかってくるんです。他者への貢献に働き甲斐を求める気持ちが。

ハーツバーグの動機付けの理論では、人の欲求を二つに分けています。
・環境衛生要因=不満要因。これが解消されないと、やる気が出ない。
・動機付け要因=人のやる気を引き出すもの。

就職当初は、環境衛生要因にどうしても、目が言ってしまうのです。
また、仕事を辞める人の多くは環境衛生要因=人間関係や給与、上司の指導など=を理由に挙げることが多いのです(実際は違っても)。

仕事を始めてしばらくすると、徐々に動機付け要因に目がいくようになると私は考えています。
私の場合、最初は衛生要因=給料でした。それが働き甲斐、そのものでした。
しかし今の若者は、物欲も金銭欲も薄いですから、給料では、あまり引っ張れません。
なので、動機付け要因に目を向ける必要があるわけです。

ハーツバーグの動機づけ要因は、次のものが内的経験として確保できる環境にあることと書かれています。
・ 仕事をやり遂げた時の達成の喜び
・ 難しい仕事に対して上司や同僚が承認してくれた時の嬉しさ
・ 大きな責任を与えられた時の喜び
・ 苦労を重ねた上で自分が成長したことを実感した時の喜び
・ 仕事自体に変化があり、仕事への興味が続いている時の興奮

弊社の意識調査に、「給料や週休2日制も大切であるが、働き甲斐(がい)を求めることの方がより人間らしい生き方ができる」というものがあります。
2011年の新入社員研修におけるこの設問の回答比率は次のようになっています。

そう思う   65.8%
わからない  18.0%
そう思わない 16.2%

2000年以降で「そう思う」という回答が、最も多くなりました。
働き甲斐が欲しいようですね。できるだけ早く新人にも働き甲斐を感じてもらわないといけません。

働き甲斐を仕事に求めたい、そういう新人はずいぶん多いようです。
「給料や週休2日制も大切であるが、働き甲斐(がい)を求めることの方がより人間らしい生き方ができる」という設問で「そう思う」が65.8%もあります。

ただ、私はその内容に課題を感じています。
それを「自己中実現型」と呼んでいます。表に出る現象としては、次のようなものがあります。

・勝手に想像している「クリーンな仕事」ばかりだと思っている。
残業はない。お客様からいつもほめられるものだと思っている。
顧客接点の多い仕事なら、顧客接点の仕事ばかりでデスクワークがないと思っている。
逆にデスクワーク系の仕事だと、ちょっと接客業務が入ると嫌がる。

・その「クリーンな仕事」でないことをさせると、(成果は出ていても)不満を感じる。「こんなに一生懸命やっているのに」という。ちょっと優秀で真面目に取り組んでいるように見えて、成果を十分出せない新人に多い。成果を出していても、いきなりプツンと切れる。

・「お客様のため」という言葉と自分の業務に矛盾を感じている。
「買う、買わないはお客様の都合ですから」という意識の売らない営業など。目の前の「作業」と「お客様の成果」が結びつかない。

・妙に成長実感を求めたがる。
そんなにすぐ成果は出ないものだが、評価は欲しがる。マンネリ化が早い。改善できない。

・役に立たない業務に、異常にこだわる。
「仕事のそこ、力入れるか?」というところに時間をかける。提案書の表紙を作るのに半日費やしていたり、自分に権限のある社内業務なのに「社内の同意を取る」と言って、人の意見を聞き回り、結局、決められなくなったり。

このような「自己中実現型」の意識も、日常の仕事の中でハーツバーグが上げているような動機付け要因に目を向け、顧客志向、成果志向での評価で変えていくことができると思っています。また、ほめられることには慣れている世代です。注意、関心がそれると、「認められていない」とすぐ思ってしまうのです。働き甲斐を感じさせ続けることが必要です。「ちょっと慣れてきたようだ」と安心してはなりません。

「働き甲斐」をうまく感じられないと、衛生要因に目が向き、ちょっとしたことで不満を感じてしまうというのが実態でしょう。
もちろん、「ブラック企業」のように、衛生要因がおかしいところでは、いくら仕事が面白くてもダメですが。
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